田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第122号]「田舎暮らし」物件、エリア選びで気をつけたい3つのポイント

2020年06月26日

コロナ禍において生活者の意識や行動様式は大きく変化、都心を避けて地方・郊外に目を向ける人が増えた。かつて日本の人口移動は地方から都市周辺へ、とりわけ首都圏へと一方通行的に流れていったわけだが、今後その流れが変わる可能性がある。実際に、IT関連企業などリモートワークに適した業種では事務所の大幅な縮小や移転を検討・実施を始めている。それに伴いそこに勤務する従業者の一部は、より自然環境が良く生活コストが安くなる郊外に移動することになる。

そのような人々が今目を向けつつあるのが「田舎暮らし物件」だ。

その手のサイトは数多くあるのでどのような物件が売られているかイメージがわく人も多いだろう。東京から電車や車で2時間、大阪なら1時間も移動すれば十分に住めるレベルの一戸建てが数百万もあれば手に入る。桁一つ違う価格で手に入る。

既存の事務所はそのままで「間引き出勤」を実施する企業も多い。従業員目線で言えば「リモートワークが増え、事務所に出勤する日数が減る」ということだ。そのような人の中には「週2~3日の出社なら長距離移動も我慢できる」と田舎暮らしを考える人が現れるであろう。また、このような勤務形態としているのは大企業に多く資金的に余裕のある人も少なくないはずだ。数百万円の出費であれば生活拠点は移動させずにセカンドハウスとして購入するという選択肢もあり得る。

実際に、筆者のところにもここ1ヶ月で「田舎暮らし物件」に関する問い合わせが増えた。ただその内容は「この物件はどう思うか?」といった具体的なものから「どこに住むのが良いか?」といった緩いものまでまちまちだ。

今回はそのような都心への通勤を視野に入れた「田舎暮らし物件」での「エリア選び」に対して、いつも答えるアドバイス3点を簡単に紹介したい。

1、自動車道での移動は便利か?
郊外の移動の足はほぼ車となる。道さえあれば移動はできるが、そういうわけにもいかない。山間部の一般道となると移動に時間がかかる上に、豪雨や落石などの自然災害による通行止めのリスクもある。もとより、車移動が不便だと、その場所に行くのが億劫になる。別荘として「田舎暮らし物件」を購入したのに利用していない人は多くいるが、「行くのが面倒臭い」からと放置してしまう人も多い。継続利用を前提とするならば、自動車道での移動が便利、ICから近い、など自動車でスムーズに行ける立地で選びたい。

2、公共交通機関で移動ができる
ここで言いたいのは「駅徒歩◯分」「快速が1時間に◯本」といった利便性の話ではない。バス停はあるか?JRは利用できるか?そもそも公共交通機関で移動はできるのか?だ。日頃は車移動をするにしても、車にトラブルが起きることもあるだろうし、車を持たない知人が来ることもある。居住用にマンションや一戸建てを探す際の「二線二駅」と同様、二系統以上でのアプローチ方法がある不動産は資産価値が高い。

3、医療機関が近隣にある
滞在中に、健康状態が悪くなったり、怪我をしたり、不慮の事故に巻き込まれたりといったことがありえる。主たる生活拠点とする場合はもちろん、たとえ二拠点居住であっても何かあったときに医療サービスが受けやすい環境にあるかどうかはきちんとチェックしておきたいポイントだ。

もちろん他にもポイントはある(子供連れであれば教育機関や保育施設、高齢者であれば老後を見据えての行政サービス等)が、この3点をクリアしていればまずは及第点。往復に億劫になることも少なく、もしもの時にも安心だ。逆に、いくら安いからといっても、このポイントを外したエリアで購入すると足が遠のくことになる。

 

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。