田中和彦が斬る!関西マンション事情不定期

[第103号]「梅田」から「大阪梅田」へ  〜 改称目的は本当に「わかりやすさ」か?

2019年08月14日

田中 和彦 ( たなか かずひこ )

阪急「梅田」駅が今年10月から「大阪梅田」駅に改称される。狙いは、海外からのインバウンド客や沿線外からの乗客が「梅田」駅を大阪中心のターミナル駅であるとわかりやすくするため、とのこと。関西では結構話題となっている(不動産業界界隈だけ?)この件、一関西人として考察してみたい。

JR「大阪」駅の最寄駅が「梅田」駅というのはわかりづらい。というよりも予備知識がなければ「大阪に行くにはどの駅で降りればいいのか?」が路線の駅名だけでは絶対にわからない。これは確かにその通り。東京に行き慣れない関西人が東京で「東京」駅に行く際、銀座線なら「京橋」駅、千代田線なら「二重橋前」駅で降りれば良いことがわからないのと同じ話だ。

「梅田」という名称はごく小さなエリアの住所名であり、区名ですらない。これは難波も同じ。関西の人間ならばこのあたりは予備知識があるのでそれぞれの位置関係がおよそわかる(と思う)のがだ、大阪近郊の人以外にとっては皆目見当がつかないであろう。

しかし「大阪梅田」と改称すればわかりやすくなるとも思えない。例えば近鉄「大阪難波」駅はどうか。こちらは「難波が大阪にある駅である」ことを示すために「大阪」を冠したのであろうが、近所に「大阪」駅はない。もし大阪の地名を知らない人が「大阪から始まる駅名ならJR「大阪」駅近辺にあるのでは?」と考えるとすると「大阪難波」駅と「大阪梅田」駅、どちらが「大阪」駅に近いのかわからない。難波は大繁華街だから「大阪難波」駅の近くにJR「大阪」駅があると考える人がいてもなんらおかしくない。「それくらいはわかるだろう」という意見もあろうが「それくらい」がわかる人なら「梅田の位置」もある程度わかるはず。

改称の理由は「わかりやすくするため」と言われているが実際は別の目的があるように思われる。それは「駅名検索」対策だ。

大阪に行こうとスマホ等で検索をする。まず上がってくのは当然JR「大阪」駅だ。阪急「梅田」駅、阪神「梅田」駅ではない。インバウンドであれ国内観光客であれ地理勘のない人が大阪から京都に移動しようと検索をすると、多くの人はJR「大阪」駅〜JR「京都」駅ルートで移動するであろう。阪急「梅田」駅〜阪急「河原町」駅を選ぶ人は少ないはずだ。乗客獲得競争にこれはマイナスだ。

これが「大阪梅田」駅に改称すると、大阪行きで乗換検索をした時にJR「大阪」駅だけでなく阪急「大阪梅田」駅もヒットする。しかもこの10月は消費税増税が予定されている。そのタイミングで運賃改定やシステム修正が行われるであろうから「ついでに懸案であった駅名改称もやってしまおう」といった決断がされたであろうことは想像に難くない。改称されることでわかりやすくなるかどうかはわからないが、少なくとも「大阪」と駅名で検索した場合に阪急「大阪梅田」駅が表示されるため、利用者にとっては選択肢が増えプラスになることは確かだ。

ちなみに「神戸三宮」駅という駅がある。こちらは梅田よりも一足先に「三宮」駅から「神戸三宮」駅となっている。この三宮は「大阪駅に近いことを示す」ために改称となる「梅田」駅よりも、「河原町という名称は京都にある」ことをわかりやすくした「河原町」駅に事情が近い。三宮は梅田同様、一住所名というよりも繁華街である周辺エリア全体を指す言葉という意味では梅田も三宮も同じなのだが、阪急「神戸三宮」駅の最寄りはJR駅がJR「三ノ宮」駅であり特に「神戸」とつけなくても両路線の駅は駅名で紐づけることが可能だ。

しかし厄介なことに神戸にはJR「神戸」駅がある。神戸エリアの繁華街に行こうと下調べをせずにJR神戸線に乗った人の中には、JR「三ノ宮」駅ではなくJR「神戸」駅で降りてしまった人もいるに違いない。JR「神戸」駅も東側(浜側)の神戸ハーバーランド等開発の進んでいるエリアだが、繁華街としてはJR「三ノ宮」駅周辺の方が上。余談ではあるがJR「神戸」駅の西隣には「兵庫」駅。兵庫県神戸市にある一番の繁華街が「兵庫」駅でも「神戸」駅でもないというのは興味深い。

「わかりやすい駅名」というのは大変難しい。「路線が違うが隣り合う駅」がそれぞれ同じ名称になれば確かに旅行者にはわかりやすい。しかし改称しても、以前の駅名を使い慣れた人にとってはかえってわかりにくくなる。今回改称する阪急「梅田」駅。周辺には大阪メトロの「東梅田」駅、「梅田」駅、「西梅田」駅がある。関西人とすればJR「大阪」駅をJR「梅田」駅と改称した方が間違いがないように思う。福岡の中心部が「博多」駅であるように、大阪が「梅田」駅でも違和感ないのだが、読者はいかがだろうか?

 

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。