細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第69号]主要メディアが次々に伝えた「首都圏のマンション価格高騰」

2022年11月01日

東京新聞「TOKYO WEB」の2022年6月5日付け記事

 東京新聞の「TOKYO WEB」は、2022年6月5日6時に、「東京23区の新築マンション平均価格は8449万円、バブル期超え最高値」と報じました。そのエッセンスを要約しましょう。

 -----東京23区の新築分譲マンションの価格が高騰し続けている。

 「不動産経済研究所(新宿区)」によると、2021年度の戸当たり平均価格は、バブル期を超え、8449万円と過去最高を記録した。

 8000万円を超えるのは30年ぶり。慢性的な人手不足による建設費の上昇が主な要因だ。コストが下がる見通しはなく、価格高騰は続く可能性が高いとみられている。

 一方で、高価格にもかかわらず、住宅ローンの低金利の影響もあり、「売れ行きは好調」だ。コロナ禍で在宅時間が増え、充実した住環境を求める人や共働き世帯の増加も背景にあるようだ。

 バブル期と異なるのは購入目的だ。「バブル期は投資商品がほとんど」だったが、「現在は実際に住むケースが多い」という。タワーマンションなど高級物件の動きが活発なこともあり、数年住んだあと値動きを見て売却し、新たな物件に移る動きも広がっているという。

 供給側の環境も変化している。コストの高さから、駅に近いなど利便性の高い場所でないと利益が出ないといい、同研究所の担当者は「供給側も選択肢が狭くなっている」と話す。

 2021年度の供給戸数は、新型コロナウイルス感染拡大による前年度の落ち込みからの反動で、18.3%増の1万3169戸となった。

 ただ、近年、用地取得でホテル業界などとの競争も激しいこともあり、大きく増えることはなさそうだ。

 

NHKの「首都圏 NEWS WEB」2022年9月21日

 NHKの「首都圏 NEWS WEB」は、2022年9月21日に、「首都圏のマンション価格、先月は2か月連続下落も高水準続く」と報じています。そのエッセンスを要約します。

 先月、首都圏で発売された新築マンションの平均価格は6100万円余りと、去年の同じ月を18%下回り、2か月連続で下落しました。ただ、価格は引き続き高い水準で、調査会社は資材の高騰などを背景に高値の傾向が続くとみています。

 調査会社「不動産経済研究所」によりますと、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県で先月発売された新築マンションの1戸あたりの平均価格は、6102万円で去年の同じ月を1350万円、率にして18.1%下回って、2か月連続で下落しました。

 都内を中心にマンションの供給が多かった去年と比べて、新たに発売された高額なタワーマンションなどが少なかったことなどが主な要因で、東京23区は7905万円と、去年の同じ月より26.9%の大幅な下落だったほか、埼玉県も4587万円と、6.2%下回りました。 

 一方、神奈川県が5561万円で14.4%、千葉県が4330万円で12.3%といずれも去年の同じ月を上回りました。 

 「資材価格の高騰」や「堅調な住宅需要」などを背景に価格は高い水準が続いていて、調査会社は「資材価格を含めた建築費の高騰で、先行きが不透明なことから依然として供給は少なくなっている。土地の価格が高いこともあり、今後も高値の傾向は続く」としています。

 

「日本経済新聞」の「紙面及びウェブサイト」2022年10月8日〜10月14日

 日本経済新聞社は2022年10月になって、「日本経済新聞の紙面」及び「日本経済新聞のウェブサイト」に、「マンション高騰」をテーマにした、一連の記事を掲載しました。

①10月8日 ◆ 庶民的な街、東京・十条に「億ション」
②10月10日 ◆ マンション高騰「東京にいられない」、始まった変調
③10月12日 ◆ マンション「買えるのは富裕層の特権か」 悩む中間層
④10月13日 ◆「次の土地がみつからない」 細るマンション開発適地
⑤10月14日 ◆「虎の子」住宅ローン争奪戦、「市場食い荒らされる」

 

「Amazon」で有用な「マンション書籍」を探す

 「マンション価格の高騰」という、ある意味では異常な事態に直面した時には、心を落ち着けるためにも、「何か良書に目を通す」のも一つの方法です。

 私は「Amazon」でアレコレ探した結果、「日経MOOK『マンション管理・修繕・建替え 徹底ガイド』2023年版 (日本経済新聞出版、1650円)」、に注目しました。

 早速、購入して目を通すと、実に優れた本でした。それ故に、目次を簡単に紹介しておきましょう。

  • ●巻頭特集 購入者目線で考える「マンションの価値」
  • ●Part1 マンションの建物、設備、管理の状態をチェックする
  • ●Part2 時代に合わせて変わる管理組合の運営方法
  • ●Part3 マンションに求められる防災対策、危機管理体制
  • ●Part4 築年数別に考える建物・設備の修繕ポイント
  • ●Part5 長期修繕計画の立て方、大規模修繕工事の準備の仕方
  • ●Part6 一歩先を行くマンション管理のPDCA

 私は、「この本は、現時点では、間違いなくマンション書のナンバーワン」、と確信しました。それと同時に、「マンションの管理組合に備えておくと、いつか必ず役に立つのではないか」、とも感じました。

 

細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。