田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第92号]関西の武蔵小杉!? JR「草津」駅のタワマン事情

2019年02月27日

*タワーマンション銀座 〜JR「草津」駅

関東に地縁の無い人でも、武蔵小杉という地名は聞いた事があるだろう。神奈川県川崎市にある多くのタワーマンションが建設され注目されている街だ。駅周辺には10棟以上のタワーマンションが林立、さらに複数のタワーマンションが建設中だ。

都心の商業地なら兎も角、武蔵小杉のような近郊の住宅地にこれだけのタワーマンションが集中する例は少ない。首都圏は人口が多いからと思うかもしれないが、関西にも同様な街があるのをご存知だろうか。それは、草津だ。JR「草津」駅周辺には建築中の1本を含め8本のタワーマンションが立ち並ぶ。

草津といっても草津温泉の草津ではない。それは群馬県草津町。タワーマンション銀座の様相を示す草津は、同じ草津でも滋賀県草津市。東洋経済新報社が発表する「住みよさランキング」では行政区として全国40位/近畿3位、リクルート住まいカンパニー発表の「住みたい街ランキング2018 関西版」ではJR「草津」駅が10位にランクインするなど、「住みたい街」の常連エリアとして地元での評判は高い。

 

*草津が人気の理由

行政区として人気が高く、駅前でタワーマンションが売れるのには理由がある。JR「草津」駅・草津市には以下のような魅力がある。

1、JR新快速停車駅
JR「草津」駅は新快速停車駅。JR「京都」駅までは23分、JR「大阪」駅までは55分程度。もちろん、乗り換えなしだ。

2、自動車移動が便利
草津市内は国道1号線と名神高速道路が通る東京〜大阪を貫く日本の大動脈に当たる立地。また名神高速道路草津JCTは新名神高速道路との分岐点でもある。

3、大企業の拠点が多い
鉄道、自動車共に移動が便利な交通の要衝であるためパナソニック、日東電工、ダイキン工業等大企業の工場等が多く、工場用地、住宅地ともに不動産需要が底堅い。

4、宿場町として歴史がある
交通の要衝であったのは古くからで、江戸時代には東海道と中山道が接する宿場町として栄えた。歴史遺産も多く文化も豊かな。JR「草津」駅南側は宿場町の面影が多く残る。


*「草津」駅タワーマンション一覧

そんなJR「草津」駅周辺に建つタワーマンションは建築中含め、以下の通り(階数順に記載)だ。

●リーデンスタワー草津
(32階建/267戸/2004年築/JR「草津」駅徒歩3分)

●ザ・草津タワー
(29階建/314戸/2009年築/JR「草津」駅徒歩2分)

●アトラスタワー草津
(26階建/265戸/2020年竣工予定)/JR「草津」駅徒歩3分)

●クサツウエストロイヤルタワー
(25階建/134戸/1992年築/JR「草津」駅徒歩3分)

●ファミールハイツ草津2番館
(21階建/201戸/1997年築/JR「草津」駅徒歩4分)

●伽羅ガーデンスクエア
(20階建/281戸/2007年築/JR「草津」駅徒歩3分)

●プレサンスロジェ草津
(20階建/236戸/2012年築/JR「草津」駅徒歩5分)

●草津ロジュマン
(18階建/167戸/1989年築/JR「草津」駅徒歩1分)

●マーメイドシティ草津
(17階建/207戸/2003年築/JR「草津」駅徒歩5分)


特徴としては以下の様な点が挙げられる。

1、比較的古くからタワーマンションが建てられている
タワーマンション市場が活発化してきたのは、関西圏においてはリーマンショック以降。それまでは「富裕層の住宅」という印象が少なからずあったものが、一般のファミリー層や単身層などにも広がり、供給が増加した。ところがJR「草津」駅周辺のタワーマンションは2008年までに販売されたマンションが7棟。ほとんどのマンションがリーマンショック以降だ。

2、メジャー7の供給がない
タワーマンションは事業規模が大きくなることが多く、「メジャー7」の供給が多い。例えば大津市内のタワーマンションはブランズ西大津レイクフロント、ブランズ西大津レイクテラス(以上東急不動産)、ブリリア琵琶湖大津京(東京建物)、プラウドタワー大津(野村不動産)、パークシティ大津(三井不動産)と、過半数はメジャーセブンの実績。しかしJR「草津」駅周辺のマンションは全てメジャー7以外。販売時期の偏りはあるもののこれだけ違いがあるのも興味深い。


ニュースやネット記事で、人口が一気に増えたため武蔵小杉が「住みやすい街」ではなくなってきたといった記事を見ることがある。駅の混雑も大層すごいと聞く。実際の様子は筆者も体験していないが、ここ最近の乗降客数を見るとだいたい想像はつく。JR「武蔵小杉」駅の平均乗車人員が2017年度約13万人で、10年で約7割も増えている。一方、JR「草津」駅は25年間ずっと変わらず3万人弱。過度な人口過多はなく、まだまだ「住みやすい街」だと言える。関西の草津も「草津良いとこ一度はおいで」といったところか?

 

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。