細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第11号]日本一名前が長い分譲マンションの「ふわふわと定まらない文字数」

2018年01月05日

日本一候補の文字数は「37文字?」それとも「33文字?」

 

 日本一名前が長い分譲マンションを知っていますか。

 分譲マンションのデータを調べる手段として、不動産のプロ向けには、東京カンテイの「マンションデータベース」や、マーキュリー社の「リアナビ」などがあります。また一般人向けには、リクルート住まいカンパニーの『SUUMO』、ライフル社の『LIFULL HOME'S』などの不動産情報サイトがあります。

 けれどもその中には、「マンションを名前の長い順に検索する機能」は存在しません。よって、手作業(目作業?)で調べるしかないのですが、現時点では以下で述べる3件のマンションが、長い名前を持つ分譲マンションの「ランキング上位」に入ることは確実と思われます。1位候補から順に説明していきましょう。

【1位候補「THE IMPERIAL GARDEN LIMITED RESIDENCE」】
 
 文字数は37文字or33文字or25文字or21文字or10文字──住友不動産が東京都文京区千石2丁目に分譲。2015年1月に完成。地上4階、総戸数167戸。

文字数参考

 上の表を見てください。マンション名を英語(アルファベット)で表記し、かつ各単語の末尾に1文字分のスペース(空欄)を設けると、その分を含めて37文字になります(表の上段)。

 しかし、スペース(空欄)なしに表記すると、33文字に縮まります(表の下段)。

 次に、マンション名をカタカナで表記すれば、「ザ インペリアル ガーデン リミテッド レジデンス」と、空欄を含めて25文字に縮まります。また「ザインペリアルガーデンリミテッドレジデンス」と、空欄をなくすると21文字に縮まります。さらに、「インペリアルガーデン」という愛称を使えば、10文字まで縮まります。

 このようにアルファベット表記を認めるか認めないかで、文字数は大きく変化します。

 冒頭に、「文字数は37文字or33文字or25文字or21文字or10文字」と曖昧な書き方をしました。それは、このマンションの名前の文字数は37文字あるいは33文字かもしれないし、25文字あるいは21文字かもしれないし、さらには10文字かもしれないからです。

 空に浮かぶ白い雲はふわふわして、風が吹くとすぐに形を変えてしまいます。それと同様に、マンション名の文字数もふわふわして、どうにも捉えどころがないのです。

 

文京区なら1位候補だが、世田谷区ならランキング外に

 

 実はこのマンションは東京都文京区に完成したからよかったのですが、仮に東京都世田谷区に完成していれば、1位候補の座につくことはできなかったはずです。どういうことでしょうか。

 世田谷区のウェブサイトに、「住居表示」という項目があり、その中に「共同住宅(アパート・マンション等)の名称」についての説明があります。そして、「マンション名が外国語で表記されている場合は、住民登録に際して、カタカナに置き換えて登録しなければならない」と注記されています。

 本物件のマンション名、「THE IMPERIAL GARDEN LIMITED RESIDENCE」(37文字)は、英語で表記されています。

 したがって、住民登録する場合には、英語ではなくカタカナに置き換えて表記しなければなりません。すると、「ザ インペリアル ガーデン リミテッド レジデンス」と21文字に縮まってしまいます。文字数日本一を争うとき、これは決定的なダメージです。

 それでは、文京区ではどうなっているのでしょうか。同区のウェブサイトで「住居表示の届け出」という項目を調べましたが、「マンション名の表記」に関する説明はありませんでした。

 つまり、文京区だったからこそ1位候補でしたが、世田谷区だったら1位候補どころか、「ランキング・ベスト10」にも入ることができなかったのです。

 話はもう少し続きます。私はこのマンションが完成したばかりの2015年春頃に、取材のため内部を見学する機会を得ました。そのとき配布されたパンフレットには、英語ではっきりと「THE IMPERIAL・・・」(37文字)と記されています。

 けれども当時の私は、マンションの名前の長さには関心がなかったので、それについて質問はしませんでした。また住友不動産の担当者からも特に説明はありませんでした。

 仮に「名前が日本一長いマンションです」などという話が出れば、必ずそれに触れた記事を書いていたはずですが、そういう記憶もありません。今振り返って見ると、せっかくの機会を逃したことが少し残念です。

 

グーグルの検索機能を使って“占ってみる”

 

 取材の機会を逃したことを補う意味で、デジタル時代に生きる人間として、グーグルの検索機能を使って“占ってみる”ことにしましょう。なお、グーグルの検索結果は、検索する日時によって大きく違ってきますので、ヒットした件数ではなくその順位に注目してください。

(1位)愛称の「インペリアルガーデン」(10文字)で検索──1万6200件がヒット。

(2位)アルファベット表記の「THE IMPERIAL GARDEN LIMITED RESIDENCE」(37文字)で検索──718件がヒット。

(3位)カタカナ表記の「ザ インペリアル ガーデン リミテッド レジデンス」(25文字)で検索──3件がヒット。

 検索結果を見ると、愛称の「インペリアルガーデン」が1万6200件とダントツに多いのですが、これは不動産とは関係がない一般人が書き込んでいるためのようです。一般の人が、文字数が少なくて済む愛称を使うのは、当然のことでょう。

 一方、アルファベット表記「THE IMPERIAL GARDEN LIMITED RESIDENCE」(37文字)が、718件と2番目に多いのは、不動産関係の人が仕事のために書き込んでいるためと思われます。やはり「日本一長い分譲マンションの名前」としては、この37文字案が最適です。

 また、3位はヒットしたのが3件と数が少なすぎるため、対象外とします。

 以上を総合して、この物件名の文字数としては、最初に37文字を掲げることにしました。「ふーっ・・・」。これは、文字数を決める作業が意外に大変だったため、思わず出てきた「ため息」です。失礼しました。

 

2位候補もまた「文字数がふわふわして定まらない」

 

 1位候補「IMPERIAL」の特徴は「文字数がふわふわして定まらない」ことでしたが、2位候補もまた「文字数がふわふわ」しています。

【2位候補「I-linkタウンいちかわ ザ タワーズ ウエスト プレミアレジデンス」】

 文字数は35文字or31文字or47文字or42文字──野村不動産と三井不動産レジデンシャルが、千葉県市川市市川南1丁目に分譲。2009年1月完成。45階建、総戸数572戸。

文字数参考


 このマンションの文字数もまた、議論が分かれる可能性があります。

 まず、「I-linkタウンいちかわ」、「ザ タワーズ ウエスト」、「プレミアレジデンス」と3つの項目に分解し、次に各項目の間にスペース(空欄)を設けると、35文字になります(表の上段)。

 しかし、スペース(空欄)を削除して表記すると、31文字に縮まります(表の下段)。

 念のために、チェックしておきたいことがあります。この分譲マンションは「ザ タワーズ ウエスト プレミアレジデンス」です。となると、2位候補として別に、「ザ タワーズ イースト プレミアレジデンス」が存在する可能性があります。その辺りはどうなっているのでしょうか。

 調べると、UR賃貸住宅「I-linkタウンいちかわ ザ タワーズ イースト」(25文字or22文字)がありました。分譲マンションではなく、「礼金ナシ、仲介手数料ナシ、更新料ナシ、保証人ナシ」を掲げるUR賃貸マンションだけあって、「プレミアレジデンス」という贅沢な感じを与える言葉は排除してしまったようです。

 つまり、賃貸マンションであるのに加えて、文字数も少ないので、「ザ タワーズ イースト」はランキングの2位候補にはなり得ません。

 

「I-linkタウンいちかわ」に隠れていた「幻の1位候補表記」

 

 説明が後回しになりましたが、実は極めて厄介な問題が、まだ2点も残っています。

 最大の問題は、この物件のパンフレットの表紙が、「I-linkタウンいちかわ THE TOWERS WEST Premier Residence」と、「THE TOWERS」以下がアルファベット表記になっていることです。また図面集の末尾にある物件概要欄でも、名称としては同様に「THE TOWERS」以下がアルファベット表記になっています。

l-linkタウンいちかわ


 この場合、文字数が一気に47文字まで増えてしまいます(表の上段)。また、各単語の末尾にある1文字分のスペース(空欄)を削除したとしても、なお42文字を維持しています(表の下段)。

  「I-linkの後半 カタカナ型」(35文字or31文字)
  「I-linkの後半 アルファベット型」(47文字or42文字)

 これは厄介なので、困ったときの“グーグル占い”と行きましょう。グーグルで検索した結果を、ヒット件数の多い順に並べました。

(1位)「I-linkタウンいちかわ ザ タワーズ ウエスト プレミアレジデンス」(A案、35文字)で検索──1210件がヒット。

(2位)「I-linkタウンいちかわザタワーズウエストプレミアレジデンス」(B案、31文字)で検索──1210件がヒット。

(3位)「I-linkタウンいちかわ THE TOWERS WEST Premier Residence」(C案、47文字)で検索──「一致がありません」という表示が出ます。つまり、実質的に0件と判断できます。

 この検索結果は何を意味しているのでしょうか。本物件のパンフレットの表紙および図面集の物件概要欄には、「THE TOWERS WEST」と、アルファベット型のC案が掲載されていました。それにもかかわらず、ネットの世界で不動産のプロたちは、カタカナ型のA案・B案を採用していたのです。

 その結果、「I-linkタウンいちかわ」は本当は1位候補だったにもかかわらず、「幻の1位候補」として裏に隠れて、歴史に残る機会をみすみす逃してしまったのです。本当に惜しかったですね。「ふーっ」。

 いやいや、ため息をついてばかりいては、先に進むことはできません。ここは“グーグル占い”の結果を受け入れて、A案(35文字)またはB案(31文字)を採用することにしましょう。すなわち、C案(47文字)は「幻の案」として、タンスに入れてしまうのです。

 そうすると、「分譲マンション名前の長さランキング」に関しては、以下のような結果に落ち着きます。

 1位候補──アルファベット表記の「THE IMPERIAL」(37文字or33文字)
 2位候補──カタカナ表記の「I-linkタウンいちかわ」(35文字or31文字)

 

市川市の書類には「23字以内で記入してください」

 

 これで油断してはいけません。覚えているかもしれませんが、あと1点、確認しなければならない作業が残っています。

 本物件が建っている千葉県市川市では、「住居表示の届け出──共同住宅(アパート・マンション等)の名称」はどうなっているのでしょうか。同市のウェブサイトから、関係する書類を探し出して引用しました(下の表)。

八幡マンション

 

 この書類によれば、「マンションの名称は23字以内で記入する」ことになっています。

 「やれやれ」、これは困りますね。手間暇をかけて色々な資料を探し出し、蘊蓄(うんちく)を傾けて、「I-link」の文字数は35文字or31文字と調べ上げたにもかかわらず、千葉県市川市は「23字以内にせよ」と指導しているのです。

 しかし、本物件に関しては、市川市の指導は明らかに無理難題です。率直に言えば、世間知らずです。なぜ、これほどキッパリと、断言できるのでしょうか?

 そもそも「I-linkタウンいちかわ」とは、市川市を事業施行者とした市川駅南口再開発により誕生した、施設および地域一帯の名前です。そして、「I-linkタウンいちかわ ザ タワーズ ウエスト」と名付けられた45階建ての建物には、以下の施設が入居しています。

〔45階〕
  NHK学園市川オープンスクール
  アイ・リンクタウン展望施設
〔44〜4階〕
  分譲マンション(572戸)
  「I-linkタウンいちかわ ザ タワーズ ウエスト プレミアレジデンス」
〔3階〕
  市川駅南口図書館
  市川キッズステーション
〔2〜1階〕
  いちかわMALLS(商業施設)

 ここで市川市の指導にしたがって、マンションの名前を23文字以内で記入した場合には、次のような困った事態に陥ってしまいます。

〔ケース1〕「I-linkタウンいちかわザタワーズウエスト」と記入(22文字)
  これには「プレミアレジデンス」という言葉が欠けています。よって、建物の名前にはなっても、分譲マンションの名前にはなり得ません。

〔ケース2〕「ザ タワーズ ウエスト プレミアレジデンス」と記入(21文字)
  これには、固有名詞が含まれていません。よって、どういう場所に立つ分譲マンションなのか、まったく見当がつきません。

〔ケース3〕「I-linkタウンいちかわ プレミアレジデンス」と記入(23文字)
 これには、「ザ タワーズ ウエスト」が含まれていないため、どの建物に付属する「プレミアレジデンス」なのか判断がつきません。よって、「I-linkタウンいちかわ」のどこかに、秘密のレジデンスがあるらしい、というウワサの元になりかねません。

 場合によっては、UR賃貸住宅「I-linkタウンいちかわ ザ タワーズ イースト」のどこかに、お偉いさん専用のプレミアレジデンスが隠されているのではないか・・・、などとあらぬ疑いを持つ人が現れるかもしれません。

 以上のような理由で、現実とは著しく乖離している、市川市の指導は無視せざるを得ません。それにしても、事業主である野村不動産、あるいは所有者を代表するマンション管理組合は、実際問題としてどう記入したのでしょう。気になります。

 

3位候補には実に6種類もの「名前バリエーション」が存在

 

 1位候補の「IMPERIAL」には5種類、2位候補の「I-link」には4種類の「名前バリエーション」があったため、話がずいぶん長引いてしまいました。それでは3位候補はどうなのでしょうか。実はここには、6種類もの「名前バリエーション」が存在するのです。

【3位候補「シャルマンフジビルトモアー住之江公園駅前アーバンヴィレッジ」】

 文字数は31文字or30文字or29文字──フジ住宅(大阪府岸和田市)が大阪市住之江区新北島1丁目に分譲。2001年5月完成。6階建、総戸数43戸。

 シャルマンフジビルトモア

 「シャルマンフジビルトモアー住之江公園駅前アーバンヴィレッジ」(表のA、29文字)は、文字がビッシリ詰まっているので、見ているだけで少し息が詰まってきます。こういう場合には、どこかにスペース(空欄)または中黒「・」を入れて、一息つきたくなります。

 私なら、「シャルマンフジビルトモアー 住之江公園駅前 アーバンヴィレッジ」(表のB、31文字)、または「シャルマンフジビルトモアー・住之江公園駅前・アーバンヴィレッジ」(表のC、31文字)を選択します。

 しかし『SUUMO物件ライブラリー』で検索してみると、表のB・Cは掲載されておらず、代わりに表のD(30文字)、E(31文字)、F(31文字)が掲載されていました。すなわち、3位候補には実に6種類もの「名前バリエーション」が存在するのです。またまた、ため息が出てきました。「ふーっ」。

 それでも、アルファベット表記が登場しないのは救いでした。仮にアルファベットが出てくると、話がさらに混乱して、収拾がつかなくなったかもしれません。

 

“グーグル占い”でも名前が決まらない

 

 ここで、フジ住宅のブランドについて、調べてみましょう。

 シャルマンフジ(7文字)
 シャルマンフジスマート(11文字)
 シャルマンフジソフィア(11文字)
 シャルマンフジフリージア(12文字)
 シャルマンフジビルトモアー(13文字)

 ジーッと眺めると、各ブランドは、「シャルマンフジ」+「バリエーション」という構造になっていることが分かります。このうち、本物件に採用された「シャルマンフジビルトモアー」について、数式的に表現してみましょう。

「シャルマンフジビルトモアー」
  =「シャルマンフジ」+「ビルトモアー」

 したがって、中黒「・」を入れる場合には、次のように考えるのが自然です。

(1)「シャルマンフジビルトモアー」
     =「シャルマンフジ」+「ビルトモアー」
     =「シャルマンフジ・ビルトモアー」

 しかし、『SUUMO物件ライブラリー』で検索されたD・E・Fは、そうではありませんでした。

(2)「シャルマンフジビルトモアー」
     =「シャルマンフジビルト」+「モアー」
     =「シャルマンフジビルト・モアー」

 私は理科系出身なので、(2)には違和感を感じます。2017年の流行語を使うと、「ちーがーうーだーろー!」ということです。

 けれども、現実は現実として、受け入れなければなりません。本来はパンフレットで調べれば決着が付くかもしれないのですが、今回はあいにく、パンフレットが入手できませんでした。何しろ2001年5月の完成なので、入手が難しいのです。

 ということで、再び “グーグル占い”の出番です。検索して、そのヒット件数を調べてみましょう。

 A案「シャルマンフジビルトモアー住之江公園駅前アーバンヴィレッジ」
    ──377件がヒット(空欄なし)

 B案「シャルマンフジビルトモアー 住之江公園駅前 アーバンヴィレッジ」
    ──377件がヒット(空欄2個所)

 C案「シャルマンフジビルトモアー・住之江公園駅前・アーバンヴィレッジ」
    ──377件がヒット(中黒「・」2個所)

 D案「シャルマンフジビルト・モアー住之江公園駅前アーバンヴィレッジ」
    ──396件がヒット(中黒「・」1個所)

 E案「シャルマンフジビルト・モアー住之江公園駅前・アーバンヴィレッジ」
    ──396件がヒット(中黒「・」2個所)

 F案「シャルマンフジビルト・モアー住之江公園駅前アーバン・ヴィレッジ」
    ──396件がヒット(中黒「・」2個所)

 A・B・C案が377件、D・E・F案が396件です。比率でいうと前者が100で、後者が105なので大接戦です。いわば誤差の範囲なので、判断のしようがありません。どうすればいいのでしょうか。

 

人型アイコン「ペグマン」でネームプレートを観察

 

 こういうときのために、「奥の手」があります。グーグルマップの人型アイコン「ペグマン」に、マンションのエントランスに掲げられた、ネームプレートを見て来てもらうのです。少し自問自答してみました。

 自問「ペグマンに頼ろうとしないで、現地に出かけて、自分の目で見てくればいいのでは?」

 自答「新幹線を利用して大阪市住吉区まで出かけると、往復で2万円近くの交通費がかかってしまう。その点、ペグマンなら交通費はゼロ円で済むので、ここは節約路線で行こう」

 ペグマンに観察してもらった結果は、ある意味で予想を大きく超えていました。ネームプレートには、次のように記されていたのです。

 ビルト・モアー

 驚いたことに、「ビルト・モアー」「住之江公園駅前」「アーバン・ヴィレッジ」、という3段重ねの表記でした。F案「シャルマンフジビルト・モアー住之江公園駅前アーバン・ヴィレッジ」から、冒頭の「シャルマンフジ」だけを削除し、残りを3段重ねにしたのです。

 確かにこれなら、「ビルト」と「モアー」の間に中黒「・」を置き、「アーバン」と「ヴィレッジ」の間に中黒「・」を置いた意味を、視角的に理解できます。全体として見た目のバランスがいいのです。

 そして、「ビルト・モアー」(7文字)、「住之江公園駅前」(7文字)、「アーバン・ヴィレッジ」(10文字)という文字数も手頃です。「なるほどなぁー」。

 さらにつけ加えるなら、フジ住宅の分譲マンションであることを示す、「シャルマンフジ」というブランド名を削除したことは何とも大胆です。

 さて、人型アイコン「ペグマン」で調べているとき、本物件の近くに、「シャルマンフジビルトモアー住之江公園中加賀屋」という、似たような名前のマンションがあることが分かりました。そして、そのネームプレートには、横一列に「ビルト・モアー住之江公園・中加賀屋」と記されていました。やはり、視角的なバランスを重視しているようです。

 いずれにしても、これで確定です。私として最終的には、「ビルト・モアー住之江公園駅前アーバン・ヴィレッジ」に「シャルマンフジ」を加えた、「シャルマンフジビルト・モアー住之江公園駅前アーバン・ヴィレッジ」(F案、31文字)という表記を採用することにします。

 あと1点、確認しなければならない作業が残っています。本物件がある大阪市住之江区の「住居表示の届け出」「共同住宅(アパート・マンション等)の名称」はどうなっているのでしょうか。

 同市のウェブサイトで、関係する書類を探してみましたが、何も見つかりませんでした。すなわち、最終案を入れ替える必要はありません。これで一件落着です。

 

単独型(個別型)ネーミングと家族型(姓名型)ネーミング

 

 このコラムでは、1位候補、2位候補、3位候補という呼び方を使いました。その理由は、各候補とも文字数が変化する可能性があるため、1位、2位、3位と断言することにためらいがあるためです。
 
「THE IMPERIAL GARDEN LIMITED RESIDENCE」  
 ──1位候補は37文字です。ただし、10文字から37文字までの可能性があります。

「I-linkタウンいちかわ ザ タワーズ ウエスト プレミアレジデンス」
 ──2位候補は35文字です。ただし、31文字から47文字までの可能性があります。

「シャルマンフジビルト・モアー住之江公園駅前アーバン・ヴィレッジ」
 ──3位候補は31文字です。ただし、29文字から31文字までの可能性があります。

 実はもう1つの理由があります。今回は「単独型(個別型)ネーミング」の分譲マンションを対象にしたのですが、それとは別に「家族型(姓名型)ネーミング」および「ニュータウン連続型ネーミング」の分譲マンションが存在します。

 この三者を一緒にすると、ただでさえ長い話が、さらに長引いてしまいます。よって、「家族型(姓名型)ネーミング」および「ニュータウン連続型ネーミング」については、次回に説明したいと思います。

 

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。