●●●「パークシティLaLa横浜」の数奇な運命
「パークシティLaLa横浜」というマンションを、ご存じでしょうか。これは、横浜市都筑区に2007年11月に完成した、705戸4棟からなる分譲マンションです。事業者は三井不動産と明豊エンタープライズ、設計・施工は三井住友建設、販売は三井不動産レジデンシャルでした。
しかし、2015年10月になって、建物が傾いてしまいました。その原因は分譲マンションを支える複数の杭が、地中の強固な地盤に届いていないことでした。そのため、いわば社会を騒がす大問題に発展。最終的には事業者が責任をとって、全面的に建て直すことになりました。
新しい「パークシティLaLa横浜」は、2021年2月25日に竣工。2022年3月下旬には入居できる見通しです。売主は三井不動産レジデンシャル、施工は三井住友建設です。
ここから先は、2007年11月に完成したマンションを「旧パークシティLaLa横浜」、2021年2月に完成したマンションを「新パークシティLaLa横浜」と呼ぶことにしましょう。
「新パークシティLaLa横浜」の総戸数を見ると、705戸(※販売対象住戸247戸、非分譲住戸458戸)と記されています。
これは、「旧パークシティLaLa横浜」に住んでいた705戸の住民のうち、「458戸の住民が新マンションに戻ることにした」のに対して、「247戸の住民が新マンションに戻らないことにした」ために、その247戸を三井不動産レジデンシャルが販売することを意味しています。
2015年10月の問題発覚から、2021年2月の新マンション完成までに5年4カ月の時間が過ぎました。その歳月が住民の皆さんの判断を分ける原因になったと思われます。
●●●私が執筆した多数の記事
さて、「旧パークシティLaLa横浜」の建物が傾いてしまったとき、私は多数の記事を執筆しました。
マンションを傾斜させた旭化成建材の罪深い行為 2015.10.16
傾いたマンションで暮らす友人に緊急アドバイス 2015.10.19
三井不動産はなぜウソをついたのか──傾いたマンション問題の波紋 2015.10.26
国交省の傾斜マンション有識者会議メンバーに要注意! 2015.10.27
杭工事が怪しい建物は3千件、それとも6千件? 2015.10.29
国交省「悪い検討会」が傾斜マンションの管理組合いじめ 2015.11.02
マンションの施工不良は今後も増える─専門誌が不吉な予言 2015.11.10
ゼネコンは「大臣認定杭」の弱点を知っていた──データ偽装の闇深し 2015.11.16
三井住友建設と日立ハイテクの「工事丸投げ」疑惑──傾斜マンションに波紋 2015.11.26
傾斜マンションで講演会を開催、窮状を実感し「国交省の能天気」に呆れ 2015.12.07
杭問題で三井住友建設に不利な新証拠! 2016.01.13
傾斜マンションを全棟建替に追い込む「4つの不安」 2016.01.15
三井不動産が傾斜マンションで「脱法行為」、確認機関2社が便宜供与の疑い 2016.01.26
傾斜マンションの杭試験で「替え玉」を使用、姉歯事件と同一の構図 2016.02.22
傾斜マンション全棟建替の「各社負担金」を試算、2社が100億円超か 2016.03.02
三井不動産と住友不動産、「傾斜マンション全棟建替」に潜む7つの共通点 2016.03.14
私はなぜ、このように多数の記事を執筆したのでしょうか。1つには、私は大学の修士課程と博士課程で建築構造を専攻したゆえに、「大きな地震に遭遇した訳でもないのに、一流の設計者・施工者が担当し、一流のデベロッパーが分譲した建物が傾いたこと」が許せなかったのだと思います。
もう1つの理由は、学生時代に親しかった友人が、「旧パークシティLaLa横浜」に住んでいたことです。
したがって、多数の記事を執筆するだけではなく、「パークシティLaLa横浜」の管理組合総会に出席して、「管理組合は今後どうすれば良いのか」をテーマに話をしたこともあります。
●●●「住まいサーフィン」の嬉しい記事
このように、「旧パークシティLaLa横浜」とは関わりの深い私は、この「住まいサーフィン」で嬉しい記事を見かけました。そのタイトルは、「パークシティLaLa横浜、マンション建替え後の資産価値とは」。
◆ゆとりある住戸
建て替えマンションならではの特徴の1つ目が、住戸面積が78㎡台中心である点です。新築マンション市場価格高騰の影響で3LDK・60㎡台がスタンダードとなりつつある現在。東京近郊で、80㎡前後の部屋が5000万円台で買えるというオトク感のある物件です。
◆2007年当時の設備仕様
建て替えマンションならではの特徴の2つ目が、2007年当時の設備仕様をそのまま採用している点です。二重床・二重天井・アウトフレーム構造と、居室内を広く使える間取りとなっています。また、玄関前にアルコーブがついているマンションも少なくなった今ですが、新パークシティLaLa横浜には玄関ポーチがついています。
建設費の高騰している現在、都心も郊外も建築費は同じ額がかかるので、販売価格を押さえたい郊外エリアの物件では設備仕様を削る傾向が顕著になっています。それゆえに、検討中物件を見比べて確認することで、専有部のゆとりを感じられるでしょう。
◆東海道新幹線の停車駅より2駅
JR横浜線「鴨居駅」は、新幹線停車駅である「新横浜駅」より2駅の場所に位置します。リモートワークが主でたまに都心に出社するという方におすすめの通勤方法です。
◆大型商業施設隣接
新パークシティLaLa横浜はその名の通り、ららぽーと横浜が隣接しています。都心部のマンションではありませんが、いつでも気軽にららぽーとを利用できるので、日々の生活や休日の過ごし方に困ることがありません。
◆マンション購入時は大手売主からの購入を
「旧パークシティLaLa横浜」で施工不良が発覚したとき、慰謝料、一時転居の費用や建て替えなど全ての補償を売主である三井不動産が行いました。
もちろん前提として何も起こらないことが一番でありますが、中小規模の売主・施工会社では補償は難しく、泣き寝入りすることになっていた可能性もありました。
それゆえに、住まいサーフィンでは万が一のときを考えて、しっかりと責任を取ってくれる大手売主のマンションを選ぶことをおすすめしています。
【細野透の感想】
以上のように、「住まいサーフィン」は「建て替えられたパークシティLaLa横浜の資産価値」を、きちんと評価してくれています。「LaLa横浜の管理組合」の皆さん、良かったですね。
細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。
建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。
著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。