●●●不動産のプロを対象にした「アンケート調査」
不動産の「買取再販事業」を営む、株式会社すむたす(本社・東京都港区、角高広代表)は、2021年1月21日、興味深いニュースリリースを発表しました。
──不動産のプロ、すなわち「不動産売買に関わる仕事に従事している人」を対象にして、2021年1月11日と12日に、「売れない・売れづらい不動産の理由」をテーマにしたアンケート調査を実施。すると、641名もの担当者から回答があった──。
以下、図表を交えて、その要点を説明することにましょう(図表は全てリリースに添付されていたデータを使用)。
●●●「売れない・売れづらい」理由のランキング
まず「不動産売買のプロが考える、『売れない・売れづらい不動産物件の理由』ランキング」です。
このランキングは、「青色──当てはまる」および「茶色──やや当てはまる」という2項目の数字を、合計した点数の順に並べられています。
『売れない・売れづらい不動産物件ランキング』の第1位は、「売主の希望価格が相場よりも高く設定されている」でした 。
その内訳は「当てはまる318点」+「やや当てはまる200点」=「合計518点」です。
「売主にすれば、出来るだけ高く売りたいと願う」ことは、誰にでも分かります。しかし、その一方で、「高すぎる物件は売れない」ことは、不動産のプロでなくても分かります。
第2位は、「当てはまる175点」+「やや当てはまる271点」=合計446点」になった、「共有部が汚い・状態が良くない」でした。そして第3位は、「219点+226点=445点」になった、「築古で室内状況劣化」と続きます。
このように、1位から32位までのランキングを見ると、「それは、そうだろうなぁ」と納得できるような理由が並んでいます。
ただし、私が少し気になったのは、15位の「売主の内覧対応時のイメージが悪い」でした。
物件を手放すのは、「前向きに将来に備える場合」、あるいは「経済的に追い込まれてしまった場合」のいずれかだと思われます。このうち後者だと、どうしても売主は内覧対応時に、「つらそうな表情」を見せるはずです。それを指摘されても・・・。
●●●新型コロナによる「売れない・売れづらい」理由の変化
次の図表は、新型コロナが「売れない・売れづらい理由」に、及ぼした影響を示しています。
「売れない・売れづらい理由」の1位には「医療施設や介護施設がない・少ない」、2位には「周辺にスーパーやコンビニ等の商業施設がない・少ない」という項目が並んでいます。すなわち、周辺の利便性が重視されています。
そして各理由ごとに、青色と、茶色と、緑色で塗り分けられています。このうち青色は「コロナの影響で重要度が上がった」割合、茶色が「コロナによる影響はない」割合、緑色が「コロナの影響で重要度が下がった」割合を意味しています。
1位になった、「医療施設・介護施設がない・少ない」という回答を例に、少し詳しく説明してみましょう。
青色「コロナの影響で重要度が上がった」117──回答者の23%を占めている
茶色「コロナによる影響はない」342──回答者の69%を占めている
緑色「コロナの影響で重要度が下がった」40──回答者の8%を占めている
これは「コロナの影響で、『医療施設・介護施設がない、あるいは少ない』ことの重要度が上がった」と考えた人が回答者の23%、「コロナによる影響はない」と考えた人が回答者の69%、「コロナの影響で重要度が下がった」と考えた人が回答者の8%だったことを意味しています。
●●●新型コロナによる「相談内容」の変化
次の図表は、新型コロナ禍での「不動産売却に関するお客様からの相談内容の変化」を、示しています。
売り主からの不動産売却に関する相談内容のうち、新型コロナの影響で増加したものとしては、「1位・住宅ローンを返済できなくなった」「2位・資金が必要となった」と続いています。すなわち、コロナで経済的に何らかのダメージを受けた結果と思われます。
一方、「3位・より良い住まいに住み替えたい」、「4位・勤務先の転勤・転職のため住み替えたい」は、前向きな選択かと思われます。
●●●「売れない・売れづらい不動産物件の理由──周辺環境編」
次の図表は、「売れない・売れづらい不動産物件の理由──周辺環境編」です。
上位に並ぶのは、「1位・治安リスク」「2位・水害&浸水リスク」「3位・嫌悪施設がある」「4位・地盤が緩い」「5位・周辺にスーパー&コンビニ等の商業施設がない・少ない」。こちらはコロナ禍とは関係がなさそうな理由が並んでいます。
「すむたす」のプレスリリース
URL<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000038198.html >
細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。
建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。
著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。