田中和彦が斬る!関西マンション事情不定期

[第143号]京都市で「空き家税」導入。住宅相場はどうなるか?

2021年05月14日

田中 和彦 ( たなか かずひこ )

京都市で、空き家所有者に対する課税が導入されようとしている。「別荘税」とも「空き家税」とも呼ばれている。

今年3月初旬に、所有はしているがそこで生活はしていない「非居住住宅」のオーナーに課税する方針を固めた京都市。その後役所外の有識者を集めた税財源検討委員会にて審議された結果、先月末に答申がまとめられ門川大作市長に提出された、という運びだ。

市の狙いは二つある。一つは、空き家を減らし若者や子育て層を市内に呼び込むこと。コロナ禍までの京都はインバウンド需要で「お宿バブル」が発生。ホテルの建設ラッシュが起き、市内中心部では分譲マンションの計画地がホテルへと変更されていった。それだけにとどまらず既存の賃貸住宅や一戸建ても次々と宿泊施設になり、住宅価格は高騰。購入するのは宿泊施設事業者もしくはセカンドハウスを購入する富裕層ばかりで、子育て層の一時取得者は購入できないような価格となった。そこで「空き家税」と課すことにより利用していない住宅を市場に出そうという狙いだ。

もう一つは、税収の増加。この「空き家税」が導入されると8億円から20億円の税収増加が見込まれるらしい。京都市が、バブル末期に手当てした市内の下水処理施設用地を不要だからと売却、約43億円の特別損失を計上したのは今年2月。「空き家税」の話が出たのはその直後。さすがに「損失計上したから新税導入」なんてことはないであろうが、元々あった素案が推進されるキッカケにはなったのであろう。

新税導入の狙いが税収増加、というのは当たり前の話として、注目すべきは一つ目の「若者や子育て層を市内に呼び込む」こと。果たして、そのような効果は見込めるであろうか?

残念ながら、即効性は薄いように思われる。この「空き家税」による税負担、3月の京都新聞の記事によると「中京区の「田の字地区」にある分譲マンションの別荘(床面積100平方メートル)が6万5千~43万円。右京区嵐山の戸建て別荘(同300平方メートル)が12万~43万円」との試算になっている。現在、田の字地区の床面積が100平米の築浅分譲マンションの価格は億超え。親の代から持っていたという家なら話は別だが、対象となる住戸を持つ人はおそらく最近に購入し「別宅」として貸家にもせずに持っている富裕層。そんなオーナーがこの程度の税負担で住戸を手放す、もしくは賃貸に出すかといえばそうはいえない。43万円は日割りにすれば1000円強。たまに京都に来てホテルに宿泊をすることから考えると「軽い負担」と言える。

嵐山の戸建て別荘は、相続等で入手して何らかの理由で賃貸に出さず(or 出せず)に空き家にしているかもしれない。それはそれで、そんな空き家に課税をしていいものか?という倫理的な話にもなる。そこで記載の下限となる12万となれば田の字地区のマンションと同様、大した負担とはならない。すぐに賃貸に出せるような状態に一戸建てを維持しているのであれば、すでに固定資産税や空き家管理で年間10万、20万程度の出費をしているはずだ。

そのようなわけで今回の「空き家税」が実施されても賃貸相場や分譲住宅の下落は考えにくい。むしろ市内中心部に居住を誘導しようとしている行政の態度が見えた分「買い」ではないか?と思う。

 

大都市初、京都市が「別荘税」導入へ 子育て世代が市外流出(京都新聞)
「別荘・空き家税」京都市が導入へ…富裕層の購入で不動産価格高騰(読売新聞)

 

--------------
田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。