田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第178号]京都市内高さ規制緩和か?超高層マンション供給可能に!?

2022年10月27日

京都市内の建物の高さ制限が緩和の方向に向かっている。

さる10月17日から、京都市で都市計画の見直しについて市民からの意見が募集されている。通称「パブコメ(パブリックコメント)」とよばれるものだ。

京都市は兼ねてからインバウンド需要を見込んでのホテル投資等が起爆剤となり、土地価格が高騰。中心部においては一般の給与取得者層が、周辺部においては若年子育て層が住宅を購入しにくいエリアとなっている。実際に全国一人口が減少した市区町村という不名誉な記録を作ってしまった。

そこで考えられたのが今回の高さ制限。土地価格が下がれば、住宅価格は下がるが行政が土地価格を決めることはできない。しかし、より大きな建物が建築できるように制限を緩和することはできる。他都市と比べて京都市内に高層マンションが極端に少ないのは高さ制限が存在するから。高い建物を建築することができれば建築物の床面積あたりの土地価格、不動産業者の使う言葉で「一種単価」と呼ばれる容積率100%当りの土地単価が安くなるので、土地価格が下がるのと同じ効果が期待できる。そこで高さ制限の緩和となるわけだ。

例えば市内中心部の「田の字エリア」は高さが15m、四条通等の幹線道路沿いでも31mに制限されている。建物階数に置き換えればそれぞれ5階建程度、10階建程度だ。目抜き通りでも容積率が消化できない。京都市内は一部エリアを除いたほぼ全域で高さ制限の網がかけられており、その中でいちばん「緩い制限」が31mとなっている。

これが今回、大幅な緩和の提案がなされている。

例えば市内西部の阪急京都線「西京極」駅、JR東海道線「京都」~「西大路」~「桂川」駅の各駅周辺は20m(6~7階)から31m(10階程度)に緩和。同様の緩和は梅小路公園北側、地下鉄「竹田」駅界隈も同様に今までよりも3~4層高い建物の建築が可能になる。

そしていちばんの目玉は、山科区・伏見区、京都市営地下鉄東西線沿線エリアだ。

地下鉄東西線の「山科」駅~「六地蔵」駅間は、京都外環状線(以下「外環状線」)に沿うように走っている。その外環状線沿いの高さ制限が、要件を満たす建物の場合は「高さ無制限」となる。また容積率についても「山科」駅~「椥辻」駅間が現行の200・300・400%から700%へと大幅に緩和される。

以前このコラムでも紹介したことがある「六地蔵」駅の駅前には、タワーマンションが複数棟ある。それらは全て京都市ではなく宇治市内。同駅は京都市と宇治市の市境周辺に立地するため、京都市営地下鉄沿線に複数のタワーマンションがある珍しい風景となっている。

個人的には、今回の高さ制限の緩和は街並みと違和感もなくバランスの良いものだと感じている。意見の募集期間は11月16日まで。どのような方向に進むか、今後本コラムでも注目していきたい。

*参考資料
市民意見募集冊子(PDF形式, 9.70MB)(京都市役所HPより)
なぜ京都市が?人口減少が全国最多(NHK)
[第152号]交通利便性が高いのになぜかマイナー~宇治市六地蔵(本コラムより抜粋)

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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