細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第21号]人生100年時代の住みたい街「プラウドシティ日吉」

2018年11月26日

野村不動産の宮嶋社長が語った「新・街づくり構想」

 野村不動産、関電不動産開発、パナソニックホームズの3社は、分譲マンション「プラウドシティ日吉(総戸数1320戸)」のうち、「レジデンス1(362戸)」」の第1期販売を11月下旬に開始する予定です。

 それに先立って野村不動産は、「プラウドシティ日吉・マンションギャラリー」を会場にして、報道関係者を対象に、「野村不動産グループが考える新・街づくり構想──『BE UNITED構想』発表会」を開催しました。

 この発表会では、同社の宮嶋誠一社長が『BE UNITED構想』について自ら説明することもあって、50名を超える報道関係者が出席。また説明後の質疑応答も活発で、大いに盛り上がりました。

 『BE UNITED構想』とは何でしょうか。分かりやすくいえば、「ハードとしての街づくり」だけを重視するのではなく、街が完成した後の「ソフトとしての街づくり」も重視していきましょうという考え方です。

 そのために大切なのは、「当事者」と「地域の関係者」の連携です。

 「当事者」とは、街を作った不動産会社、マンションの入居者や管理会社、商業施設などの所有者や運営者などのことです。「地域の関係者」とは行政、地域の自治会や個人や企業、そして学校などのことです。

 野村不動産は、「当事者」と「地域の関係者」が連携するための活動全体を『ACTO』と名付けました。その内容を具体的に説明しましょう。

 (1)野村不動産がグループの社員を「エリアデザイナー」として配置する。

 (2)エリアデザイナーはコミュニティ活動を行う組織の設立をサポートする。

 (3)エリアデザイナーは、街開き前から、行政や周辺地域との交流を図る。

 (4)野村不動産グループは「ACTO」と名付けた共有施設を設置・運営する。

 (5)野村不動産グループは掲示板的な役割を持つ街サイトを開設する。

「プラウドシティ日吉」全体図

(街としての「プラウドシティ日吉」全体図。「レジデンス棟3棟(戸数1320戸)」を中心に、「複合商業施設」「健康支援施設」「サービス付き高齢者向け住宅」「地域貢献施設(地域交流スペース)」などが建設される。画像データは野村不動産の提供)

 

「住」「商」「健」「学」などが揃う街

 次に、街としての「プラウドシティ日吉」について、説明しましょう。

 所在地─横浜市港北区箕輪町2丁目
 交通情報─東急東横線・目黒線「日吉駅」徒歩9分
 敷地面積─約5ヘクタール

 街全体のテーマは「人生100年時代を見据えた多世代対応・多機能集積型の大規模複合開発」です。「レジデンス棟3棟」(戸数1320戸)を中心に、敷地内には「複合商業施設」「健康支援施設」「地域交流スペース」「サービス付き高齢者向け住宅」が建設される予定です。

 (1)複合商業施設──生鮮売り場、コンビニ、クリニック、調剤薬局、認可保育園

 (2)健康支援施設──スポーツクラブ、スポーツスタジオ、コミュニティカフェ

 (3)地域交流スペース──まちのリビング、まちのコワーキングスペース

 (4)サービス付き高齢者向け住宅──高齢者が健康で豊かな生活を実現できる住宅

 このほか、隣接地(敷地面積約1ヘクタール)には、「横浜市立の小学校」が新設される予定です。

 次に、分譲マンションとしての「プラウドシティ日吉」について、説明しましょう。こちらは「レジデンス棟3棟」(戸数1320戸)のうち、「レジデンス1」の概要だけが公表されています。

 構造─免震構造 
 規模─地上20階
 戸数─362戸
 専有面積─約70〜約86平方メートル
 平均坪単価──約300万円
 竣工予定──2019年12月 
 設計・施工──三井住友建設

レジデンス1の完成予想写真
(レジデンス1の完成予想写真。画像データは野村不動産の提供)

 

東急東横線の「住みたい街ランキング」 

 渋谷駅と横浜駅を結ぶ東急東横線には、住みたい街として人気の駅が数多く存在します。リクルートの「2018年・関東住みたい街ランキング」を参考に、各駅のランキングを表にしてみました。なお、駅名の横に黒丸●を付けた駅は、「通勤特急の停車駅」を意味しています。

各駅のランキング

 横浜が1位、武蔵小杉が6位、渋谷と中目黒が11位、自由が丘が13位です。

 私は大学院生の時代に自由が丘駅から徒歩7分くらいのアパートに住んでいたことがあり、東横線の沿線事情にはそれなりに詳しいつもりです。

 武蔵小杉駅周辺は当時、事業所(工場)とグラウンド(運動場)の街でした。しかし、2000年代以降に再開発が行われて、タワーマンションが建ち並ぶ街に変身。トントン拍子に出世して、関東住みたい街ランキングでなんと6位になってしまいました。

 それに対して、日吉駅の東口には慶応大学の広大な日吉キャンパスがあり、西口には放射状に広がる駅前商店街があるため、お洒落な街というイメージがありました。当時、関東住みたい街ランキングがあったとすれば、上位に入っていたかもしれません。

 しかし現在の日吉駅周辺は、街全体がそのまま歳を取ってしまったような感じです。それゆえに98位に甘んじているのかもしれません。

日吉駅から「プラウドシティ日吉」までの案内図
(日吉駅から「プラウドシティ日吉」までの案内図。画像データは野村不動産の提供)

 

日吉駅の順位も上昇する可能性

 さて街としての「プラウドシティ日吉」全体が完成するのは2022〜23年頃と思われます。その頃に日吉駅は、「関東住みたい街ランキング」で現在の98位と比べて、どうなっているのでしょうか。

 それを占うとき、役に立つかもしれないデータが見つかりました。不動産情報サービスのマーキュリー社が、今年10月に発表した「綱島駅再開発に伴う新築マンション相場動向」というレポートです──。

 2018年3月に開業した複合再開発「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン(綱島SST)」、および2022年頃に完了する「東急東横線綱島駅前の再開発計画」の影響で、新築分譲マンション相場が直近の数年間で急速な値上がりを見せている。

 綱島駅を最寄り駅とする分譲マンションの平均坪単価は、計画が持ち上がる以前の2011年には188万7000円だったのに、昨2017年には264万5000円と40.1パーセントも上昇し、かつ販売戸数も過去最多となった──。

 坪単価が上昇し、販売戸数が増加すると、一般的には「住みたい街ランキング」の順位が上がります。したがって、現在はランキング144位という綱島駅の順位が、来年は上昇するかもしれません。

 そして2022〜23年頃に、「プラウドシティ日吉」全体が完成。「人生100年時代の住みたい街」という評価が定着していけば、現在はランキング98位の日吉駅の順位も上昇する可能性があります。

 

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。