細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第29号]スーモ首都圏が「住みたい街ランキング」、スーモ名古屋が「絶品パンの街」を特集した理由

2019年07月19日

マンション購入を考えるユーザーにとって「必読の情報誌」

 リクルートが発行する情報誌『SUUMO(スーモ)新築マンション』は、新築マンションを購入しようとするユーザーにとって、必読誌ともいうべきフリーマガジン(無料誌)です。

 この『スーモ新築マンション』は現在、「首都圏版」「横浜・川崎・湘南版」「東京市部・神奈川北西版」「埼玉県版」「千葉県・茨城県南版」「関西版」「名古屋版」の7種類が発行されています。

 私は「マンションに関する記事」を書く仕事をしている関係で、このうち「首都圏版」「関西版」「名古屋版」の3冊を、オンライン書店『Fujisan』で購入しています。

 『Fujisan』で購入しようとすると、無料誌なので雑誌代は「0円」ですが、送料として1冊当たり「137円」の費用が発生します。何だか、不思議な時代になってしまいましたね。

 

『スーモ新築マンション』6月25日号に奇妙な現象

 『スーモ新築マンション』6月25日号で、奇妙な現象が観察されました。

 「首都圏版」「横浜・川崎・湘南版」「東京市部・神奈川北西版」「埼玉県版」「千葉県・茨城県南版」「関西版」の6冊──「住みたい街ランキング」特集を掲載。

 「名古屋版」──「住みたい街ランキング」特集ではなく、「名古屋で味わう絶品パン美味しい街」特集を掲載。

 「首都圏版」「関西版」などの6冊は、リクルートが毎年実施し社会的な影響力も大きいアンケート調査、「住みたい街ランキング」について特集しています。それなのに「名古屋版」だけが、どういうワケか「絶品パン美味しい街」を特集しているのです。

 その証拠として、以下にスーモ「首都圏版」「関西版」「名古屋版」6月25日号の表紙写真を、掲載しておきましょう。

スーモ

 

名古屋に全国的なレベルの「絶品パン」が「出現」?

 さて、スーモ新築マンション「名古屋版」だけが、「絶品パン美味しい街」特集を掲載したのは、名古屋に全国的なレベルの「絶品パン」が「出現」したためなのでしょうか?

 それを確かめるために、グーグルで「名古屋、絶品パン」と検索すると、約112件 のデータが出てきました。

 しかし「大阪、絶品パン」だと約142件、「東京、絶品パン」だと約120件、「日本、絶品パン」だと約128件のデータがありました。すなわち、「名古屋の絶品パン」が、特別ということではなさそうです。

 念のためにスーモ「名古屋版」に掲載された、「絶品パン美味しい街」特集を詳しくチェックしてみましょう。

 するとまず、地元名古屋を食べ歩き、6万2000人ものフォロワーを誇るという人気グルメインスタグラマー「nagoyaさん」へのインタビュー記事が掲載されていました。続いて、話題の6店を各1ページずつ割いて詳しく紹介した、グラビア的な記事もありました。

 いずれにしても、名古屋に全国的なレベルで話題になっている「絶品パン」が出現したため、「住みたい街ランキング」特集を差し置いて、「名古屋で味わう絶品パンおいしい街」特集を掲載したということではないようです。

 

記事を読んでくれている「あなたに向けた質問」

 ここで、この記事を読んでくれているあなたに向けて、私からの質問です。

『名古屋版・スーモ新築マンション6月25日号』に、「名古屋2019─住みたい街ランキング」特集が掲載されなかった理由がお分かりですか?

 その正解は、次のデータを見ると推察可能です。

 2019年2月28日──リクルート住まいカンパニーが、「2019年版・関東版住みたい街ランキング」に関するプレスリリースを公表。

 2019年3月13日──同じく「2019年版・関西版住みたい街ランキング」を公表。

 2019年7月X日──同じく「2019年版・愛知県版住みたい街ランキング」を公表予定。

 要するに、『名古屋版・スーモ新築マンション6月25日号』が発行された6月下旬の時点では、「2019年版・愛知県版住みたい街ランキング」のプレスリリースは公表されていませんでした。それゆえに、特集を組むことが不可能だったのです。

 なお、2018年のプレスリリースをチェックすると、「愛知県版住みたい街ランキング」のプレスリリースは7月に公表されていたので、今年も7月X日に公表されると思われます。

 

スーモ編集部は「駒込、大井町、三鷹、日吉、和光市、柏の葉」に注目

 次に、「2019年版・関東版住みたい街ランキング」特集の内容を押さえておきましょう。

 一「住みたい街トップ100リスト」

 二「編集部が注目する住みたい街ウオッチ──駒込、大井町、三鷹、日吉、和光市、柏の葉」

 三「住みたい自治体ランキング紹介─東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県」

 四「住みたい街トップ100エリアのマンション特集」

 そして、「2019年版・関西版住みたい街ランキング」特集も、ほぼ似たような内容です。

 最後に、住みたい街ランキング関東版および関西版に関する、プレスリリースのURLを紹介しておきましょう。

 ■【SUUMO住みたい街ランキング2019関東版「プレスリリース」】
  https://www.recruit-sumai.co.jp/press/upload/71538f970e7affeb6ea3910e9f6ab318.pdf

 ■【SUUMO住みたい街ランキング2019関西版「プレスリリース」】
  https://www.recruit-sumai.co.jp/press/upload/1962954b121a51c42f459e3c79fe564e.pdf

 

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。