●●●おおむね月に1回のペースで調査
皆さんは、「新型コロナウイルス・日米定点・生活者意識調査」と題する、「調査レポート」に目を通したことがありますか。
これは広告代理店として日本では最大手、世界では第5位に位置する「電通」が、昨2020年5月14日から連続的に発行しているレポート(ニュースリリース)です。
調査は日本では「電通」、米国では「電通インターナショナル」が担当。 おおむね月に1回のペースで調査し続けてきました。それゆえに、「コロナ禍に直面した2020年〜2021年」について、日米両国の事情を調べる時にとても便利です。
●●●「コロナ禍の生活者心理」を5段階に分類
この調査では、「コロナ禍の生活者心理」を、次の5段階に分類しています。
◇第1ステージ「混乱・動揺」
感染が拡がりを見せる中で、今後どのように自身の生活に影響が出るか分からず、
対策を行うことに混乱や不安、怒りを感じる。
◇第2ステージ「変化への対応」
感染拡大に伴い、日々の生活を変えていくようになった。
動揺や不安を感じる瞬間もあるが、今は自分にできることに集中している。
◇第3ステージ「順応・適応期」
事態が進展するに従い、徐々に新しい生活スタイル(ニューノーマル)に慣れ、
適応できるようになってきた。
◇第4ステージ「収束の兆し」
国や地域、身近なつながりの中で、事態が収束に向かい始めていると感じる。
少しずつ、元の日常に戻り始めていると感じる。
◇第5ステージ「収束後の生活へ」
事態が収束し、感染に対する恐怖もなくなり、
元の日常生活(仕事や普段の生活)を取り戻した。
●●●第1回調査(2020年4月下旬)の概要──日本
第1回調査では次のような結果でした。
第1ステージ「混乱・動揺」──26%
第2ステージ「変化への対応」──55%
第3ステージ「順応・適応期」──16%
第4ステージ「収束の兆し」──1%
第5ステージ「収束後の生活へ」──2%
コロナ禍に遭遇して、26%が「混乱・動揺」しています。その一方では、「変化への対応」に注力し、「順応・適応」しようとする人たちも現れています。第2〜第5ステージを合計すると74%を占めています。
●●●第12回調査(2021年3月下旬)の概要──日本
それから11ヵ月後の第12回調査では次のような結果でした。
第1ステージ「混乱・動揺」──14%
第2ステージ「変化への対応」──37%
第3ステージ「順応・適応期」──37%
第4ステージ「収束の兆し」──6%
第5ステージ「収束後の生活へ」──6%
コロナ禍に遭遇して、14%がまだ「混乱・動揺」しています。その一方では、第2〜第5ステージを合計すると、実に86%に達しています。
私が色々調べた範囲では、新築マンションを販売する現場も、ほぼ似たような経過をたどっています。
●●●心配材料は7月23日に開催予定の東京オリンピック
そこまではいいのですが、心配材料は7月23日に開催予定の東京オリンピックです。
この時、選手村として利用されるのは、新築分譲マンション「HARUMI FLAG(総戸数4145戸)」です。
◇「SEA VILLAGE」686戸
◇「SUN VILLAGE」1822戸
◇「PARK VILLAGE」1637戸
NHKは次のようなニュースを流していました。
──東京オリンピックの新型コロナ対策を話し合うため、組織委員会が設置した専門家会議を開催。実際に選手村を視察したメンバーから、「感染者が出たときの待機スペース確保」や、「食堂での混雑対策などが課題」といった指摘が出された──。
オリンピック中に、選手村から感染者が出なければいいのですが、問題は感染者が出た場合です。
●●●地鎮祭、上棟祭、新室祭の意味
新たに家を建てる場合には、次のような神事を行います。
◇地鎮祭(ジチンサイ)
建物の建設にあたり、その土地を領有する神々に祈り、土地の平安堅固を授けていただき、保障してもらい、また工事の安全無事をお願いする。
◇上棟祭(ジョウトウサイ)
新築の棟木をあげるときに家屋の守護神、工匠の神々を祀り、今後永く新屋に禍事なく、幸せのある家になるよう、また工事の安全無事をお祈りする。
◇新室祭(ニイムロノマツリ)または竣工式(シュンコウシキ)
地鎮祭から始まった工事が無事終了し家屋が完成した後に、無事に工事が終わった感謝の心を神々に報告。「この新しい家屋に住む人が幸福に暮らすことはもとより、出入りする人々まで災いなくお守り下さい」とお願いする。
オリンピック中に感染者が出た場合には、地鎮祭や上棟祭や新室祭の甲斐もなく、災いに遭ったことになるのです。
日本には縁起を担ぐ人は大勢います。そうなると、新築分譲マンション「HARUMI FLAG(総戸数4145戸)」の売れ行きは・・・。
※参照:電通、新型コロナウイルス日米定点生活者意識調査第12回目を実施
細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。
建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。
著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。