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住まいサーフィン編集部

[第42号]住まいと健康の意外な関係:住まいと暮らしの防災・安全知識

2017年02月11日

住まいと健康にはとても密接な関係があります。寒かったり暑かったり温度差があったりすると体によくありません。建材から発生するホルムアルデヒドなどの健康被害も一時話題になりました。掃除がしづらいと、アトピーや喘息につながります。健康は住まいの性能だけでなく、使い方にも大きく左右されるのです。

住まいは家族を守る器

シンプルな暮らしは、健康な暮らしの第一歩です。

高気密・高断熱の住まいはなぜ健康?

昔の住まいは隙間だらけでした。高温多湿の日本の気候では、徒然草にあるように「家のつくりは夏をもって旨とすべし」で、「夏を快適に!」が大切だったのです。しかし冬の寒さには対応しがたく、火鉢やこたつのある部屋と廊下やトイレなどとの温度差が大きく、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしていました。

地球環境保全の観点から、冷暖房費を節約するために断熱性能や気密性能が大切になってきました。高気密・高断熱の住まいは、家のどこにいても温度の差がなく、快適です。また冷暖房効果が高いと、一度室内を暖めたり冷やしたりすると、その状態を長く維持できます。エアコンの機器も強い気流で空気を押し出す必要がなく、心地よい室内となります。通常のエアコンの強い気流がどれほど心身にストレスなのか研究所で違いを体感して、非常に驚いたことがあります。高気密・高断熱住宅の体に感じない程度の空気の流れとの違いは、想像以上のものでした。

しかし隙間が少ない高気密・高断熱住宅に大切なことは、計画的な換気です。計画的にきれいな空気を取り入れて、人がいる時間が少ない場所から排出すると、人が長くいる居室は常にきれいな空気が維持てきます。住まいで突発的かつ重篤な疾患が起こる可能性を減らせるのが、高気密高断熱住宅なのです。

24時間空調は無駄だと思いますか?

高気密・高断熱住宅では全館空調システムを採用するケースも少なくありません。基本的に24時間空調が働いて温度と換気を管理しています。外出しているときにも稼働していますし、秋・春の気候の良い時も稼働しています。しかし24時間稼働といっても、高気密・高断熱の住宅では、実際に冷暖房が作動しているのはごくわずかな時間です。帰宅したらきれいな空気と快適な温度の室内が出迎えてくれます。スイッチを一旦切ってしまうと再稼働するときに大きなエネルギーが必要で、かえって電力を消耗します。また再稼働の後、適正温度になるまで待たなくてはなりません。目に見えない部分ですが、違いは大きいのです。

F☆☆☆☆って、知っていますか?

シックハウス症候群は広く知られるようになりました。Fフォースターとは、JIS認定工場で生産されるJIS製品に表示されるホルムアルデヒド放散量等級の最上位ランクを示すマークです。F☆☆☆やF☆☆等級の製品もあり、使用に条件が付いたりします。ホルムアルデヒド等のVOC(揮発性有機化合物)濃度の低い建材を作るのはそれほど難しい作業ではありません。しかし、低濃度の製品と通常の製品を同じ場所で保管すると、すべて品質の悪いレベルになってしまいます。建材は工場で製作し、出荷まで一時的な保管が必要ですので、保管場所を分ける必要があるのです。つまり、家庭内においても、せっかくF☆☆☆☆の建材でつくられている室内でも、使い方で台無しになってしまうことも考えられるのです。特に家具などに使われている建材は、対応が遅れているのが現状です。できれば無垢の家具を厳選して、あまり多くの家具、特にDIYショップにあるような安い収納家具などを多用しないことがお勧めです。また芳香剤や殺虫剤、その他さまざまな香りの扱いにも注意ください。

ミニマリズムと健康

大人のアトピーは、ベッドと机程度の簡素な寝室で生活すると治るといわれています。モノが少ない室内は埃が溜まりにくいことや、掃除がしやすくなることも一つの要因ではありますが、簡素な室内で暮らすことによる精神的なリラックスが大きな原因だそうです。シンプルな暮らしは、健康な暮らしの第一歩です。病気だけでなく、ケガの要因も減らせます。

住まいは家族を守る器です。健康を害する要因となってはいけません。我が家はさほどモノに溢れてはいませんが、それでも子供のころの何もない部屋が懐かしくてなりません。単に何もないだけでなく、テレビもスマホもオーディオも様々な家電製品もない生活がなぜか懐かしく感じます。電気を使う製品は照明とラジオだけ…老後はそんな昔の生活も健康でいいかもしれません。あと冷蔵庫と洗濯機・アイロン程度でOKです。

Author:佐藤 章子 先生 (一級建築士・CFP・一級FP技能士)


写真提供:佐藤章子

一級建築士として、大手ゼネコンや住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事し、2001年に独立。2002年に『住まいと暮らしのコンサルタント事務所』ハウステージを設立。
「健全な住まいづくりは、健全な生涯設計に宿る…」をモットーに、ファイナンシャルプランニングと建築のハード面の双方から、住まい作りや暮らしを総合的にアドバイスしています。