田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第73号]資産価値の落ちない関西老舗ブランド「ジオ」

2018年05月09日

*会社は1ヶ月、ブランドは20年超

京都は土地柄、大規模マンションが少ない。「今、旬なマンション(※)」の京都エリアを見ても「100〜199戸」「200戸以上」以上はそれぞれ4物件・2物件しかランクに上がっていない。ところで「100戸未満」を見ると11物件中、4物件が同じ事業主である事に気づいた。「ジオ京都桂川」「ジオ京都御池油小路ザ・テラス」「ジオ桂シェノン」「ジオ御所南夷川富小路」。以上、すべて阪急阪神不動産が売主だ。さて、自社分譲マンションに「ジオ」ブランドを冠する阪急阪神不動産、どのような特徴があるの企業なのだろうか。

まず「阪急阪神不動産」という社名。今年2018年4月1日、阪急阪神ホールディングスグループの不動産事業再編に伴い阪急不動産株式会社から商号変更したばかりの新しいもの。聞きなれない人も多いだろう。しかし、社名は新しいが会社の歴史は古い。

「ジオ」の第1号物件は「ジオ緑地公園」(大阪府豊中市:1990 年竣工)。当時は阪急電鉄の分譲であったが事業再編を経てブランドとしては現在も存続しており、分譲マンションの「老舗ブランド」の一つだ。一つのブランド名を長期間使い続けている事例は、実はあまり多くない。

 

*「プラウド」「ブランズ」よりも歴史は長い

たとえば野村不動産がブランド名を「プラウド」に統一したのは2002年。「ステイツ」という響きに懐かしさを覚える人も多いだろう。東急不動産の「ブランズ」は2010年、東京建物の「ブリリア」は2003年。大京の「ライオンズ」(1号物件は1968年)にはかなわないが、バブル期からブランド名を変えていない大手デベロッパーは珍しい。

ちなみに、分譲主の知名度としては抜群と言える三菱地所、三井不動産、住友不動産もブランド名の知名度は企業の知名度よりも劣る。企業名が有名過ぎるのも理由だが、ブランド名にも知名度が劣る理由がある。

地所は「ザ・パークハウス」。共同事業でなければ必ずこの名称をつけるが名称が「パーク」「ハウス」ともに一般的な単語であり目立たない。また三井も同じく一般的な名詞である「パーク」が使用されている。しかも「パークホームズ」「パークコート」「パークシティ」「パークタワー」など複数ありわかりにくい。住友に至っては「シティハウス」「グランドヒルズ」「パークスクエア」等々マンションごとに様々なブランドを使っており統一感がない。

それに比べ阪急阪神不動産の「ジオ」ブランドは、「ジオ」「ジオタワー」「ジオグランド」と3路線あるがともに「ジオ」安定感が大きい。関西においては「阪急電車」「阪急百貨店」の知名度と相まってマンションブランドととして定着している。

 

*リセールバリューも高い老舗ブランド

「ジオ」はマンション名が有名なだけではなく資産価値が高いという結果も現れている。

少し以前の記事になるが東洋経済オンラインに「ブランドマンション独自ランキング、購入時より高く売れるのはここだ!(http://diamond.jp/articles/-/112330?page=3)」という記事があり、そこで「ジオ」は堂々の関西一位ブランドになっている。調査当時、平均中高騰落率がプラスとなるブランドは関西でわずかに3つ(首都圏はランキング内のブランド全てがプラス)で「ジオ」はその一つでありTOPに輝いている。

注目したい点はそれだけではない。平均中古騰落率だけでなく平均中古売出価格でもTOPであるということだ。これは「高い商品を販売し、高く維持され続けている」ということである。「率」よりも「価格」の方が価値がある。

ここ数年は首都圏にも進出、分譲戸数を伸ばしている「ジオ」。今はまだ知名度としては見劣りするが、関西で20年以上にわたり培われたノウハウが浸透すれば首都圏でも「リセールバリューの高いブランド」となる可能性は高い。

 

※参考リンク
「今、旬なマンション」30日間・京都・サイトリンク数・2018/05/05 01:15 更新
https://www.sumai-surfin.com/product/ranking/re_rank_season.php?m=1&t=1&a=28

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。