●●●マンションの「良好な居住環境の確保」が目的
2020年6月、マンションにおける良好な居住環境の確保を図ることを目的に、国土交通省は「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」を改正しました。
その結果、2022年4月から、地方公共団体に「マンション管理計画認定制度」が創設されることになりました。
「マンション管理計画認定制度」とは、マンションの管理計画が一定の基準を満たしている場合、「適切な管理計画を持つマンション」として、認定を受けることができる制度です。
(注) 添付した画像はすべて、国土交通省の2021年9月28日付けプレス・リリース、【「マンション管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」の策定について─新たに開始されるマンション管理計画認定制度の認定基準などを定めます─】に添付された資料から引用。
◆ポイント1「国家資格試験による、マンション管理士の創設」
◆ポイント2「マンション管理業者は登録制、管理業務主任者設置も義務づけ」
●●●「マンション管理計画認定制度」に期待される効果
国土交通省は「マンション管理計画認定制度」の創設によって、以下に示すような効果を期待することができると考えています。
◆区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持向上しやすくなる。
◆適正に管理されたマンションとして、市場において評価される。
◆適正に管理されたマンションが存在することで、立地している地域価値の維持向上に繋がる。
◆住宅金融支援機構の「フラット35」や、「マンション共用部分リフォーム融資」の金利が引き下げられる可能性が強い。
これを分かりやすく表現すると、「きちんと管理されているマンションとして評判が良くなる」ということです。なお、認定を受けることができるのは、自治体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している地域に建っているマンションです。
●●●管理計画の認定の基準「その1——管理組合に関する事項」
◆A管理組合の運営
①管理者等が定められていること。
②監事が選任されていること。
③集会が年1回以上開催されていること。
◆B管理規約
④管理規約が作成されていること。
⑤マンションの適切な管理のため、管理規約において「災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部の立ち入り」、「修繕等の履歴情報の管理等」について、定められていること。
⑥マンションの管理状況に係る情報取得の円滑化のため、管理規約において、「管理組合の財務・ 管理に関する情報の書面の交付(または電磁的方法による提供)」について定められていること。
◆C管理組合の経理
⑦管理費及び修繕積立金等について、明確に区分して経理が行われていること。
⑧修繕積立金会計から、他の会計への充当がされていないこと。
⑨直前の事業年度の終了の日時点における、「修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額」が、全体の一割以内であること。
●●●「管理計画の認定の基準「その2——長期修繕計画の作成など」
◆D長期修繕計画の作成及び見直し等
①長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠し作成され、「長期修繕計画の内容」、及び「これに基づき算定された修繕積立金額」について、集会にて決議されていること。
②長期修繕計画の「作成または見直し」が、7年以内に行われていること。
③長期修繕計画の実効性を確保するため、「計画期間が30年以上」で、かつ「残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれる」ように設定されていること。
④長期修繕計画において、「将来の一時的な修繕積立金の徴収」を予定していないこと。
⑤長期修繕計画の「計画期間全体での修繕積立金の総額」から、「算定された修繕積立金の平均額が」著しく低額でないこと。
⑥長期修繕計画の「計画期間の最終年度」において、「借入金の残高のない長期修繕計画」となっていること。
◆Eその他
①管理組合が「マンションの区分所有者等への平常時における連絡」に加え、「災害等の緊急時に迅速な対応を」行うため、『組合員名簿』、『居住者名簿』を備えているとともに、1年に1回以上は「内容の確認」を行っていること。
②都道府県等の「マンション管理適正化指針」に照らして、適切なものであること。
●●●東京都および横浜市の「マンション管理計画認定制度」に関する情報
「マンション管理計画認定制度」の対象になる物件が多いのは、当然ながら東京都になります。それとは別に、「親切で分かりやすいマンション行政」で評価が高いのは横浜市です。それゆえに、2つの都市の「マンション管理計画認定制度」のウェブサイトのURLを以下に示しておきました。
東京都「マンション管理計画認定制度」
<https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/kanri/02kanrikeikaku-seido.html>
横浜市「マンション管理計画認定制度」
<https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/jutaku/sien/manshon/kanrikeikakunintei.html>
細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。
建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。
著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。