田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第80号]都心回帰で広がる都市部の居住エリア

2018年08月22日

【「すべて」で関西物件がランクイン】

「今、旬なマンション(※)」、このコラムを書く際、エリアを関西エリアに限定して閲覧することが多い。どうしてもサイトリンク数では首都圏のマンションの方が数が多くなり、エリアを「すべて」にすると、関西のマンションが見えてこないからだ。ところが今回(2018/8/23)、「すべて」で確認したところ、複数の関西エリアのマンションがトップ10入りしていた。以下の通りだ。

(100戸未満)
4位 グラン・リソシエ京都四条(5)
(100〜199戸)
9位 マストメゾン城東中央(2)
(200戸以上)
9位 シティタワー東梅田パークフロント(5)
(マンション名の後の数字はサイトリンク数)

この3つのマンションのなかでも、サイトリンク数の多い「グラン・リソシエ京都四条」「シティタワー東梅田パークフロント」には共通点がある。それは「最寄駅はマイナーだが、メジャー駅の徒歩圏」ということだ。


【最寄駅はマイナー、しかしメジャー駅徒歩圏】

「グラン・リソシエ京都四条」の最寄駅は阪急京都線「大宮」駅(徒歩6分)。通勤時間帯には快速急行や通勤特急が停車するが、昼間は準急しか停車しない。隣駅である「烏丸」駅がどの時間帯も特急が停車することを考えると、駅力は劣る。

「シティタワー東梅田パークフロント」の最寄駅は大阪地下鉄堺筋線「扇町」駅(徒歩4分)。堺筋線は大阪(梅田)へは直結しておらず、「扇町」駅から地下鉄で梅田に行くには隣接する「天神橋筋六丁目」駅か「南森町」駅で谷町線に乗り換える必要がある。堺筋線以外の地下鉄路線が走っていない「扇町」駅は、便利とは言えない。

このように、どちらのマンションの最寄り駅も都心の駅とすれば、交通利便性においては、正直微妙。駅名も、ある程度周辺に土地勘のある人なら知っていようが、広域では知名度もそれほど高くない。その辺の事情は、両マンションの物件名を見れば一目瞭然だ。どちらも最寄駅駅名がマンション名に入っていない。

しかし、両マンションとも複数路線複数駅の徒歩圏にある。「グラン・リソシエ京都四条」は京都市随一のビジネス街であり商業地を抱える阪急京都線「烏丸」駅徒歩圏内(7分)。

「シティタワー東梅田パークフロント」は阪急・地下鉄「梅田」駅へ徒歩13分、JR「大阪」駅までは徒歩15分。大阪ど真ん中まで歩いていける。

大阪(梅田)も京都(烏丸〜河原町)も、駅直近は土地価格が高騰し適正価格でのマンション供給は難しい状態。京都に関してはホテル用地の需要が大きくマンションデベロッパーは用地取得すら困難な状況だ。

 

【都心回帰で広がる中心市街地】

そこで注目されているのが、今回紹介したようなメジャー駅から少し離れたエリア。「グラン・リソシエ京都四条」は「少し離れた」というには徒歩半数が近いが、京都市内中心部はエリアが狭いため、このマンションの立地は「中心地の外れ」のイメージがあり、そういう意味では「扇町」駅周辺のイメージと近い。

一般的に駅から遠いマンションの評価は高くない。しかし都心居住の人気が高まっている中、大阪や京都神戸といった中心市街地については多少駅から遠くてもニーズは高い。

両マンションの最寄駅である「大宮」駅、「扇町」駅界隈を歩くとわかるが古いマンションは名前に「大宮」「扇町」と冠されているものが多い。以前なら烏丸・河原町圏、梅田圏ではなく「となりの別エリア」の認識であった。それが今では「大宮」ではなく「京都四条」、「扇町」ではなく「東梅田」。隣接するより大きな都市圏の名前になっている。

郊外不動産の不振とは裏腹に、マンション立地としての中心市街地は広がりを見せている。今後も同様な立地のマンション供給が増えそうだ。

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。