田中和彦が斬る!関西マンション事情不定期

[第107号]堤防決壊だけではない浸水被害〜外水氾濫と内水氾濫

2019年10月23日

田中 和彦 ( たなか かずひこ )

さる10月12日に日本へ上陸した台風19号は東日本を中心に甚大な被害をもたらした。多くの河川で堤防が決壊し多数の家屋が浸水等の被害を受けた。反面、過去に災害があった箇所で堤防強化等の施策が実施されていたために被害が出ずに済んだエリアもあった。

近年、大きな災害を引き起こす天災は多い。なかでも昨年の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)は記憶に新しいであろう。この時、京都府北部を流れる由良川流域でも多くの浸水被害があった。由良川は2004年の台風23号で決壊し、大きな被害を受けたことを覚えてらっしゃるだろうか。由良川の名前は覚えていなくても、避難が間に合わず観光バスの屋根の上で夜を明かした乗客の画像を覚えている人は多いであろう。

この豪雨災害を受け、国土交通省は総事業費約500億円をかけて堤防整備をした。しかし今回の台風でも、由良川流域では集落の冠水という被害が起きた。なぜだろうか?

水害といえば「堤防決壊による洪水」というイメージが大きい。この川の水が堤防からあふれる、または川の堤防が破堤した場合に起こる洪水を外水氾濫というのに対し、市街地に降った雨が、短時間で排水路や下水管に一挙に流入し、雨水処理能力を超えてあふれる、あるいは川の水位が上昇して雨水をポンプで川に流せずに、市街地の建物や土地、道路などが浸水することを内水氾濫という。今回由良川流域で起きたのはこの内水氾濫だ。内水氾濫は堤防を強化したからといって防げるものではない。

大きな河川の決壊による洪水も不安だが、災害が起きる頻度を考えるとむしろ内水氾濫の可能性を考えて住宅選びや災害対策を考える方が良い。特に都市部においてはそうだ。

水害統計調査によれば2006 年から2013年における一般資産被害額 に占める内水氾濫による被害額の割合は、大都市で大きくなっている。全国では42.0 %であるのに対し、東京都は63.0 %、愛知県は85.0 %、大阪府ではなんと 96.5 %。大阪の水害はイコール内水氾濫といっても良い。数多くの開発に対して下水等のインフラ整備が追いついていなかったり、ゲリラ豪雨の増加によって今後の市街地部における内水氾濫リスクはさらに増加すると考えられている。今までであれば「川沿いは危険だ」などといった直感的な判断で済まされていたが、このように災害が度重なると、専門機関等による調査結果や詳細な過去履歴を調べて不動産選びや対策をする必要がある。

確認して欲しいのは、今更ではあるがハザードマップ。例えば大阪府では「様々な降雨により想定される河川の氾濫や浸水の可能性を府民にわかりやすく提示すること」を目的として「洪水リスク表示図」が公開されている。この表示図で調べてみると、具体的な地名等は記載しないが大きな河川の近くなのにリスクの少ないエリアもあれば、周辺に河川がないのに浸水の可能性が高いエリアもある。

人口減社会において、全体的な傾向としては「買い手市場」へと進む住宅市場。歴史的経緯による地位(じぐらい)よりもハザードマップによる災害可能性の方が重視されるようになりつつある。


参考サイト:

大阪市における内水氾濫頻発区域の分布とその特性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjshwr/31/1/31_9/_pdf/-char/ja

大阪府洪水リスク表示図
http://www.river.pref.osaka.jp/map?aid=1&mid=27116

 

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。