田中和彦が斬る!関西マンション事情不定期

[第89号]2019年、大阪京都神戸、注目のポイントは?

2019年01月10日

田中 和彦 ( たなか かずひこ )

関西を代表する都市である大阪、京都、神戸。2018年は、大阪と京都が外国人観光客による宿泊施設特需によって不動産市場が湧いたのに対して、 神戸は盛り上がりに欠けた。さて関西三大都市、2019年はどこに注目すれば良いか?

《JR「大阪」駅の隣駅が面白い!》

大阪万博決定に沸いた大阪。とはいえその盛り上がりが実現するのは今から6年後の2025年。開発系ではJR「大阪」駅北西部の「うめきた2期が注目されているがそれも街開きは2024年と5年先。今年はJR「大阪」駅ではなく、JR大阪環状線で「大阪」駅の隣駅にあたり、ここ数年は飲食店の出店と集積が増しているJR「福島」駅とJR「天満」駅に注目したい。

「大阪」駅に近いグランフロントや北新地の飲食店が都会的でハイセンスであるのに対し、「福島」駅「天満」駅周辺のそれはアジア的でカジュアル。ナショナルブランドにはない工夫がこなされた日々使いできる個店が多い。数年前は「ブーム」であったが今は定着した様相だ。このような街並みは単身やカップルのライフスタイルにマッチし、20〜30代の居住エリアとして評価は高い。

その需要に応えているのが福島界隈、天満(天六〜南森町)界隈のタワーマンションだ。同じ「大阪」駅近接でも北側に位置する中津エリアよりJR線が利用しやすい分、利便性に勝る。価格は中古新築とも飲食店のように「カジュアル」ではないが、JR「大阪」駅に近く商業住宅混在の暮らしやすい街として資産価値は高い。ここ数年、JR「大阪」駅界隈のポテンシャルが上がれば隣駅の評価も上がる。特に「うめきた2期」に近いJR「福島」駅周辺は引き続き狙い目だ。

ちなみにJR東海道線での「大阪」駅の隣駅は「新大阪」駅。この春全線開業予定の「おおさか東線」の始発駅となる。おおさか東線は「外環状線」の役目を果たす鉄道で、東海道線〜学研都市線〜大和路線の各線をつなぐ。こちらも注目の隣駅だ。

《JR「京都」駅は新駅開業に注目!》

大阪は「隣駅に注目」だが、京都は「隣駅が開業」する。2019年春開業予定のJR山陰線「梅小路京都西」駅だ。

「京都」駅・「丹波口」駅間、JR山陰線と七条通が交差する場所に開業する同駅は、南が梅小路公園、北に京都中央卸売市場があり周辺は住宅エリアが少ない。また、一駅先にある「丹波口」駅も、それほど乗降客数の多い駅ではない。また京都駅から西方向に2km弱にある同駅はいわば京都駅徒歩圏であり、交通利便性という意味でもインパクトはない。新駅周辺は、開業そのものの影響よりも、それを期待した周辺開発が進んでいくことへの期待感が大きい。

飲食店の話を大阪の紹介で書いたが、JR「京都」駅界隈もインバウンド需要を見込んだ飲食店の出店が多い。そんな中ここ数年での充実ぶりが著しいのが、JR東海道線に並行して北側を走り新駅が位置する七条通沿いだ。この七条通沿い、大規模な施設は新駅隣のホテルと商業施設からなる大型複合ビル(2020年度完成予定)計画がある程度だが、新築・リノベーション取り混ぜ稼働中も含め数十件の小中規模宿泊施設が見られる。ここに宿泊する人々の胃袋を狙った飲食マーケットはさらに加熱し、空き住宅や空き事務所は減少。結果として中古住宅だけでなく住宅賃料相場も上昇。売買価格は沈静化の兆しもあるが、賃料については下落イメージは少ない。

もうすぐ「駅前」となる新駅周辺は、現地に行けばわかるが今の所は「駅前イメージ」ゼロ。しかし、実際に駅舎が完成し、隣接の大型複合施設が開業すればイメージは大きく変わる。過熱気味である京都不動産市場だが、伸び代のあるエリアと言える。

新駅ができるのは「京都」駅の西側だが、東側も京都市立芸術大学(同市西京区)の移転が決まっており注目したいエリア。ただ工事が始まるのが2020年で移転開学は2023年度。こちらの本格的な盛り上がりはもう少し先になりそうだ。

《JR「三ノ宮」駅周辺開発、結果が出るのは10年後?》

大阪、京都と比べメディアへの露出も少なく、三宮ターミナルホテル・三宮OPA・モトコーやそごう神戸店の閉店等暗いニュースも多かった神戸。どれも建て替え等次のステップに向けての話だ。しかし、メインとなるJR「三ノ宮」駅南側、雲井通5丁目6丁目の地区再整備事業によるツインタワーからなるバスターミナルビルの完成は1期ビルが2025年、2期ビルが2029年の開業。まだ先の話だ。

「三ノ宮ターミナルビル」建替後の「新ターミナルビル」は2023度以降、阪急「三宮」駅隣接の神戸阪急ビル東館の建替による新ビルでも2021年。三宮界隈の開発が出揃い、活性化が本格化するにはまだ数年はかかる。

ここ数年、関西の不動産市況はインバウンド需要の恩恵をうけた部分が多かった。しかし京都大阪と比べ神戸は海外観光客の来訪が少ない。2018年1〜3月期の訪日観光客の訪問率は大阪府39.1%、京都府26.8%に対し兵庫県は6.4%と相当水をあけられている。

しかし神戸の評価が低いのかというとそうでもない。上記の訪問率も全国47都道府県では10位。低くない。森記念財団都市戦略研究所が発表した「日本の都市特性評価2018」でも同様の傾向がみられ、神戸市は全国主要72都市中6位の評価を受けているにもかかわらず、同評価でのTOPは京都市、3位は大阪市であり、関西においては3番手。つまりは、神戸という街は京都大阪という強力なライバルがあるために霞んでみえるということだ。この傾向は数年間は続くように思われる。

では神戸市はこれから沈んでいくかというと、そうではない。神戸については、住宅街に注目したい。

観光客の数等では大阪京都に遅れをとる神戸だが、住宅地に関してはそうでもない。2018年7月国土交通省調査の基準地価における対前年平均変動率。商業地は大阪中心6区と京都中心5区がそれぞれ13.1%16.6%で神戸東部4区が8.5%と5%程も差があるのに対し、住宅地は大阪京都2.5%3.6%に対して神戸が2.4%。差はほとんどない。

そもそも関西においては「京都で学び、大阪で働き、神戸で住む」という比喩が使われるように、神戸は住宅地としての評価が高い。商業地の価格上昇率で大阪京都の後塵を拝しているのも大阪や京都では中心部の商業地において住宅化が進んでいるという事情もある。その点、神戸ではJR「三ノ宮」駅界隈の半径約500メートル以内でのマンション建設規制が検討されており大阪京都とは反対に「都心の住宅地化」に歯止めをかけている。

三ノ宮周辺の開発計画は5年〜10年後にその全貌を見せることになる。その時、三ノ宮界隈、そして神戸市内の住宅地があらためて評価を受け、神戸復権となる可能性は十分にある。

ビッグプロジェクトを控えた大阪、インバウンド需要が継続する京都、5年先を見据えて着実に開発が進む神戸。個性的な都市が並存するのが関西の魅力。今年も、関西情報発信してまいりますのでよろしくお願いいたします!

 

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。