細野透の「赤信号・黄信号・青信号」不定期

[第55号]「大雨特別警報」が気になった2021年8月を振り返る

2021年09月01日

細野 透 ( ほその とおる )

気象庁が2013年に「特別警報」制度を導入

 日本では毎年のように、大雨や台風などによる洪水、土砂災害、高潮などが発生し、多くの被害が出ています。

 このため気象庁は2013年8月に、「特別警報」という制度を導入しました。

 「特別警報」とは、警報の発表基準をはるかに超える大雨や、大津波等が予想され、重大な災害の起こる危険性が著しく高まっている場合に発表。「最大級の警戒」を呼びかける制度です。

 特別警報の対象としては、「1万8000人以上の死者・行方不明者を出した東日本大震災における大津波」や、「我が国の観測史上最高の潮位を記録し、5000人以上の死者・行方不明者を出した伊勢湾台風の高潮」、「東日本の広い範囲で河川の氾濫等による甚大な被害をもたらし、100人以上の死者・行方不明者を出した、2019年・東日本台風による大雨」等が該当します。

 この特別警報が発表された場合、「対象地域は数十年に一度の、これまでに経験したことのないような、重大な危険が差し迫った異常な状況」にあります。この数十年間災害の経験が無い地域でも、重大な災害の起こるおそれが著しく高まっているので、決して油断してはいけません。

 

2021年4月に災害対策基本法を改正

 特に「2018年7月豪雨」では、西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生し、死者数が200人を超えてしまいました。また、全国で上水道や通信といったライフラインに被害が及んだほか、交通障害が広域的に発生。そのため「平成最悪の水害」と呼ばれました。

 これを契機に、政府は2021年4月に「災害対策基本法」を改正。5月から「新たな避難情報」を用いて、避難情報を伝えることとなりました。   

 ① 警戒レベル1
   災害への心構えを高める。
 ② 警戒レベル2
   ハザードマップなどで避難行動を確認。
 ③ 警戒レベル3
   危険な場所から高齢者等は避難。
 ④ 警戒レベル4
   対象地域住民のうち危険な場所にいる人は全員避難。
 ⑤ 警戒レベル5
   命の危険。直ちに安全確保。

 
図は内閣府防災ホームページ「避難情報に関するガイドラインの改定」から引用)

 

2021年7月に「熱海市の伊豆山地区」で大規模な土砂災害

 2021年4月に、災害対策基本法が改正されてから3ヵ月経った、2021年7月3日の午前10時半ごろ、静岡県熱海市の伊豆山地区で大規模な土砂災害が発生しました。

 当時は、東海地方から関東地方南部を中心に記録的な大雨が降っていて、伊豆山地区では48時間に321ミリもの降水量が記録されたそうです。

 

2021年8月の「大雨特別警報」が招いた不安な日々 

 この熱海の土砂災害が、前触れだったのでしょうか。2021年の8月は、長く続いた大雨の影響で、全国各地で街全体が冠水したり、大規模な土石流が発生するなどの危機的な状態に陥りました。

 8月13日〜15日の状態について、NHKは次のように報道しました(記事のタイトル「時系列まとめ---大雨影響、各地の被害状況は)。

 ■九州北部(佐賀県、福岡県、長崎県---その1)
  JR小倉駅のホーム、天井の板の一部が落下(13日21時)
  佐賀県武雄市の国道34号線で、車数台が動けない状態に(14日3時) 
  福岡県久留米市で床上浸水、住宅内の映像も(14日4時)
  鳥栖市の冠水した道路で、動けなくなった車から救助 (14日5時前)
  西日本鉄道・天神大牟田線、全線で終日運休(14日5時50分)
  佐賀県武雄市・六角川の左岸付近で「氾濫発生情報」(14日7時)
  武雄市、住宅浸水や道路冠水通報多数(14日8時)

 ■九州北部(佐賀県、福岡県、長崎県---その2)
  福岡県久留米市内の4河川で内水氾濫、救助要請約40件(14日9時)
  佐賀県武雄市の県道24号線、約数100メートルが冠水(14日9時30分)
  佐賀県JR大町駅、腰の高さまで冠水、消防が救助活動(14日9時〜10時)
  佐賀県六角川、武雄市橘町付近で氾濫が発生(14日10時10分)
  長崎県波佐見町、住宅裏手の山の一部が崩れ土砂流出(14日10時15分)
  佐賀県武雄市の浸水被害地域に自衛隊を派遣(14日11時)
  佐賀県大町町、病院に水が押し寄せ1メートルほど浸水(14日17時)
  佐賀県神埼市、住宅など3棟巻き込まれる(14日17時半ごろ)

 ■京都市
  清水寺近くの茶わん坂、崩れた土砂が道路塞ぐ(14日10時)

 ■中部地方
  岐阜県美濃加茂市、 加茂川の水が堤防を越える(14日15時)
  長野・上松町、山の斜面崩れ道路塞ぐ(14日17時30分)

 ■山陰地方・山陽地方
  島根・江津市桜江町田津地区、「江の川」氾濫、(14日16時40分)
  特別養護老人ホームが浸水、広島市安佐北区(14日17時)
  山口宇部道路で、のり面20メートル崩れる(14日18時)
  広島市西区、複数の住宅に土砂流れ込む(14日19時過ぎ)

 

細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。