田中和彦が斬る!関西マンション事情不定期

[第118号]コロナ禍で「不動産は一律に下落」はしない

2020年04月29日

田中 和彦 ( たなか かずひこ )

全国全ての都道府県が緊急事態宣言の対象となって数週間が経った。完全にロックダウンはされていないものの、外を出歩く人や開業中の店は極端に減っている。そのような状況下、経済活動が停滞しその延長線上で「不動産は下落する」と様々なメディアで語られている。本当にそうなのであろうか?現在の状況を踏まえて現時点での不動産市場の動きをみてみたい。

まず、考えたいのは「不動産は下落する」という時の「不動産」とは何かということだ。もし文字通り「不動産は下落する」と考えているのであれば、それはかなり雑な考え方だと言える。少なくとも不動産には住宅用途と商業用途があり、その動き方は異なる。

昨今のコロナ禍で直接打撃を受けている不動産は、商業用途のものだ。観光業、旅行業、ホテル業、イベント関連業などは業務が激減し、休業廃業に追い込まれている事業者も多い。飲食業も同様だ。テイクアウト等で業績を伸ばしている企業もあるが、中小規模の飲食店の営業環境は厳しい。

これらの企業がテナントとして入居している商業ビルは、テナント退去、減額交渉、賃料の遅延等が発生し収益性が低下する。すなわち価格が下がることになる。特にテナント退去は致命的でこの状況下で新たなテナント探しとなると、条件面に優れない不動産は苦戦を強いられることとなり、従前の賃料を保てないだろう。

商業ビルに比べて事務所ビルは、営業度合いが少ない相場の下落があったとしても商業ビルよりは少し先の話となる。リモートワークの普及や業績悪化による事業縮小等によるテナント退去はあるものの、その影響が現れるのは少し先であることがその理由。また「小さな場所への移転」等別の需要も発生するので、物件によっては需要が増えるものもあるであろう。

これらの商業用途の不動産に比べ、住宅用途の不動産は相場への影響が限定的と言える。特に中古市場においては影響は少ないであろう。不況になって事業をやめる人はいても「居住をやめる」人はいない。多くの人にとって自己所有の住宅は最も守るべき資産だ。安易に投げ売りすることはない。むしろ守ろうとする。ただ、新築市場においては購入マインドの低下が現れ検討者は減るであろう。しかし、これにしても新築の供給が減ることにより大きな下落は「事業者が起こさせない」と言える。

もちろん、この状況下では「住宅が上がる」といいがたいが、「下落するから早く売る」というのも間違い。自宅不動産は長期的には保有しておく方が良い。立地が良い、需要が多い等の「良い条件の不動産」は、この機会に購入して資産を増やしたいという人も多い。ただし、ここ数年で売る必要があるのであれば早期の売却がいいであろう。特に交通便が悪い郊外物件で、空き家率が高い・高齢化率が高いエリアなどは下落のスピードが早い。「今が売り時」と言えよう。

このコロナ禍において、需要の減った商業用途不動産は下落の憂き目にあう。一方、住宅用途の不動産は需要が減ったわけではない。「不動産は下落する」という情報に惑わされ、売り急ぐのは筋が悪い考えと言える。

 

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。