細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第24号]所沢駅西口の再開発物件「シティタワー所沢クラッシィ」

2019年02月18日

24年ぶりに『億ション』、最高価格は1億2980万円

 2019年の初取材に選んだ物件は、埼玉県所沢市で販売されているタワーマンション、「シティタワー所沢クラッシィ」(29階建て、311戸)です。

 歳時記カレンダーに、「大寒──極寒に見舞われるが、春の兆しあり」と記された1月下旬の寒い日に、西武池袋線・西武新宿線の所沢駅で下車して、「所沢マンションギャラリー」を訪ねました。

 (一)この物件に関しては、まず日本経済新聞電子版が、「埼玉・所沢駅のタワーマンション、17日販売開始」というタイトルで記事を掲載しました(2018年12月13日22時に掲載)。

 (二)それとは別に、住友不動産広報部が報道関係者に宛てて、メールで「シティタワー所沢クラッシィ、第1期販売開始」と題するリリースを発信しました(12月14日14時29分に発信)。

  この(一)と(二)を比べると、日経新聞電子版の記事が住友不動産のリリースより約16時間早いので、ささやかではありますが、日経電子版の「スクープ」だったということになります。

 (三)そして2019年の正月早々に、朝日新聞デジタルが、「シティタワー所沢クラッシィ」に関するニュースを報道しました(2019年1月5日7時20分に掲載)。

 記事のタイトルは、「埼玉・所沢に24年ぶり『億ション』、もう複数戸売れた」。本文では、「今回の最多価格は5千万円台で、最高価格は1億2980万円。10月の消費増税を見越してか問い合わせや見学が相次ぎ、億ションは昨年末に複数戸売れたという」と説明しています。

 この記事について、「シティタワー所沢クラッシィ」の販売担当者は、次のように説明してくれました。

「朝日新聞デジタルの記事は、まもなく、Yahooニュースのヘッドラインに転載されました」。

「その効果は大きかったですね。Yahooで見ました、といってこのマンションギャラリーを訪ねて来られるお客様は、百数十組を超えました。まだほとんど広告もしていなかった時期でしたので、本当に驚きました」。

外観
(「シティタワー所沢クラッシィ」外観、画像はすべて住友不動産提供)

 

「将来価値が高い街」への変身目指して大規模再開発

 所沢駅の西口では、西武鉄道の車両工場跡地を含む約8・5ヘクタールの広大なエリアで、大規模な再開発事業が進行中です。

 再開発エリアは大きくA地区、B地区、C地区、D地区の4地区に分かれています。そして、「シティタワー所沢クラッシィ」(29階建て、311戸)は、そのうちA地区に建設されています。
 
 さて、雑誌『週刊ダイヤモンド』2018年2月3日号は、「通勤25分圏外の勝つ街、負ける街」を特集。所沢については、「西武の二子玉川」と位置付けています。これはどういう意味でしょうか。

 実は、東急田園都市線と東急大井町線が通る、東京都世田谷区の二子玉川駅は、駅周辺を再開発してグレードの高い商業施設およびマンションを集積することで、「勝つ街」に変身することができました。

 ここ埼玉県所沢市では、その二子玉川を1つのお手本にして、駅周辺を再開発してグレードの高い商業施設とマンションを集積。それによって「勝つ街」、すなわち「将来価値が高い街」に変身しようと目指しているのです。

キッズルーム
(マンション3階のキッズルーム)

 

再開発組合は売主を「コンペ」で決定

 所沢駅東口には2018年3月、「ちょっと上質」なライフスタイルを提案する大型商業施設、「グランエミオ所沢」(Ⅰ期80店)がオープンしました。

 また駅西口には再開発組合が事業主、住友不動産と住友商事が事業協力者(売主)となって、「シティタワー所沢クラッシィ」を建設している最中です。竣工は2021年1月の予定です。

 再開発組合は売主を決定するに際して「コンペ」を実施。大手デベロッパーといわれる会社はほとんど参加したそうです。

 コンペ案を作成するとき、住友不動産はマンション発売戸数が日本一という実績をベースにしました。

 また住友商事は「グランエミオ所沢」をオープンさせるに際して、「西武鉄道が建物を保有し、西武プロパティーズが開発を担当する」、また「住友商事と住商アーバン開発が運営・管理を担当する」、という役割を通じて得たノウハウをベースにしました。

 それが功を奏して、住友不動産と住友商事のコンペ案が採用されたということです。

バルコニーから、西側の狭山丘陵を見る
(バルコニーから、西側の狭山丘陵を見る)

 

マンションから駅西口までペデストリアンデッキを架ける

 「シティタワー所沢クラッシィ」は所沢駅の西口から徒歩3分と駅近です。特筆したいのは、「マンションの2階」から「駅西口の2階」まで、ペデストリアンデッキが架けられることです。

 このペデストリアンデッキの途中には、「西武所沢店」や「ワルツ所沢」への入口も設けられます。また、西口駅前から続く「所沢プロペ商店街」や「所沢ファルマン通り商店会」へのアクセスもスムーズです。

 「プロペ商店街?」「ファルマン通り?」

 所沢を知らない人にとっては、プロペ通りにある「プロペ商店街」や、ファルマン通りにある「ファルマン通り商店会」は、不思議な名前かもしれません。

 所沢市はかつて日本の航空発祥の地であり、日本で最初の飛行場である陸軍所沢飛行場がありました。その旧所沢飛行場は現在、所沢航空記念公園として整備されています。

 すなわちプロペ通りは、「プロペラ」に由来する名前です。またファルマン通りは、初めて日本の空を飛んだフランス製偵察機、「ファルマン」に由来する名前ということです。

 そういう歴史を大切にする意味でも、新しく架けられるペデストリアンデッキに、何かユニークな名前を付けたら面白いでしょうね。

所沢駅西口の案内図
(所沢駅西口の案内図)

 

「シティタワー所沢クラッシィ」の概要

 所在地─埼玉県所沢市「所沢都市計画事業」
     所沢駅西口土地区画整理事業施行地区内
 交通─西武池袋線・西武新宿線「所沢」駅 徒歩3分
 総戸数─住宅311戸(非分譲住戸35戸、広告対象外住戸15戸含む)
     その他店舗9区画 
 完成年月─2021年1月中旬予定 
 敷地面積─4012.60平方メートル 
 建築面積─2369.80平方メートル  
 建築延床面積─3万8529.28平方メートル
 構造─鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)
 規模─地上29階・地下2階・塔屋2階建     
 用途地域─商業地域 
 建ぺい率─80%
 容積率─400% 
 駐車場総台数─125台
 自転車置場総台数─468台
 バイク置場総台数─15台 
 管理会社─住友不動産建物サービス株式会社 
 売主─住友不動産・住友商事
 設計─INA新建築研究所 
 施工─前田・西武建設共同企業体 

リビング・ダイニングの夕景
(リビング・ダイニングの夕景)

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。