編集部厳選!マンション知識最前線!? 不定期
住まいサーフィン編集部

[第45号]災害から家族を守る住まいの工夫:住まいと暮らしの防災・安全知識

2017年02月17日

戸建住宅の場合はもちろん、マンションの場合も自然災害に無縁とは言い切れません。住まいは高額な買い物ですので、家族と財産を守れる器でなくては意味がありません。最低限注意しなければならない点を考えてみましょう。

住まいは家族の生命と財産を守るもの

最低限注意しなければならない点を考えてみましょう。

新耐震基準以降のマンションって何?

最近は中古マンションを購入すると同時に好みのスタイルにリフォームするのが人気です。その場合は最低限、新耐震基準以降の基準で審査された建物を選んでください。新耐震基準は昭和56年(1981年)6月1日施行ですので、それ以降に確認申請がされて建築の認可が下り、その後工事が行われた物件ですので、完成時期は施行日よりもだいぶ後になります。

皆さんは、構造計算といえば絶対的な何かがあって決められていると思われるかもしれませんが、実際は経験値にすぎません。それだからこそ、大きな地震があるたびに耐震基準が見直されてきたのです。今後も見直されないとは言い切れません。それまで安全とされてきた基準が「危険水準」とされるのですから、最低限最新の基準に基づく建物を購入しましょう。

津波到来水位以上の階数を選ぼう

都内でも河川の氾濫や下水の氾濫等で浸水したマンションの1階の様子が報道されたことがあります。大きな河川の堤防が決壊したり、津波が到来したら、2階以上も要注意です。地域のハザードマップを確認して階数を決定しましょう。

危険な土地を見極めよう!

以前横浜市の新築マンション裏の崖が崩れた事故がありました。横浜は崖地が多い地域ですが、その崖は垂直に近く50m以上もあり、崖下の8階建てマンションの高さの実に倍以上です。当然、崖が崩れる危険が大きい場所です。そのため横浜市は確認申請の許可を簡単には出さず、マンションの崖側の壁を補強させたりして、確認申請を認めた形になりました。その後、結局崖崩れが発生し、マンションの裏手は3階部分まで埋まってしまいました。補強設計が功を奏して、人的被害はありませんでしたし、建物も土砂を取り除けば使える状態でした。

また崖の上の持ち主は国でしたので、崖の勾配を削ってより安全なものとしましたが、民間地であれば土地の面積を削ることは簡単ではありません。自然の崖かもしれませんが、崖下の土地を平らにするために、より危険な形に削った可能性もあります。いずれにしろ、住むには危険な土地だったのです。

そのようないわくつきのマンションのために相場よりも安く販売され、若い夫婦が多く購入したそうです。しかし、そのような危険なマンションで子育てするのは問題があると言わざるを得ません。親として、安全な土地をしっかり見極めることが大切なのです。人的被害がなかったのは、横浜市の指導があったとは言え、運がよかった部分も大きかったと思います。また崖上の敷地が国の所有でなかったら、今後も再度の崖崩れにおびえながら暮らさざるを得ません。

住まいは家族の生命と財産を守るもの。まして大金をはたいて購入するわけですので、失敗は許されません。住まいは上手に取得すれば、その後の人生を安心して暮らせて、人生の中で起こりうるリスクを減らせる財産となります。しかし選び方が悪いと、リスクが大きくなる可能性もあるのです。

Author:佐藤 章子 先生 (一級建築士・CFP・一級FP技能士)


写真提供:佐藤章子

一級建築士として、大手ゼネコンや住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事し、2001年に独立。2002年に『住まいと暮らしのコンサルタント事務所』ハウステージを設立。
「健全な住まいづくりは、健全な生涯設計に宿る…」をモットーに、ファイナンシャルプランニングと建築のハード面の双方から、住まい作りや暮らしを総合的にアドバイスしています。