細野透の「赤信号・黄信号・青信号」不定期

[第37号]マンションの敷地に立って、飛行機の音に耳を傾ける

2020年03月06日

細野 透 ( ほその とおる )

羽田空港「新飛行ルート」の運用開始へ

 2020年3月29日から、羽田空港の国際線を利用する「飛行機の発着数」を増やすために設定された、「新飛行ルート」の運用が開始される予定です。

 この新飛行ルートによって、東京の都心に位置する人気の住宅地でも、飛行機の騒音が増大するエリアが増える見通しです。

 したがって、新ルートの近くでマンションの購入を検討している皆さんは、午後3時〜午後7時の時間帯に、必ずマンションの敷地を訪れて、飛行機の音にしっかり耳を傾けてください。

 「新飛行ルート」としては、南風が吹いたときに利用される「主に東京都心の上空を通るルート」と、北風が吹いたときに利用される「主に千葉県の上空を通るルート」という、2つのタイプが用意されました。

南風が吹いた時のルート

 このうち「南風が吹いた時のルート」を、上図に示しました。

 左側の図が、「15時(午後3時)から19時(午後7時)」までの4時間に利用される、「都心の上空を通る新ルート」です。このルートには、東京都品川区、目黒区、港区、渋谷区、新宿区、中野区、豊島区などが並んでいます。

 右側の図が、「それ以外の時間帯」に利用される、「主に千葉県の上空を通るルート」です。なおこのルートは、3月29日以前にも使われていました。

 

「北風時のルート」

北風が吹いた時のルート

 次に「北風が吹いた時のルート」を、上図に示しました。

「左側の図(新たな飛行経路」と「右側の図(現行と同じ飛行経路)」を比べると、全体としては大きな違いはありません。ただし、新たなルートには、東京都の江東区・江戸川区・墨田区が組み入れられています。

 データは国土交通省のウェブサイト、「羽田空港のこれからに掲載された図」を引用しました。
 URL <https://www.mlit.go.jp/koku/haneda/>

 

麻布・恵比寿・渋谷付近で「約68〜74dB」の騒音 

 「南風時」と「北風時」の図を見比べると、「新飛行ルート」による新たな騒音を警戒しなければならないのは、次の各区であることが分かります。

 ◆南風が吹いている時の午後3時〜午後7時
  東京都品川区、目黒区、港区、渋谷区、新宿区、中野区、豊島区

 ◆北風が吹いている時の午後3時〜午後7時
  江東区・江戸川区・墨田区

 この時、上空の飛行機は、どの程度の騒音(dB、デシベル)を出すのでしょうか。

 国土交通省のウェブサイト「羽田空港のこれから」は、次のように予想しています。

 滑走路から約6キロ離れた大井埠頭・大井町付近──約76〜80dB
 滑走路から約12キロ離れた麻布・恵比寿・渋谷付近──約68〜74dB
 滑走路から約17キロ離れた新宿付近──約63〜70dB

 

「環境騒音」と「航空機騒音」の比較

 新飛行ルートに伴うこのような騒音を、どう受け止めればいいのでしょうか。国土交通省のウェブサイト、「羽田空港のこれから」には、次のような図も掲載されています。

羽田空港のこれから

 この図を見ると、飛行機の音は60〜80dbとなっています。そして、そのうち70〜80dBは、「幹線道際、掃除機、騒々しい街頭」と同レベルです。

 ということは、先に示した「大井埠頭・大井町付近(約76〜80dB)」や、「麻布・恵比寿・渋谷付近(約68〜74dB)」の騒音は「要警戒」と考えなければなりません。

 また、「新宿付近(約63〜70dB)の騒音」は「要注意」ということになります。

 

居住者間トラブルの上位を占める「生活音の問題」

 話は少し変わります。国土交通省・住宅局市街地建築課・マンション政策室は、2019年4月26日に、「平成30年度マンション総合調査結果報告書」を公表しています。

 <http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html>

 その中に、「居住者間のマナーをめぐるトラブル」の具体的内容、という図があります。

居住者間のマナーをめぐるトラブル

 この図に見るように、トラブルの上位を占めているのは、主として「違法駐車・違法駐輪」、「ペット飼育」、「生活音」という3項目です。

 そして平成30年度には、「生活音が」38.0%で1位になりました。これは、騒音に敏感な人が増えていることを裏付ける、貴重なデータでもあります。

 それゆえに、新ルートの近くに建つマンションの購入を検討している皆さんは、午後3時〜午後7時という時間帯に、必ずマンションの敷地を訪れて、飛行機の音にしっかりと耳を傾けてください。

 

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。