細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第52号]理想の在宅ワークが叶う「単身世帯向け分譲マンション」とは?

2021年06月01日

新型コロナウィルスとともに普及する「在宅ワークスタイル」

 新型コロナウィルスの蔓延とともに、勤務先に出勤しないまま自宅で仕事をする、「在宅ワークスタイル」が普及しています。

 2021年4月28日、マンションデベロッパーの「日鉄興和不動産」と、オフィス家具メーカーの「オカムラ」が、理想の在宅ワークを叶えるための、「ワークホームデザインパック」を共同開発したと発表しました。

 この「ワークホームデザインパック」はまず、6月中旬に販売を開始する、単身世帯向け分譲マンション『リビオレゾン横濱大通り公園』に導入されることになりました。

2021年4月28日付けニュースリリースのURL
<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000191.000001379.html>


(リビオレゾン横濱大通り公園の完成予想図)
 画像は全てprtimesの提供

 

「在宅ワークの実態調査」──その①〜⑤「在宅ワークに対する感想」

 今回の発表に先立つ2021年3月9日、「日鉄興和不動産」と「オカムラ」の両社は、「在宅ワークの実態を調査──シングルライフの新しい提案に向けて」と題するニュースリリースを発表しています。

 その要点を、①〜⑤「在宅ワークに対する感想」、⑥〜⑫「在宅ワーク空間の現状」の2グループに分けて、以下にまとめました。

 ①以前の生活と比較して、約65%が不便さを感じている
 2020年3月末と比較して、「自分自身の生活に不便さを感じているか」を聞いたところ、「大変不便」14.3%、「少し不便」51.3%となり、3人中2人という割合で不便さを感じていることが分かりました。具体的には、「旅行ができない」、「人に会えない」、「外食ができない」などの声が聞かれました。

 ②在宅ワークは「増加」もしくは「今後増加予定」
 2020年3月末と比較した在宅ワークの頻度を聞いたところ、「在宅ワークの予定は今後無し」と答えた人は 41.6%でした。

 その一方、「在宅ワークが増えた」「今後増加していく予定」と答えた人が48.9%でした。 すなわち、在宅ワークは、増加する傾向にあります。

 ③在宅ワークの日常生活における良い点は「時間の自由さ」
 在宅ワークとなって良い点を聞いてみると、「通勤するための時間が不要なこと」が69.1%、「移動時間が無くなったこと」が64.6%、「比較的時間が自由なこと」が56.6%でした。このように、「時間に関すること」が上位を占めました。

 ④在宅ワークの良い点は「個人作業を進めやすいこと」
 「作業別に在宅ワークを行った際に、効率が上がるかどうか」を尋ねたところ、「個人で集中して行う作業」では 72.1%の人が「在宅ワークで行った方がはかどる」と答えています。これは、オフィスにいるときよりも、邪魔される要素が少ないためだと考えられます。

 ⑤在宅ワークの日常生活における課題は「運動不足」
 「在宅ワークの日常生活の課題」は、「運動不足になる」58.1%、「光熱費が上がる」48.0%、「仕事のオン・オフが切り替えづらい」47.4%でした。

 

 

「在宅ワークの実態調査」──その⑥〜⑫「在宅ワーク空間の現状」

 ⑥一番仕事をしたい場所は「自分のオフィス」が5割以上
 在宅ワーカーにニューノーマル、すなわち「コロナとともに訪れた新時代」に、一番仕事をしたい場所を聞いたところ、次のような回答になりました。

 自分のオフィス50.4%
 場所にとらわれず働きたい場所で17.0%
 自宅・実家16.1%
 社内の他拠点12.2%
 会社が契約したシェアオフィス3.0%
 喫茶店や図書館など0.4%

 このように、「自分のオフィス」と答えた人が半数を占めました。これは、他の選択肢を大きく引き離して、ダントツのトップになっています。

 ⑦オフィスが快適な理由は「空間的な余裕」
  在宅ワーカーにオフィスが快適だと感じる要因について聞いたところ、「空間的な余裕があり、リラックスできる」という回答が76.1%と、圧倒的な割合になりました。

 ⑧希望する専有面積と間取り(部屋数)は半数以上が変化無し
  購入したいマンションについて、2020年3月末と比較した希望面積と間取り(部屋数)の変化を聞きました。すると、「広い面積を希望せず、変化なし」が 60.9%、「従前より間数を増やす希望はせず、変化なし」が56.6%でした。すなわち、半数以上の人が、住宅選びの価値観に大きな変化は起きていません。

 ⑨在宅ワークの現状は「とりあえずの対応」
 在宅ワークをしている場所について具体的に聞いたところ、現状は、「ダイニングテーブルやローテーブルなど、もともと部屋にあるもので代用している人」が目立ちました。これは、突然の在宅ワークに対する「一時的な対応がそのまま続いている」、あるいは「我慢している」ことになります。

 ⑩在宅ワークで気付いた「オフィス家具・空間の優秀さ」「気分転換は大事」
 在宅ワークを続けている中で、気付いた点として挙がったのは、以下の2 点です。「オフィス家具・空間は機能性が高いこと」「気分転換が大切なこと」。

 ⑪在宅ワークの対応品購入について
 在宅ワーク用に購入した商品を聞いたところ、椅子 (ローテーブル派は座椅子)が多い結果となりました。ただし、購入後の感想を聞いてみると「思ったほど効果がない」「見た目は良くても長時間はつらい」「価格を優先すると機能性がない」などの声が聞かれました。すなわち、課題解決に向けて行動したものの、満足度は高くないということです。

 ⑫在宅ワークに対して求めること
 在宅ワークをする場所は1か所か複数箇所か聞いたところ、「1か所にまとめたい人」と「部屋内でも気分や目的別で使い分けたい人」が半分ずつに分かれました。
 また在宅ワークを行う空間に関しては「個室を求める人」と「オープンな空間を求める人」が半分ずつ、という結果になりました。
 このように、場所や空間については、ニーズが分かれるようです。

 2021年3月9日付けニュースリリースのURL
 URL<https://www.nskre.co.jp/company/news/2021/03/20210309.pdf>

 

単身世帯向け分譲マンション『リビオレゾン横濱大通り公園』

 「日鉄興和不動産」と「オカムラ」の両社は、3月9日付けのリリースで説明した、⑥一番仕事をしたい場所は「自分のオフィス」という希望に応えるために、さらに調査・研究を重ねました。

 そして、「日鉄興和不動産」は、2021年4月28日に新たなニュースリリースを発表しました。

 日鉄興和不動産×オカムラによる共同研究プロジェクト
 理想の在宅ワークを叶えるパッケージ型オプション
 「ワークホームデザインパック」を共同開発
 単身世帯向け分譲マンション『リビオレゾン横濱大通り公園』に導入

ずいぶん、長いタイトルですね。ニュースリリースの内容を要約しましょう。

◆単身者の在宅ワークによる課題を商品開発により解決
 在宅ワークにおける調査結果より、以下の考察を導き出しました──。

 在宅ワークにより、これまでのライフスタイルが変化を余儀なくされている。
 自宅にある家具で在宅ワーク環境を適応させているものの、課題解決には至っていない。
 単身の住まいだとスペースに限りがあり、オン・オフの切り替えが難しくジレンマがある。
 自宅内をより自分好みに演出するなど居心地の良さを追求している。
 限られたスペースの中でそれぞれの目的を達成できるバランスが重要。

◆設計には「ワークホームデザイン」を適用
 ワークホームデザインは、調査を基に見えてきた以下の課題を解決し、「自宅で仕事をする空間を個人のニーズに合わせてプランニングすること」をコンセプトとしています。

 1 仕事とプライベートのバランスは個人差があるため、様々なニーズを想定した幅広いプランが必要
 2 それぞれの在宅ワークに対する個人の価値観に合わせた居心地の良さを追求
 3 オンとオフの切り替えを行いやすくするために、個人の価値観に合わせた切り替えの仕組みが重要

 

ワークホームデザインパックの 4 つのプラン

 プラン1──スマートコンパクト
  自宅の居心地の良さを保つ在宅ワークスタイル。
  リラックスしたプライベートな空間を損なわないプラン。

 プラン2──マイワークベース
  仕事をきっちりこなせることが目的。
  自宅でもオフィスのような作業効率を実現できるプラン。

 プラン3──マルチワークブース
  在宅ワークと出勤が半々のディンクス。
  多目的スペースに、ワークスペースをジョイント。
  夫婦でシェアすることで、専用スペースの快適性とスペース効率を考えたプラン。

 プラン4 ──マイホームオフィス
  2人とも在宅ワークが中心となるディンクス。
  仕事専用のスペースとして作業に集中できる環境を追求。
  仕事とプライベートの明確に分離した、メリハリのある暮らしを求めたプラン。

  『リビオレゾン横濱大通り公園』物件概要 
  所在地─神奈川県横浜市中区弥生町 3-29-5 他(地番)  
  交通─横浜市営地下鉄ブルーライン「阪東橋」駅徒歩 4 分
  総戸数─61戸(うち店舗1戸)
  構造・規模─鉄筋コンクリート造・地上11階建
  敷地面積─539.71平方メートル
  専有面積─32.38〜64.45平方メートル  
  間取り─1LDK・2LDK
  竣工時期─2022年3月下旬予定
  入居時期─2022年5月下旬予定
  販売時期─2021年6月下旬予定
  売主─日鉄興和不動産
  設計─嘉環境設計
  施工─風越建設

  URL<https://nskre.jp/yokohamaodorikoen>

 

細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。