細野透の「赤信号・黄信号・青信号」不定期

[第18号]新会社「阪急阪神不動産」とジオ「7つの誓い」

2018年08月07日

細野 透 ( ほその とおる )

宝塚音楽学校のモットー「清く 正しく 美しく」を連想

 新築マンションのデベロッパー(事業主、売主)は、大きく「財閥系」「金融系」「電鉄系」「メーカー系」「ゼネコン系」「インフラ系」「商社系」「独立系」という8つのタイプに分類することができます。

 今年4月、そのうち「電鉄系」デベロッパーで、大きな出来事がありました。大阪市に本社を構える「阪急不動産」と「阪神電鉄の不動産部門」が合体して、新たに「阪急阪神不動産」が誕生したのです。

 新会社が供給するマンションのブランド名は、阪急不動産のブランド名「ジオ」を引き継ぎます。新会社のウェブサイトには、「ジオ7つの誓い」というメッセージが掲載されていました。

ジオ7つの誓い

 「7つの誓い」というタイトルはロマンチックですね。私自身は、阪急電鉄とは縁が深い宝塚音楽学校のモットー、「清く 正しく 美しく」を連想してしまいました。

 そこまではいいのですが、阪神電鉄が所有する「甲子園球場」を本拠とする阪神タイガースの熱烈なファン、すなわち「トラキチ」の皆さんの姿を思い浮かべると、心配がないワケではありません。

 「7つの誓い」のうち、「七 阪急阪神100余年の歴史で築き上げた信頼を次代へと継ぐ」の中には、当然のことながら、トラキチの皆さんの歴史も含まれるワケです。

 “トラキチ”である可能性が高い「阪神電鉄の不動産部門」出身者の皆さんは、“清く正しく美しい系”である「阪急不動産」出身者の皆さんと、うまくなじめるのでしょうか?

(※ 注)念のためにお断りしておきますが、末尾の数行はもちろんジョークです。

 

「電鉄系デベロッパー4社」の中での位置付け

 新たに誕生した阪急阪神不動産は、「電鉄系デベロッパー」の中ではどのように位置付けられるのでしょうか。

 不動産経済研究所が2018年2月に公表した「2017年の事業主別マンション発売戸数ランキング」の中から、「電鉄系デベロッパー4社」すなわち阪急不動産(大阪市)、東急不動産(東京都港区)、近鉄不動産(大阪市)、名鉄不動産(名古屋市)」の数字をピックアップしてみました。

電鉄系デベロッパー

 阪急不動産は全国ランキングで12位、首都圏ランキングで11位、近畿圏ランキングで5位ですが、電鉄系デベロッパー4社の中では全国・首都圏・近畿圏ともトップを占めています。

 もうひとつの特徴は、「その他エリア」が0戸であること。ずいぶん、きっぱりしていますね。この「その他エリア」は、主として中京圏を意味しています。

 発売戸数ランキングを見る限りでは、新会社「阪急阪神不動産」の当面の課題は、首都圏の数字を積み上げ、近畿圏のシェアを維持し、中京圏へ進出するかどうか検討し、全国ランキングで10位以内に入ることを目指す──といった方向になると思われます。

 私がこのランキングを見て感じたのは、「メジャーセブン(マンション大手7社)──住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス(50音順)」の一角を占める、東急不動産の現状でした。

 東急不動産は、ランキングでは全国・首都圏・近畿圏とも、阪急不動産を下回っています。また本拠地の首都圏が374戸、近畿圏520戸と、特に首都圏での停滞が目立っています。

 

徒歩10分圏内に5つの商店街がある「ジオ世田谷松原」

 阪急阪神不動産のマンション「ジオ」を紹介するウェブサイトを見ると、大きく「WEST──関西の物件を探す」、「EAST──首都圏の物件を探す」という二重構成になっています。そして2018年7月時点では、「WESTに26物件」「EASTに20物件」が掲載されています。

 私は今年2月に関西のジオを取材したのに続いて、7月には首都圏のジオを取材しました。小田急小田原線「梅ヶ丘」駅から徒歩7分の距離にある「ジオ世田谷松原」(6階建て、39戸、2018年5月竣工)です。

 徒歩10分圏内に、梅丘商店街(約190店舗)、東松原商店街(約120店舗)、赤堤商店街(約60店舗)、豪徳寺商店街(約120店舗)、山下商店街(約100店舗)という5つの商店街があるのが特徴です。

 取材で入手したパンフレットや図面集などの中に、『QUALITY BOOK』と題する資料がありました。それを手に取ってパラパラめくっていたら、末尾にはやはり「ジオ、7つの誓い」が書いてありました。

 また『世田谷ライフ』と題する資料を眺めていたら、やはり末尾に「あなたのライフスタイルをサポートする10のこと」が書いてありました。

 (01)一般でも利用できる図書館はありますか?
 (02)保育園や幼稚園はありますか?
 (03)多目的で使える世田谷区運営のイベント会場はありますか?
 (04)区役所までどのくらいの距離ですか?
 (05)梅ヶ丘広域避難所はどこですか?
 (06)郵便局はありますか?
 (07)学区内の小・中学校はどこですか?
 (08)近くに病院はありますか?
 (09)AEDの設置はありますか?
 (10)警察署や消防署はどこですか?

 資料には「10の質問」への回答が分かりやすく書いてあります。

 「7つの誓い」や「10のこと」に象徴されるように、1つずつ具体的に説明しようとする姿勢が、阪急阪神不動産ならではの誠意の示し方なのかもしれません。

 

写真で見る「ジオ世田谷松原」

  最後に「ジオ世田谷松原」を画像で紹介します(画像はすべて阪急阪神不動産の提供)。

アプローチ空間
アプローチ空間

エントランスホール
エントランスホール

東側外観
東側外観


【ジオ世田谷松原の概要】
 所在地─東京都世田谷区松原6丁目30番14号(住居表示)
 交通─小田急小田原線「梅ヶ丘」駅 徒歩7分
 総戸数─39戸
 構造・規模─鉄筋コンクリート造、地上6階建
 敷地面積─1372平方メートル
 建築面積─679平方メートル
 用途地域─第1種住居地域
 建ぺい率─49.51%(法定建ぺい率60%)
 容積率─199.30%(法定容積率200%)
 竣工時期─2018年4月27日竣工済
 入居時期─2018年12月上旬(予定)
 売主─阪急阪神不動産
 管理会社─阪急阪神ハウジングサポート
 施工会社─アイサワ工業東京支店
 設計・監理─協立建築設計事務所
       アイサワ工業東京支店一級建築士事務所
 駐車場─11台
 自転車置場─55台

 

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。