細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第12号]「分譲マンションの名前長さ比べ」はアルファベット型の圧勝

2018年02月01日

1番目は「単独型(個別型)ネーミング」

 

分譲マンションのネーミング方法は、大きく3種類に分かれます。1番目は「単独型(個別型)ネーミング」です。これは1棟ごとに、個別に名前を付けていく方法です。

 この場合、マンションデベロッパー各社が持つ「ブランド名」と、マンションが建てられる「地名」を組み合わせるのが一般的です。

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 例えば大手デベロッパーの三菱地所レジデンスには、次のような実例があります。

 「ザ・パークハウス五番町」(合計11文字)
     =「ザ・パークハウス」+「五番町」 

 ブランド名の「ザ・パークハウス」も、地名の「五番町」もよく知られているため、これで必要十分なのです。また名前がシンプルなため、11文字という少ない文字数に収まっています。

 その一方、ブランド名や地名を使わずに、自由にネーミングする方法もあります。その代表例が、前回説明した、住友不動産による「THE IMPERIAL GARDEN LIMITED RESIDENCE」でした。各単語の間にある1文字分のスペース(空欄)を含めると、全部で37文字になります。本当に長いですね。

 

2番目は「家族型(姓名型)ネーミング」

 

 2番目は「家族型(姓名型)ネーミング」です。このうち「姓名」の「姓」はファミリーネーム、「名」はファーストネームと訳します。これは分譲マンション(全体)が、A棟・B棟・C棟などの複数棟(部分)で構成されているときの方法です。

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 例えば野村不動産の「プラウドシティ阿佐ヶ谷」を例にとりましょう。

 このマンションは全575戸と大規模なため、ガーデン(A街区)、フォレスト(B街区)、セントラル(C街区)、ヴィラ(D街区)、テラス(E街区)という5つの街区で構成されています。

 この場合には、「プラウドシティ阿佐ヶ谷」が、ファミリーネーム(全体の名前)に相当します。続いて「ガーデン(A街区)」、「フォレスト(B街区)」・・・が、ファーストネーム(各棟の名前)に相当します。

 ただし、例えばガーデン(A街区)の名前に関しては、書き方によって実に4種類ものバリエーションが存在し、そのため文字数が変化する事実に注目しなければなりません。具体的に説明しましょう。

(1)「プラウドシティ阿佐ヶ谷ガーデン(A街区)」
    =「プラウドシティ阿佐ヶ谷」+「ガーデン(A街区)」(合計20文字)

(2)「プラウドシティ阿佐ヶ谷A街区ガーデン」
    =「プラウドシティ阿佐ヶ谷」+「A街区ガーデン」(合計18文字)

(3)「プラウドシティ阿佐ヶ谷ガーデン」
    =「プラウドシティ阿佐ヶ谷」+「ガーデン」(合計15文字)

(4)「プラウドシティ阿佐ヶ谷A街区」
    =「プラウドシティ阿佐ヶ谷」+「A街区」(合計14文字)

 このように、書き方次第で文字数がいろいろ変化してしまうのが、まことに厄介なところです。

 ガーデン(A街区)1階の77号室に住む人が住所を書くときには、「東京都杉並区成田東○-○○-○○-A177」、あるいは「東京都杉並区成田東○-○○-○○ プラウドシティ阿佐ヶ谷A177」などと、文字数を少なくするように努めると思われます。

 しかし、名前の長さを競う場合には、(1)の20文字がもっとも優れていて、(2)の18文字、(3)の15文字と続いて、(4)の14文字がもっとも劣るというような評価になってしまうのです。

 

3番目は「ニュータウン連続型ネーミング」

 

 1番目の「単独型(個別型)ネーミング」、2番目の「家族型(姓名型)ネーミング」に続いて、3番目に「ニュータウン連続型ネーミング」という種類があります。

 「ニュータウン連続型ネーミング」の場合、分譲マンションの名前は「大街区の名前」(ファミリーネーム)+「中街区の名前(ファーストネーム)」+「小街区の名前」(セカンドネーム)という、3段重ねになっているケースが大部分です。

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 三井不動産レジデンシャルの「パークシティ柏の葉キャンパス」シリーズを、例に取りましょう。現在までに以下のような分譲マンションが供給されています。

 (1)「パークシティ柏の葉キャンパス 一番街A棟〜E棟」(23文字)
    総戸数977戸、2008年〜2009年に完成

 (2)「パークシティ柏の葉キャンパス 二番街A棟〜F棟」(23文字)
    総戸数889戸、2010年〜14年に完成

 (3)「パークシティ柏の葉キャンパス ザ・ゲートタワー イースト」(28文字)
    総戸数349戸、2016年に完成

 (4)「パークシティ柏の葉キャンパス ブライトサイト」(22文字) 
    総戸数78戸、2017年10月に完成

 (5)「パークシティ柏の葉キャンパス サウスフロント」(22文字)
    総戸数176戸、2019年に完成予定

 これらはいずれも、つくばエクスプレス線「柏の葉キャンパス駅」周辺に誕生したニュータウンに、三井不動産レジデンシャルが2006年から分譲を開始した、一連の大規模なマンション群です。住所でいうと千葉県柏市になります。

 このうち、(1)「パークシティ柏の葉キャンパス 一番街A棟〜E棟」について、3段重ねのネーミングを、詳しく見てみましょう。 

  大街区の名前(ファミリーネーム)
  ──「パークシティ柏の葉キャンパス」(ニュータウン向け特別ブランドの名前)

  中街区の名前(ファーストネーム) 
  ──「一番街」(マンション群の名前)

  小街区の名前(セカンドネーム)
  ──「A棟〜E棟」(マンション各棟の名前)

 大街区・中街区・小街区に対応して、それぞれ大スケール・中スケール・小スケール的な名前が、割り振られているのが分かります。「一番街」というのが、マンションの名前であるのは、いかにもニュータウン的です。

 これを「ニュータウン連続型ネーミング」と名付けた理由は、「パークシティ柏の葉キャンパス」という特別なネーミングが、各プロジェクトの冒頭にいわば「冠」のように連続的に付いているためです。

 「ニュータウン連続型ネーミング」は、主としてニュータウンが建設されていくプロセスで、特定のデベロッパーが分譲マンションを連続的に供給するとき用いる手法です。

 

個別型、家族型、ニュータウン連続型の特徴

 

 ここまで述べてきたように、分譲マンションのネーミングは大きく「単独型(個別型)」、「家族型(姓名型)」、「ニュータウン連続型」の3種類に分かれます。それぞれの特徴を表にまとめてみましょう。

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 表にみるように、「単独型(個別型)ネーミング」は文字数が少なく、「家族型(姓名型)ネーミング」は文字数が増え、「ニュータウン連続型ネーミング」になると文字数が極めて多くなる傾向があります。

 

ニュータウン連続型1位候補「六甲アイランド W7Residence」

 

 それでは、ニュータウン連続型ネーミングによって長い名前を持つ、「分譲マンションのランキング上位」は、どういう顔触れになるのでしょうか。

 慎重を期す意味で、パンフレットや図面集などを入手できた分譲マンション、あるいはきちんとしたウエブサイトが残っている分譲マンションなど、「確かな裏付け」を入手できた物件だけを、ランキングの対象にしましょう。まず1位候補です。

【1位候補「六甲アイランドCITY W7Residence BREEZE NOTE 10番館」】

 文字数は40文字or36文字──積水ハウスがいわゆる「六甲アイランドシティ」、住所でいうと兵庫県神戸市東灘区向洋町中7丁目に分譲。2015年12月に完成。地上14階、総戸数78戸。

 「六甲アイランド」とは、神戸市東灘区の神戸港内に作られた人工島です。そして向洋町中、向洋町西、向洋町東という3つの町は、「六甲アイランドシティ」という愛称で呼ばれています。

 また、向洋町中では、島の中心を通る六甲ライナーより西側の住宅地にウエストコート、東側の住宅地にイーストコートという名前が付けられています。本マンションは向洋町中7丁目にあって、ウエストコートに所属します。

 そのため、「W7Residence」を日本語に訳すと、「ウエストコート7番街」となります。実際にもすぐ近くに、「みなと観光バス」の「ウエストコート7番街」バス停があります。

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 上の表を見てください。分譲マンションの名前を、パンフレットや図面集を参考に英語(アルファベット)混じりで表記し、かつ各単語の末尾に1文字分のスペース(空欄)を設けると、その分を含めて40文字になります(表の上段)。けれども、スペース(空欄)なしに表記すると、36文字に縮まります(表の下段)。

 そして、英語(アルファベット)の部分をカタカナで表記すると、「六甲アイランドシティ ウエストコート7番街 ブリーズノート11番館」と33文字に縮まります。さらに、スペース(空欄)をカットすると、31文字に縮まります。

 

長さの決め手は「3段重ね」と「アルファベット表記」

 

 「六甲アイランドCITY W7Residence BREEZE NOTE 10番館」という名前を、大街区・中街区・小街区に分析してみましょう。

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 人工島の「六甲アイランド」の中に、「六甲アイランドCITY」という愛称を持つ大街区があります。そして中街区の「ウエストコート7番街」に、積水ハウスが連続的に供給してきた「W7Residence」というマンション群があります。さらに、その小街区に「BREEZE NOTE 10番館」という個別のマンション棟が建っているのです。

 次の課題は文字数の確定です。アルファベット表記の40文字or36文字、カタカナ表記の33文字or31文字のうち、どれを選択すればいいのでしょうか。

 その有力な手がかりとなるパンフレット、図面集、公式ウエブサイトでは、すべてアルファベット表記になっています。よって、それを尊重して、本物件の文字数は40文字とします。

 すでに記したように、単独型(個別型)ネーミングの日本一候補は、「THE IMPERIAL GARDEN LIMITED RESIDENCE」(37文字、2015年1月に完成)でした。

 しかし本物件(40文字、2015年12月に完成)は、「ニュータウン連続型ネーミング」を代表する物件として、それを上回ったのです。すなわち、分譲マンション名前の長さランキングで、日本一候補の座についたことになります。

 その原因は、まず「ニュータウン連続型ネーミング」を採用したため、名前が「大街区」「中街区」「小街区」と3段重ねになった結果です。次に、名前のほとんどを、英語(アルファベット)で表記した結果です。

 仮にカタカナを主体にした表記にしていれば、「六甲アイランドシティ W7 レジデンス ブリーズ ノート 10番館」(33文字)なので、「THE IMPERIAL」(37文字)に勝つことはできませんでした。

 さらに、次に紹介する、「ニュータウン連続型ネーミング」の2位候補(36文字)に、勝つこともできなかったのです。

 

「W7Residence」内の2番手候補

 

 念のために説明しておきますが、「六甲アイランドCITY W7Residence」内には、「BREEZE NOTE 10番館」以外の分譲マンションも建っています。

「BREEZE NOTE 10番館」(16文字、全体で40文字)
「GREEN NOTE 6番館、7番館、8番館」(各14文字、全体で38文字)
「SHINE NOTE 9番館」(14文字、全体で38文字)
「SKY NOTE 11番館、12番館」(各13文字、全体で37文字)

 1番手(40文字)は1棟だけですが、2番手(38文字)は4棟もあります。この2番手を「名前の長さランキング」の対象にすると、いわばW7Residenceの独占状態になってしまいます。

 よって、「W7Residence」内からは、「BREEZE NOTE 10番館」だけを選出することにしました。

 次に、“グーグル占い”をしてみましょう。グーグルの検索結果は、検索する日時によって違ってきますので、ヒットした件数ではなくその順位に注目してください。

(1位)アルファベットが主体の「六甲アイランドCITY W7Residence BREEZE NOTE 10番館」(40文字)──9件がヒット。

(2位)アルファベットが主体の「六甲アイランドCITY W7 Residence BREEZE NOTE 10番館」(41文字)──7件がヒット。これは「W7」と「Residence」の間に、スペース(空欄)を入れたものです。

(3位)アルファベットが主体の「六甲アイランドCITYW7ResidenceBREEZENOTE10番館」(36文字)──スペース(空欄)を排除すると、「一致がありません」という表示が出ます。つまり、実質的に0件と判断できます。

(4位)カタカナ表記が主体の「六甲アイランドシティ ウエストコート7番街 ブリーズノート10番館」(33文字)で検索──「一致がありません」という表示が出ます。実質的に0件と判断できます。

 以上を綜合して、1位と2位は微差ですが、やはり1位を採用しましょう。

 さらに、念には念を入れるために、神戸市のウエブサイトで「住居表示の届け出」という項目を調べましたが、「マンション名の文字数制限」に関する説明はありませんでした。よって40文字で確定です。

 

ニュータウン連続型2位候補「京阪東ローズタウン・ファインパーク」

 

 次に、ニュータウン連続型ネーミングの2位候補です。

【2位候補「京阪東ローズタウン・ファインパーク イーストガーデン クロワッサンコート」】

 文字数は36文字or34文字──京阪電気鉄道と三井不動産(現・三井不動産レジデンシャル)が、京阪東(けいはんひがし)ローズタウン内の、京都府京田辺市側に分譲。2004年9月に完成。地上13階、戸数166戸。

 京阪東ローズタウンは、京都府京田辺市と八幡市にまたがる丘陵地に開発された住宅地で、大阪府枚方市との境に近い場所にあります。開発主体は京阪電気鉄道で、タウン中央部東寄りにJR西日本学研都市線松井山手駅があります。またタウンのほぼ中央を、第二京阪道路が南北に貫いています。

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 分譲マンションの名前を、必要なスペース(空欄)を設けて表記すると、その分を含めて36文字になります(表の上段)。けれども、スペース(空欄)なしに表記すると、34文字に縮まります(表の下段)。

 念のために、グーグルの検索機能を使って “占ってみる”と、前者(36文字案)のヒット数が8件、後者(34文字案)のヒット数が6件でしたので、前者の勝ちとします。 

 さらに、京都府京田辺市のウエブサイトで「住居表示の届け出」について調べましたが、「マンション名の文字数制限」という項目は見当たりませんでした。

 

漢字とカタカナだけで「日本一」の座に約10年間

 

「京阪東ローズタウン・ファインパーク」のパンフレットや図面集を入手して調べると、A棟・B棟・C棟から構成されていて、各棟にはそれぞれ詳しい名前が付いていることが分かりました。

 A棟──「ウエストガーデン アドバンスコート」(17文字)
 アドバンスはadvance(前進)。アドバンスコートは歩くための空間。

 B棟──「ウエストガーデン ブルームコート」(16文字)
 ブルームはbloom(花)。ブルームコートは花の空間。

 C棟──「イーストガーデン クロワッサンコート」(18文字)
 クロワッサンはcroissant(フランスパン)。クロワッサンコートは軽食の空間。

 「京阪東ローズタウン・ファインパーク」を含めた文字数は、A棟「ウエストガーデン アドバンスコート」が35文字、B棟「ウエストガーデン ブルームコート」が34文字、C棟「イーストガーデン クロワッサンコート」が36文字です。

 すなわち36文字のC棟が、長い名前比べの勝者ということになります。

 「京阪東ローズタウン・ファインパーク イーストガーデン クロワッサンコート」という名前を、大街区・中街区・小街区に分析してみましょう。

 このマンション(36文字)はかつて、「日本一長い名前を持つ分譲マンションではないか」と、考えられていました。確かに、完成時点の2004年9月の時点では、「日本一」だったと推測されます。

 しかし、2014年5月に、ニュータウン連続型ネーミングの「六甲アイランドCITY W7Residence GREEN NOTE 6番館」(38文字)、に抜かれてしまいました。

 また、2015年1月に、単独型(個別型)ネーミングの「THE IMPERIAL GARDEN LIMITED RESIDENCE」(37文字)、にも抜かれてしまいました。

 それでも「京阪東ローズタウン・ファインパーク イーストガーデン クロワッサンコート」(36文字)が、漢字とカタカナだけを使ったネーミングで、約10年間も旧「日本一」の座を守り続けてきた事実は貴重です。

 

京阪東ローズタウン内の「ライバルたち」

 

 京阪東ローズタウンには、他にも多くの分譲マンションが建設されてきました。そのうち、京阪電気鉄道が手がけたものを、ピックアップしてみました。


 これを一覧すると、「ニュータウン連続型ネーミング」になっていて、大街区名は「京阪東ローズタウン」、中街区名は多くが「ファイン・・・」、小街区名は「A棟、B棟・・・」であることが分かります。

 その結果、名前の文字数は最大で26文字、最小で17文字あります。ただしA棟、B棟・・・などは、英語やフランス語の単語の頭文字を取ったものですので、フルに表記すれば文字数はさらに増えることになります。

 特に気になるのは、A棟〜E棟の5棟で構成される「京阪東ローズタウン・ファインガーデンあゆみヶ丘 △棟」(26文字)の最終的な文字数です。住宅地図で定評があるゼンリン地図には、「京阪東ローズタウン・ファインガーデンあゆみヶ丘△棟」は、単にA棟〜E棟ではなく、次のように表記されていました。

「京阪東ローズタウン・ファインガーデンあゆみヶ丘 A棟アゼリアコート」(33文字)
「京阪東ローズタウン・ファインガーデンあゆみヶ丘 B棟ベゴニアコート」(33文字)
「京阪東ローズタウン・ファインガーデンあゆみヶ丘 C棟チェリーコート」(33文字)
「京阪東ローズタウン・ファインガーデンあゆみヶ丘 D棟デイジーコート」(33文字)
「京阪東ローズタウン・ファインガーデンあゆみヶ丘 E棟エリカコート」(32文字)

 すなわち「京阪東ローズタウン」では、1番が「ファインパーク イーストガーデン クロワッサンコート」(36文字)、2番が「ファインガーデンあゆみヶ丘 A棟アゼリアコート」(33文字)など4棟ということになります。

 

家族型(姓名型)1位候補「藤和シティホームズ綾瀬しょうぶ沼公園」

 

 「単独型(個別型)ネーミング」、「ニュータウン連続型ネーミング」と来て、次に「家族型(姓名型)ネーミング」による、ランキング上位候補を紹介しましょう。

【1位候補「藤和シティホームズ綾瀬しょうぶ沼公園アクアフィールレジデンス」】

 30文字──藤和不動産(現・三菱地所レジデンス)が東京都足立区谷中1丁目に分譲。2005年12月完成。9階建、24戸。

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 パンフレットを入手して確認したところ、この分譲マンション(全体)は、東側の棟(アクアフィールレジデンス、9階建、24戸)と、西側の棟(タワービューレジデンス、16階建、33戸)という、2棟構成の「家族型」でした。つまり東棟24戸と西棟33戸を合計して、全体では57戸のマンションです。

 配置図を見ると、敷地の中央にシンボルツリーがあり、それを挟むようにして東棟と西棟のエントランスが配置されています。

 このうち「アクアフィール」とは何だろうと思ってパンフレットを調べると、「AQUA FEEL」と書いてありました。訳すと「水の感覚」あるいは「水に触れる」となります。マンションの近くには「しょうぶ沼公園」があり、「アクアフィール」のすぐ東側を「仲居堀」という親水水路が流れています。よって、それにちなんだネーミングと思われます。

 このマンションの名前は「家族型(姓名型)ネーミング」なので、2段階構成になります。表にまとめました。

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 次に“グーグル占い”の結果です。

 (1)「藤和シティホームズ綾瀬しょうぶ沼公園アクアフィールレジデンス」──188件がヒット。
 (2)「藤和シティホームズ綾瀬しょうぶ沼公園タワービューレジデンス」──698件がヒット。

 「アクアフィール」(24戸)と、「タワービュー」(33戸)はいわば兄弟です。それなのに、なぜ、このような大差がついたのかは、よく分かりません。

 念のために、足立区のウエブサイトで「住居表示の届け出」という項目を調べましたが、「マンション名の文字数制限」に関する説明はありませんでした。

 

綜合的な「名前の長さランキング」を初公開

 

 最後に、「ニュータウン連続型ネーミング」、「家族型(姓名型)ネーミング」、「単独型(個別型)ネーミング」という3種類について、ここで取り上げた分譲マンションの「名前の長さランキング」を作成してみました。

 なお、「ニュータウン連続型ネーミング」のマンションについては、「1つのニュータウンからは、1つのマンションだけを取り上げる」ことを原則にしました。

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 表に示した「名前の長さランキング」では、1位と2位に明らかなように、アルファベット表記(英語表記)の方が文字数を稼ぐことができるため断然有利です。

 その点で悩ましいのが、4位候補の「I-link」(35文字)です。パンフレットや図面集の物件概要を見ると、実際は「ザ タワーズ」以下はアルファベット表記になっていました。それを受け入れると47文字にも達して、一気に1位候補に躍り出てしまうのです。

 前回のコラム、日本一名前が長い分譲マンションの「ふわふわと定まらない文字数」──では、とりあえずこの事実をタンスの中に入れてしまいました。しかし、綜合的なランキングを作るとなると、いつまでも入れっぱなしというワケにはいきません。

 それゆえ、ランキングの末尾に、「幻の1位候補」として記録しておきました。これで肩の荷が下りたので、「ホッ」と一息です。

 もう1つ悩ましいのが、単語と単語の間のスペース(空欄)を、1字と数えるか0字と数えるかによって、ランキングの順位がコロコロと変わってしまうことです。

 それゆえに1位や2位と断定することを避け、1位候補とか2位候補などと幅を持たせた表現にしました。

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。