細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第38号]新型コロナand五輪の延期、晴海フラッグに二重の難題

2020年04月01日

2019年春に販売活動をスタート

 新型コロナウィルス問題は、「新築分譲マンションの販売」にも大きな影響を及ぼしています。その中でも、特に深刻な立場に追い込まれているのは、分譲マンション4145戸、賃貸マンション1487戸、商業施設などで構成される「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」です。

 晴海フラッグは“超ビッグプロジェクト”であるため、そのデベロッパーとして、三井不動産レジデンシャル・三菱地所レジデンス・野村不動産・住友不動産・住友商事・東急不動産・東京建物・NTT都市開発・新日鉄興和不動産・大和ハウス工業・三井不動産という、11社が名前を連ねています。 

 当初の計画では、マンション棟は2020年東京五輪(7月〜8月)の選手村として使用。五輪が終わった後に改造されて、箱型のマンション棟は2022年4月、タワー型のマンション棟は2023年4月に完成する予定でした。

 それに備えて、2019年春にモデルルーム「HARUMI FLAG パビリオン」をオープン。販売活動をスタートさせていました。

 住戸の最多専有面積帯──85平方メートル台
 住戸の最低販売価格──4900万円台

「晴海フラッグ」ウェブサイトのURL<https://www.31sumai.com/mfr/X1604/#!>

「晴海フラッグ」の最終完成予想図

「晴海フラッグ」の最終完成予想図(データはHARUMI FLAG広報事務局の提供)

 

新型コロナウィルスに対する「感染、流行拡大の防止策」

 2019年12月、中国の湖北省武漢市で新型コロナウィルス感染症が発生。日本でも2020年1月下旬になって、感染者が現れました。

 新型コロナ問題に際して、分譲マンション各社はまず、「マンション販売センターにおける慎重な接客」に注意を払いました。そして「晴海フラッグ」のウェブサイトにも、2020年2月29日付(国内感染者242人の段階)で、次のようなお知らせが掲示されました。

 【新型コロナウィルスへの感染、流行拡大の防止策について】

 「HARUMI FLAG パビリオン」では、お客様ならびにスタッフの健康と安全のため、一部マスク着用にてご対応させていただいております。

 なお、ご来場のお客様や当パビリオン従業者等への安全配慮のため、下記事由に該当するお客様のご見学はご遠慮いただいております。

 ◆来場日より14日以内に以下の地域に滞在していた方
  ①中華人民共和国の湖北省、浙江省
  ②大韓民国の大邱広域市、慶尚北道清道郡

 ◆風邪の症状や37.5度以上の発熱、強いだるさや息苦しさ等がある方

 恐れ入りますが、該当されるお客様は、お申し出いただきますようお願い申し上げます。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

 

新規販売を6月以降に延期

 それから約1ヵ月後の、2020年3月23日 (国内感染者1140人の段階)。「晴海フラッグ」のウェブサイトに、新たなお知らせが掲示されました。

 【販売スケジュールの変更について】 

 平素より「HARUMI FLAG」にご関心をお寄せいただき、誠にありがとうございます。

 現状の新型コロナウイルス(COVID-19)感染状況を鑑み、本物件は多くの方からのお申込みを想定していることから、ご登録およびご契約手続きが大規模な“イベント”であると判断させて頂いたため、当初予定していた販売開始時期を延期させていただく運びとなりました。 

 新たな販売開始時期につきましては、6月以降を予定しておりますが、感染状況や行政当局からの情報を見極めた上で検討してまいります。何卒ご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、「パビリオン見学会」は引き続き開催いたしますが、状況を鑑み、通常よりも予約組数は制限してご案内させていただいておりますので、あらかじめご了承ください。

 ◆新型コロナウイルスへの感染、流行拡大の防止策について

 「HARUMI FLAG パビリオン」では、お客様ならびにスタッフの健康と安全のため、一部マスク着用にてご対応させていただいております。

 なお、ご来場のお客様や当パビリオン従業者等への安全配慮のため、下記事由に該当するお客様のご見学はご遠慮いただいております。

 ◆来場日より14日以内に以下の地域に滞在していた方

 中国(香港およびマカオを含みます)、韓国、アイスランド、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、アイルランド、アンドラ、イラン、英国、エジプト、キプロス、クロアチア、サンマリノ、バチカン、ブルガリア、モナコ、ルーマニア。

 ◆風邪の症状や37.5度以上の発熱、強いだるさや息苦しさ等がある方

 ◆ご家庭や勤務先等で感染者の発症日以降に濃厚接触の可能性がある方で、 接触日から14日を経過していない方

 恐れ入りますが、該当されるお客様はお申し出いただきますようお願い申し上げます。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

 

五輪延期に伴うさらなる難題

 「晴海フラッグ」の販売開始時期の延期が発表された翌日、すなわち2020年3月24日の深夜に、東京五輪の1年程度の延期が公表されました。

 これによって、「さらなる難題」が持ち上がりました。「晴海フラッグ」は最初、東京五輪の選手村として使用され、五輪後に分譲マンションに改造される予定です。

 しかし開催が延期されることになったため、購入者への引き渡しもその分だけ遅くなると予想されます。そうすると、2023年3月の入居を見込んで契約し、子供を翌4月から保育園や小学校に入れようと考えている購入者は、生活設計が狂うことになるのです。

 その一方、「不動産契約は自然災害や今回のウイルス感染拡大など、売り主の責任とは関係のない理由で入居が延期となる場合、契約解除はできない」とされています。

 すでに販売済みの住戸では、この問題はどのように解決されるのでしょうか?

 また、2020年6月以降に販売される住戸では、デベロッパー側はどのような方針を提示するのでしょうか?

海から見える「緑道公園と4街区」の最終完成予想図

海から見る「緑道公園と4街区」の最終完成予想図(データはHARUMI FLAG広報事務局の提供)

 

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。