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住まいサーフィン編集部

[第47号]自分が住む地域の災害を知ろう!:住まいと暮らしの防災・安全知識

2017年06月14日

都市部に住む人々の多くは、他の地方から移り住んできた人たちではないでしょうか。先祖代々同じ土地に住んでいる場合と違って、災害の知識が伝承されていることは少ないのではないかと思います。親や地域のお年寄りなどから、昔、その地域で起きた災害について詳しく教えられている方はどれほどいるでしょうか。ほとんどいないのではないかと思います。それでは自分で自分の身を守れません。また親は子供にたいして責任があります。その地域の災害について詳しく知らないでは済まされません。

地域の災害について詳しく知らないでは済まされません

親や地域のお年寄りなどから、昔、その地域で起きた災害について詳しく教えられている方はどれほどいるでしょうか

災害の経験ありますか?

現在は治水工事が一巡していて、河川の氾濫は昔と比較してさほど多いものではなくなりました。若い方々は浸水の経験を持っているケースは少ないでしょう。町で小規模のセミナーを行うと、その中にお年寄りがいらっしゃると、必ず浸水などの災害経験を尋ねます。都内の下町では皆様必ず経験されていました。東京は起伏の多い地形です。山の手地域でも低地は多くあり、河川の氾濫は今でも普通に起きうるのです。堤防や地下の貯水池などはしょせん人工物です。それ以上の災害には対処できません。人工物は災害のリスクを軽減はしますが、絶対と言えるものではないのです。もとからその地方にある災害は、これからも起きうると思った方がよいでしょう。だからその地域の過去の災害の知識は大切なのです。

地域への正しい知識が「釜石の奇跡」を生んだ!

東日本大震災では、悲しいことに多くの人命が失われてしまいました。もちろん多くの家屋も地震による倒壊や津波によって流出してしまいました。私はファイナンシャルプランナーとしても相談業務を行っていますが、ファイナンシャルプランナーは「ライフプラン」、「金融資産運用」、「税金プランニング」、「保険」、「不動産」、「相続と事業継承」、6つの分野があり、それぞれ適正な選択をアドバイスする仕事です。適正な選択とは、「少しでも有利に」だけでなく、「危険を回避」することも意味します。保険であれば、少ない保険料で最良の保険を選択してもらうようにアドバイスするだけでなく、そもそも人生の中での様々なアクシデントに出会ったときに、どのようにして保険で回避するかを考えます。ファイナンシャルプランナーは災害も含む人生で出会う可能性のあるアクシデントに精通している必要があります。数多くあるリスクの中でも、戦争や原子力発電所の事故等と並んで、自然災害は被害が大きくなるものの一つです。

釜石の奇跡とは、子供たちへの徹底した防災教育により、東日本大震災の際に約3,000人の釜石市の小中学校児童の99.8%の命が助かったというものです。釜石は、度々大きな津波の被害に見舞われ、明治三陸津波では6,500人の住民中4,000人が亡くなったそうです。そのために「津波でんでんこ(津波がきたら、子供や親のことを考えず、てんでんばらばらに逃げなさい)」という、言い伝えがありました。それでも時がたつにつれて、実感が失われ、形骸化していったのです。震災の数年前から、新聞等で三陸沖の危険性が指摘されていました。そうした中で、子供たちに徹底した防災教育がなされたのです。災害に対して自分自身の判断で行動する主体者となる=そのときに考えられる最善を尽くして率先して避難することを徹底して叩き込まれました。つまり災害に危険な土地でも、大きな地震の被害が想定される地域でも、自分でしっかり地域を知れば、子供でも自分で自分の命を守ることができるのです。

思い込みが大きな被害につながる!

災害が起きるとよく使われる言葉に「未曾有の出来事が起きた」というのがあります。そもそも災害は予期せぬ、想定外のことが普通です。だから災害なのです。下記の図を見てください。行政が作成したハザードマップの津波の到達エリアは赤色で示しています。ところが実際の津波はそれをはるかに超えて広がりました。しかし、昔からある神社や祠は見事に津波の到達点の外ぎりぎりに建てられていたのです。つまり、昔の人は津波がどこまで到達するか熟知していたのです。残念なことに、ハザードマップの外で多くの方がなくなりました。「ハザードマップの外だから安心」、「堤防が高いから安心」、「放送では津波の高さが低そうだから安心」と思い込むことが多くの人命損失につながりました。

東日本大震災の津波被害のイメージ図
©佐藤章子
住む場所を選ぶときもまったく同じです。完全に安全な場所はありません。地域の危険を熟知し、どう身を守るかを準備しておくことが大切なのです。災害を想定した建物の構造や性能の確保も大切なポイントです。

私は子供の時は父の転勤で地方にいました。台風、豪雪、河川の氾濫と一通り経験しました。中でも印象的なのが、河川の氾濫です。実際に床下まで何度か浸水しましたが、周辺の人々は堤防の弱いところを熟知していて、大勢でその個所の様子を見守っていました。外からの転居者である父は、地域の人の話を聞くために、見守りの輪に加わり情報を仕入れてきました。「この様子だとこれ以上増水しないから、決壊しないであろう」、とみんなで決断を下し対応していました。津波と違って、雨足と流れ込む水量はある程度計算できるので、経験値が生きます。決して市町村の情報だけに頼っていたわけではなく、自分の責任でしっかり見極めていたのです。私はまだ未就学児でしたが、その時の大人のやり取りが強く印象に残っています。ですので、何事も行政に依存する昨今の風潮には違和感を覚えます。
 
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Author:佐藤 章子 先生 (一級建築士・CFP・一級FP技能士)

一級建築士として、大手ゼネコンや住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事し、2001年に独立。2002年に『住まいと暮らしのコンサルタント事務所』ハウステージを設立。
「健全な住まいづくりは、健全な生涯設計に宿る…」をモットーに、ファイナンシャルプランニングと建築のハード面の双方から、住まい作りや暮らしを総合的にアドバイスしています。