田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第99号]上質で飾らない街 〜上本町

2019年06月12日

いつもウォッチしている「今、旬な物件ランキング」。読者層の規模の違いからか「エリア/全部」でトップ10にランクインするのはほぼ首都圏のマンションだ。ごくたまに関西のマンションの名前が見えるとなんとなく嬉しくなる。

今回、久しぶりに上位に関西物件を見た(*)。「ピアッツァタワー上本町EAST」だ。「上本町」は大阪居住、大阪勤務の人でもキタが主な活動場所という人には馴染みの薄いエリア。また「ピアッツァ」というブランド名もあまり耳にしない。今回はこの2点を簡単に解説したい。


【奈良まで一本のハイスペックな街】

まずは上本町について。住所としては大阪市天王寺区に位置する町名であり、北は大阪メトロ長堀鶴見緑地線が通る長堀筋から、南は四天王寺の北側(JR「天王寺」駅の北約1.5km)までの南北約2km超の南北に細長いエリア。ただ、大阪で「上本町」と行った場合は住居表示の「上本町」ではなく近鉄電車の上本町、正確には近鉄難波線「大阪上本町」駅を指す事の方が多い。

「大阪上本町」駅があるのは難波を千日前通に沿って東に2km弱徒歩約20分・近鉄線を利用して2駅、天王寺を上町筋に沿って北へ約2.5km徒歩30分程・大阪メトロを利用して2駅の場所。大阪有数の繁華街にほど近い上に、当該駅周辺も近鉄百貨店を中心に商店が密集する大変便利な場所だ。

駅徒歩圏に四天王寺中、大阪星光学院、清風中高、大阪女学院中高、明星中高など大阪の私立中学TOPが数多くあるのも特徴であり、交通・買い物・教育環境ともにハイレベルであることから高級分譲マンションが多いエリアでもある。

この高級分譲マンションの購入者層、奈良方面に地縁のある人が比較的多い。理由は「大阪上本町」駅が特急停車駅であり、難波はもちろん奈良までも一直線であり、高級住宅地を抱える「生駒」駅、「学園前」駅へのアクセスが良いことにある。生駒・学園前の高級住宅街にある比較的裕福な家庭で育った層の世帯分離や、リタイヤ層の一戸建てからマンションへの買い替え層が上本町に流れていく、というわけだ。


【事業主 フクダ不動産は奈良の老舗業者】

二つ目の「ピアッツァ」。京阪神を含む大阪府下でマンションウォッチングをしている人にはあまり聞かないな銘柄だ。しかし無名な会社、ではない。「ピアッツァ」シリーズを展開するのはフクダ不動産という奈良県で実績を重ねてきた会社だ。

創業は1982年で37年前。本社所在地は奈良県橿原市。分譲実績は奈良県、しかも大阪勤務者の多い奈良市・生駒市ではなく橿原神宮前や大和八木等、本社ある橿原市内を中心に奈良県南部(地図的には中部、なのだが)に固まっている。馴染みがないのも当然だ。

ちなみにフクダ不動産、大阪では既に「ピアッツァタワー上本町」を分譲しており今回が初めてのタワーマンションではない。一戸建てからマンション、タワー、そして平成29年にはJR「奈良」駅前に総客室数136室の「ピアッツァホテル奈良」を開業するなど元気な会社だ。


【高級住宅はあるが高級住宅街ではない魅力】

大阪市内で注目される立地は大阪環状線沿線と大阪メトロ御堂筋線沿線。その点、上本町はその両沿線から外れているので大阪以外での知名度は低い。しかし立地のポテンシャルが高いため、大阪市内居住者や奈良の「ベッドタウン」居住者からの評価は以前から高い。既に複数のタワーマンションが建築されて久しい。

そんなバランスも理由の一つであろうが、高級分譲マンションは多いが、高級住宅街とは言いにくい立地であり、それがまた上本町の魅力。高級住宅街の様に整然としすぎていない、むしろ幹線道路を外すと雑然とした町並みが広がる上本町は、梅田や難波よりも大阪っぽい魅力を持ったエリアと言える。

全国区のランキングで、麻布や渋谷のマンションの上にあるのが関西人として少し嬉しく思えた。

*「マイページ登録数(30日間)/100〜199戸」で2019/06/09 01:29 現在2位

 

 

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。