●●●新型コロナ以前のマンション購入手続き
新型コロナ問題が発生する以前、ユーザーが新築分譲マンションを購入しようと考えたとき、その作業は次のような要領で行われていました。
【第1段階──気になる物件を探す】
最初の段階で、ユーザーがマンション購入の手がかりにするのは、以下のような情報源です。
① 不動産ポータルサイト
「SUUMO(スーモ)」「at home(アットホーム)」
「LIFULL HOME'S(ライフル ホームズ)」など
② マンションデベロッパー各社のウェブサイト
③ 新聞各紙(記事、および広告)
④ 経済各誌(週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済、日経ビジネスなど)
そして、この①〜④を参考にして、気になる物件を絞り込んでいくことになります。
【第2段階──気になる物件の詳しい情報を入手する】
第2段階は、気になる物件の「営業拠点(マンションギャラリー)」を訪ねて、詳しい情報を入手する作業です。次のような流れになります。
① まず「シアター」で映像を鑑賞して、マンションの全体像を把握する。
② 次に「モデルルーム」に入って、住戸空間を自分の眼でじっくり観察する。
③ さらに「打ち合わせ室」に移動。設計図や完成予想写真などを参考にして、住戸の価格や販売スケジュールについて詳しい説明を受ける。
●●●新型コロナと「三密状態」
新型コロナ問題が発生して以降、新築分譲マンションの営業拠点(マンションギャラリー)では、いわゆる「三密状態」の解消が「重要な課題」になりました。
①「密閉空間──換気の悪い空間」
②「密集場所──多くの人が密集している場所」
③「密接場面──互いに手を伸ばしたら届く距離で、会話や発声が行われている場面」
先ほど説明した、マンションギャラリーの「シアター」は、基本的には20人〜数十人が入る「密集場所」です。また、換気についても、特別に配慮されている訳ではないので、問題を抱えた「密閉空間」ということになります。
そして打ち合わせ室は、「小部屋」と読んだ方がいいような狭さです。したがって、ユーザーと販売担当者が向き合うと、「密接場面」になってしまいます。すなわち、「新型コロナ三密問題」の解消は容易ではありません。
それでは、どうすればいいのでしょうか。発想を変えるしかありません。すなわち①「密閉空間」、②「密集場所」、③「密接場面」をなくしてしまえばいいのです。
それを可能にするのが、「オンラインマンションギャラリー」と「オンライン接客」を組み合わせた、新しい方法です。
私が2020年6月下旬に、マンション大手デベロッパー各社の実情を調べた限りでは、「オンライン活用」の最先端を走っているのは、三菱地所(三菱地所レジデンス)および住友不動産の2社であると思われます。
●●●三菱地所の「マンション販売・オンライン接客」
まず5月29日に、三菱地所と三菱地所レジデンスが連名で「プレスリリース」を公表しました。
そのタイトルは──。「STAY・HOME」しながらの、あたらしい住まい探し。マンション販売の「オンライン接客」を本格稼働。全事業エリア(首都圏・名古屋・関西・広島・九州・札幌・仙台)に拡大。
これは今、注目の技術ですので、詳しく紹介することにしましょう。以下、リリースの内容を要約します。
【■「オンライン接客」は2019年8月に導入以来、145件の実績】
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、「オンライン接客」の需要は拡大しています。
顧客向けのアンケートにおいても、緊急事態宣言解除後の案内手法について、対面での接客を希望する顧客よりも、「オンライン接客」を希望する顧客の方が多いことが分かりました。
したがって、今般、実施エリアを拡大し、全事業エリア48物件(5月29日現在)を対象にして、「オンライン接客」を実施することといたしました。
また今後、緊急事態宣言が解除された後においても、新しい生活様式に対応するため、「オンライン接客」を継続して活用してまいります。
なお、「オンライン接客」への高い期待を受け、2020年5月15日から、三菱地所グループの住まいの総合窓口「三菱地所のレジデンスクラブラウンジ」においても、「オンライン無料相談」をスタートしています。
「三菱地所のレジデンスクラブラウンジ」は、三菱地所グループ各社の力を結集し、住まいに関わる情報やサービスをワンストップでご提供しています。「オンライン無料相談」では、通常は常駐しているコンシェルジュが対応する住まい相談を、ビデオ会話システムを利用し、オンラインで顧客とコンシェルジュをつなぎます。
三菱地所グループでは今後も、新販売手法の一つとして、「オンライン接客」のサービス内容の拡充を図り、顧客の利便性や満足度の向上につなげてまいります。
【■オンライン接客の手順】
①顧客・販売担当者とも、インターネットにつながるPCと電話を用意する。
②販売担当者が顧客に電話する。顧客は検索エンジン経由で、「ベルフェイス」の接続ナンバー発行ページにアクセス。販売担当者はそれを、電話口で確認する。
(画像は三菱地所のプレスリリースから引用)
③画面で「資料」や「VRモデルルーム」を共有しながら商談を進める。(※販売担当者側はカメラで顔を映しますが、顧客側のカメラは許可をいただかない限り、販売担当者側に映りません。
(画像は三菱地所のプレスリリースから引用)
プレスリリースのURL
<https://www.mec.co.jp/j/groupnews/archives/200529_mec_online.pdf>
●●●住友不動産の「リモート・マンション販売」
次いで6月1日に、住友不動産が「ニュースリリース」を公表しました。
そのタイトルは──。『リモート・マンション販売』を導入。新築マンションの物件見学からお引渡しまで「非対面」で完結、全国の販売物件を対象に2020年6月1日よりスタート。
住友不動産は、With/Afterコロナにおける新築分譲マンションの「非対面型」による新たな販売手法である『リモート・マンション販売』を、全国すべての販売物件(約70物件)を対象に、6月1日よりスタートいたします。
『リモート・マンション販売』は、対面による接客や購入手続きの回数を減らしていく、新しい生活様式を意識した利便性の高いサービスです。
購入検討の初期段階である「情報収集」から、「モデルルーム見学」「お申込み・ご契約」「重要事項説明」「お引渡し」に至るまで、ご希望に応じて非対面による対応を可能とします。
実際にモデルルームへ足を運ぶことなく、Web上にて希望するマンションの各種ご案内や販売スタッフとの住宅ローン相談などを行うことができる「オンライン見学会」をはじめ、「お申込みのオンライン化」、「IT重説」などを組合わせることで、外出を控えたい方、遠方にお住いの方、時間に限りのある方などご来場が困難なお客様に対する選択肢を拡充し、住まい選びの利便性と満足度を高めてまいります。
なお、インターネットに接続されたパソコン、もしくはスマートフォンやタブレット端末など、オンラインサービス「Zoom」を使用できる環境があれば、地方にお住いの親御様などと一緒に『オンライン見学会』 にご参加いただくことができます。
(画像は住友不動産のニュースリリースから引用)
ニュースリリースのURL
<http://www.sumitomo-rd.co.jp/uploads/20200601_release_remote-mansion.pdf>
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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。
建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。
著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。