細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第65号]野村不動産が「プラウド全物件」で『販売手法のDX化』を加速

2022年07月01日

コロナ禍で生まれた「オンライン接客」という方法

 野村不動産は2022年6月に、「かなり長いタイトルを付けたプレスリリース」を公表しました。

 ◆新築分譲マンションシリーズ「プラウド」にて、「販売手法のDX化」を加速
  プラウド全物件で販売資料のデジタル化・クラウドプラットフォーム対応
  コロナ禍で進んだ「オンライン接客」における利便性を、さらに向上

 長いタイトルの後に、以下のような文章が続いています。

 ◆野村不動産は、新型コロナウイルス感染症の拡大による外出制限等から、マンションギャラリーへの来場等が気軽にできない状況が続いてきた中で、 お客様が安心して分譲住宅を検討できる仕組みとして、オンラインでの接客等、販売手法のDX化を積極的に強化してまいりました。

 ◆このたび、「マンションギャラリー来場時」および「オンライン接客時」において、よりお客様の利便性を向上させるため、全国の新築分譲マンションシリーズ「プラウド」全物件で、3Dコミュニケーションプラットフォーム「ROOV (ルーブ)」を導入。「プレゼンテーションツール・販売資料のデジタル化」及び「クラウドプラットフォーム対応」を行います。

 ◆これにより、お客様は「オンライン接客利用時」および「マンションギャラリー来場時」いずれの場合でも、場所を問わずパソコン、 スマートフォンから物件に係るパンフレット・資料を閲覧できるようになり、スムーズに住まいの比較・検討を行っていただけるようになります。


(画像はすべて、「野村不動産のプレスリリース」から引用)

 

ビジネス用語として定着しつつある「販売手法のDX化」

 ところで、皆さんは、「販売手法のDX化」という言葉を耳にしたことがありましたか?

 DXとは、「Digital Transformation」の略語です。そして「Transformation(トランスフォーメーション)」は、「変容」という意味を持っています。

 DXに関する厳密な定義があるわけではありませんが、経済産業省では、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」において、以下のように解釈しています。

 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。

 このように、DXはビジネス用語として定着しつつあります。データやデジタル技術によって、製品やサービス、ビジネスモデルを「変革」してこそDXと言える点がポイントです。

 

「販売資料デジタル化」&「クラウドプラットフォーム対応」による客側のメリット

 3Dコミュニケーションプラットフォーム「ROOV(ルーブ)」を導入した、販売資料のデジタル化およびクラウドプラットフォーム対応がもたらす、客側のメリットは以下の通りです。

 メリット①
 ◆オンラインでも、「マンションギャラリー来場時同様」の情報収集・検討が可能。客側は、パソコンやスマートフォンを介したオンライン接客利用時でも、マンションギャラリーへの来場時とすべて同一の資料を確認できるので、情報をスムーズに収集することができる。

 メリット②
 ◆資料はいつでも手元で確認できるので、「家族との情報共有」も簡単。これまでマンションギャラリー来場時に「紙のパンフレットで渡していた資料」をデジタル化し、モニターやタブレットでの案内に統一された。

 メリット③
 ◆来場後は、それらの資料を閲覧可能なURLを発行するので、客側は所有する「スマートフォン、PC等」でいつでも資料の確認・検討が可能。データはクラウド上に保存しているため、客側はデータ容量を気にしないで、検討することができる。

 

3Dコミュニケーションプラットフォーム「ROOV(ルーブ)」のサービス概要

 「ROOV」は、アプリやソフトウエアをダウンロードすることなく、手元のスマートフォンやパソコンを利用したインターネットブラウザです。このため 「いつでも」「どこでも」「簡単に」、3DCGの空間を自由に動き回ることが可能です。

 これを換言すると、様々なシミュレーションで住み方のイメージを確認できる「クラウド型VR内覧システム」を基軸とした、「住宅3D コミュニケーション」のプラットフォームです。

 物件が竣工する前から販売が開始される分譲マンション特有の商習慣から、「室内空間のイメージが難しいために、販売員と客の認識齟齬が発生したり」、「モデルルームに行かなければ物件検討を進めることができない」、といった「分譲マンション販売時の課題」を解消すべく、2019年4月にサービスの提供を開始。

 単なるプレゼンテーションサービスではなく、分譲マンション販売時の「コミュニケーションDX化サービス」として評価されて、提供開始約3年で80社、350プロジェクトを超える販売現場で利用され、分譲マンション販売業界においてトップの採用実績となっています。

 

コロナ禍における野村不動産のDX推進について

 野村不動産は新型コロナウイルス感染症の拡大による外出制限等から、マンションギャラリーへの来場等が気軽にできない状況が続いてきた中で、「顧客が安心して分譲住宅を検討できる仕組みの構築にいち早く取り組んできた」そうです。

 そして、2020年春には、物件ごとにオンラインでの接客をスタート。次いで2021年9月には、首都圏で展開する「プラウド」全物件の情報をまとめて紹介できる「プラウドオンラインサロン」も新たに開始しました。

 それによって、これまで新築分譲住宅の購入を検討する際には、まずは「モデルルームやモデルハウスへの来場」が一般的だった流れを、変えることが可能になったそうです。

 その結果、現時点では、オンライン接客・オンラインサロンを合わせて、「月間約1000組」もの客に利用されています。

 

 

細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。