細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第51号]野村不動産が『見せる防災・しまう防災』を新提案

2021年05月06日

「災害時におけるマンションの役割」を整理

 野村不動産は、すべての新築分譲マンションの共用部に、「防災倉庫」を設置。引き渡し時に、その「防災倉庫」に、必要な備品を納めることにしています。

 このほど、それに加えて、新たに『見せる防災・しまう防災』というコンセプトを開発。東京都江戸川区に建設している「プラウド瑞江」を、『見せる防災・しまう防災』の第1号物件にすると発表しました。

「プラウド瑞江」の概要
 所在地─東京都江戸川区瑞江二丁目4番4他(地番)
 交通情報─都営地下鉄新宿線 「瑞江」駅 徒歩1分
 構造・規模─鉄筋コンクリート地上15階
 建物竣工時期─2021年11月下旬 (予定)
 入居(引渡)時期─2022年1月下旬(予定)
 総戸数─99戸
 間取り─1DK〜4LDK
 専有面積─38.09平方メートル〜107.27平方メートル
 管理形態─区分所有者全員で管理組合結成後、野村不動産パートナーズに委託予定
 施工─長谷工コーポレーション

 第1期販売─2021年3月中旬
 第2期販売─2021年5月上旬(予定)


 「プラウド瑞江」の完成イメージパース(画像は全て野村不動産の提供)

 

「見せる防災」とは何か

 野村不動産が、「プラウド瑞江」に新たに導入したコンセプト、『見せる防災・しまう防災』とは、どんなものなのでしょうか。それを分かりやすく説明する写真2点を、以下に示しました。


 これは、『見せる防災』の参考写真です。


 これは『見せる防災』のイメージパースです。

 このように、防災備品を「ラウンジの一角」や「共用部のメールコーナー」など、入居者が普段から目に入れやすい場所にディスプレイしておくのです。

 それによって、「入居者の防災に対する意識が向上」し、かつ「各住戸に必要な防災備品を考えてもらうきっかけになる」ことを期待しているのです。

 

『しまう防災』とは何か

 『見せる防災』の次は、『しまう防災』です。
 災害が発生した際には、「マンションの災害対策本部」を、マンション共用部のラウンジ、あるいはエントランスホールなどに設置することが想定されます。 
 したがって、その「災害対策本部」の中に、防災備品の一部をしまっておくことで、災害対策本部の立ち上げや、災害時の初期活動をスムーズに行うことが可能になります。
 導入第1号となるプラウド瑞江では、何と“ソファの座面に収納できる家具”を開発しました。


 これは「災害対策本部」になる予定箇所の「イメージパース」です。


 これは、「しまう防災の参考写真」です。実は、「災害対策本部」に設置されたソファーの内部に、この写真に見るように、防災備品をしまっているのです。「ユニーク」かつ「面白い」取り組みですね。

 

「地域との共助を目指した防災」に関する主な取り組み

 近年、野村不動産では、マンションそのものの防災対応力の向上とともに、大規模物件を中心に、公助である自治体との連携や地域との繋がりを強化しています。例えば、こんな具合です。


 ①災害時帰宅困難者一時受入場所の設定
  (一時休憩、水、トイレ、情報提供等)

 ②マンションの敷地内に地域防災倉庫を設置

 ③防災井戸
  (災害の発生に伴い水道の供給が停止した際、近隣住民の利用が可能 )

 ④マンホールトイレ
  (災害時に上下水道の供給が停止した際、近隣住民の利用が可能)

 ⑤かまどスツール
  (ベンチ形式。災害時にガスの供給が停止した際、近隣住民の利用が可能)

 

野村不動産が災害時に地域連携を行うマンションの一例

  プラウドタワー川口(埼玉県)
  プラウドシティ日吉(神奈川県)
  プラウドタワー東池袋(東京都)
  プラウドタワー 木場公園(東京都)
  プラウドタワー名古屋栄(愛知県)
  プラウドタワー立川(東京都)
  プラウドシティ浦和 (埼玉県)

 野村不動産は、まず公助・共助・自助の観点から、マンションが果たすべき役割を再整理。

 その上で、地域に向けた「地域の防災拠点」としての貢献、および入居者に向けた安心して「在宅避難」ができる設備の充実など、双方向に注力。

 これら一連の取組みを「住まいの防災」と総称しているのです。

 

細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。