細野透の「赤信号・黄信号・青信号」不定期

[第49号]国交省がコロナ危機を踏まえた「新たなまちづくり計画」

2021年03月01日

細野 透 ( ほその とおる )

2021年4月のスタートを目指して

 国土交通省都市局まちづくり推進課は、2020年6月12日、「新型コロナ危機を踏まえた新しいまちづくりの方向性を検討します〜新型コロナがもたらすニュー・ノーマルに対応したまちづくりに向けて〜」、と題する資料を公表しました。

 皆さんは「ニュー・ノーマル」という言葉をご存知ですか。これは「New(新しい)」と「Normal(標準)」を組み合わせた言葉で、日本語に訳すと「新たな標準」という意味になります。

 国交省はこの資料を財務省に提出。予算を確保した上で、2021年4月から、「コロナに対応した新たなまちづくりをスタートさせたい」と考えています。

国交省の資料から引用
〔※注〕上図は国交省の資料から引用。

 資料のURL
 < https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001348170.pdf >

 

新型コロナ危機を契機に生じた「まちの変化」

 新型コロナ危機を契機にして、「まち」には次のような変化が生じています。

 ◇テレワークの進展により、働くにも住むにも「快適な環境」や、「ゆとりあるスペース」へのニーズが高まった。
 ◇東京への一極集中の是正が、進みやすくなる可能性がある。
 ◇「リアルの場」に求められるものは、「文化やエンターテイメント」など、オンラインでは代替しがたい経験を提供する機能が中心になる。
 ◇オフィス需要に変化の可能性。今後、「老朽化した中小ビルなどの需要」が減少し、余剰が発生するおそれがある。

 

新型コロナ後に目指す「まちづくりの方向性」

 「まちの変化」に直面した国交省は、「新たなまちづくりの方向性」として以下の項目を掲げています。

 ◇「複数の用途が融合した、職住近接に対応するまちづくり」を進める必要。
 ◇「働く場所・住む場所の選択肢」が広がるためには、複数の拠点が形成され、役割分担をしていく形が考えられる。
 ◇大都市は、「クリエイティブ人材を惹きつける良質なオフィス・住環境」を備え、文化や食等を提供する場として「国際競争力」を高める必要。
 ◇郊外、地方都市は、「居住の場、働く場、憩いの場」などの機能を備えた、「地元生活圏」の形成を推進。
 ◇老朽ストックの「リニューアル」、ゆとり空間や高性能な換気機能を備えた「良質なオフィスの提供」の促進が重要。


「新型コロナを契機としたまちづくりの方向性(イメージ)」
〔※注〕上図は国交省の資料「新型コロナ危機を契機としたまちづくりの方向性の検討について」から引用。

 資料のURL
 <https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001360981.pdf>

 

新型コロナを契機に生じた「都市交通の変化」

 新型コロナ危機を契機にして、「都市交通」には次のような変化が生じています。

 ◇公共交通の利用への不安や在宅勤務推奨の結果、公共交通利用者が減少。
 ◇移動時間等の削減により、時間価値の重要性が、強く認識されるものと考えられる。
 ◇近距離の移動については、公共交通から自転車に転換している可能性。
 ◇公共交通について、感染リスクも踏まえた、密度や施設のあり方の対応も必要に。
 ◇歩行者にとっては、都市のウォーカブル空間の重要性が、高まっていくと考えられる。

 

新型コロナ後に目指す「都市交通の方向性」

 そのため国交省は、次のような方向を目指そうとしています。

 ◇混雑状況のリアルタイム発信等により、過密を回避し、安心して利用できる環境が必要。
 ◇まちづくりと一体となった、総合的な交通戦略を推進する必要。
 ◇公共交通だけでなく、自転車、シェアリングモビリティなど多様な移動手段の確保、およびその利用のための環境整備が必要。
 ◇駅周辺に生活に必要な都市機能を集積させ、安全性・快適性・利便性を備えた、「駅まち空間」の整備も必要。
 ◇適切な密度の確保など、新しい街路空間の考え方の導入が必要。

 

新型コロナを契機に生じた「オープンスペースの変化」

 新型コロナ危機を契機にして、「オープンスペース」には次のような変化が生じています。

 ◇自宅で過ごす時間が増えたため、グリーンインフラとしての緑や、オープンスペースの重要性が再認識。
 ◇緑とオープンスペースは、災害等に対応するためのバッファー機能としても、役割が増大。
 ◇オープンスペースの有効活用に向けて、人材育成の必要性が高まっている。

 

新型コロナ後に目指す「オープンスペースの方向性」

 そのため国交省は、次のような方向を目指そうとしています。

 ◇グリーンインフラとしての効果を、戦略的に高めていくことが必要。
 ◇ウォーカブルな空間とオープンスペースを組み合わせて、ネットワークを形成することが重要。
 ◇まちに存在する様々な緑とオープンスペースについて、「テレワーク、テイクアウト販売への活用」などニーズに応じて柔軟に活用することが必要。
 ◇災害・感染症等のリスクに対応するためにも、緑とオープンスペースの整備が重要。
 ◇イベントだけでなく、比較的長期にわたる日常的な活用の面からも、これを支える人材育成やノウハウの展開が必要。

 

細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。