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住まいサーフィン編集部

[第50号]子供の防災教育:住まいと暮らしの防災・安全知識

2017年07月05日

災害に対する対策は、自分でできることは自分でするところから始まります。日本人はとかく行政の指示待ちの傾向にあります。都会に人口が集中し、新しく移ってきた住民には災害の伝承がされていない点も問題です。治水対策などが急速に充実し、災害が身近で起こらなくなったことも無関心の要因です。治水工事が進んでも、想定外のことが起きるのが災害です。自分で自分の身を守るにはまず何をしたらよいでしょうか。

家族で話し合うことが大切です

災害の多い日本でも、心構え次第で身を守れることが実証されています

親や子供とハザードマップについて話したことありますか?

現在各家庭にハザードマップが配布されていると思います。もし転居してきたら、市区町村へ所定の届け出をするときにハザードマップも入手しましょう。ネットでも閲覧可能です。ハザードマップは万能ではありませんが、少なくとも最低基準として、しっかり把握することは大切です。一家に一つ配布されますので、家族で共有する必要があります。浸水などのリスクのある土地であれば、家にいた時だけでなく、どこにいたら、どこに逃げるかを実際に歩いて確認してみる必要があります。その時いる場所によっては指定された避難場所に行けないケースも普通に考えられます。家にいたとき、公園にいたとき、学校にいたとき、駅にいたときなど、考えられるケースについて話し合っておきましょう。避難ルートや公共の避難場所だけでなく、マンションの1階などの場合はマンションの上階の住人に万一の場合の避難を依頼しておきましょう。耐震性能の不足する古いマンションに住んでいる場合は、近くの耐震性能の良い建物で、オートロックでない建物などをチェックしておくとよいでしょう。実際の防災教育も机上の勉強だけでなく、実際に歩いてみることが重要視されています。

釜石の奇跡は親の命も守った

東日本大震災前に、徹底した防災教育を開けた釜石の子供たちは、既成概念にとらわれて、「堤防があるから安心」、「津波の高さは低いと放送されたから、ここは安心」、「うちはハザードマップの外だから安心」という両親や祖父母たちを必死に説得して、高台へと避難したそうです。子供たちへの防災教育がなければ、そして大人たちをも説得できるほど確かな防災教育がなされていなければ、もっと多くの大人たちも亡くなってしまったでしょう。実際に釜石で亡くなった方々の中で、子供たちの親の比率は極めて低かったそうです。子供たちとその時離れた場所にいたとしても、自分の子供たちが積極的に避難していると確信していた親たちは、子供を迎えに行ったりせずに、即座に非難できたことも子供の親たちの命を救った要因となったそうです。日ごろから親たちに「地震があったら自分の判断で率先して逃げる」と言い続けるように、繰り返し教えられた防災教育のたまものだったと思います。

災害の多い日本でも、心構え次第で身を守れることが実証されました。住まいについても自分自身で守れる領域は多くあると思います。

あなたは自転車を買ってもらったときに、親から交通ルールを学びましたか

以前のコラムでも触れたことがありますが、私は運動不足解消のためにほぼ毎日自転車で、1~2時間走ります。乗っていて気になるのが、交通ルールを守る自転車がほとんどないことです。一時停止の標識はほぼ100%守られません。右側通行も普通にあり、なんの合図もなく追い抜いていきます。ひどいのは、私の右側を追い抜いて、その直後に左折したりします。直進している私の自転車すれすれで、危険極まりない行為です。それも一度や二度ではありません。

そもそも親に自転車を買ってもらったときに、親から交通標識やルールを教えられた人はどのくらいいるでしょうか。子供がいる方は、子供に教えたでしょうか。最近は自転車事故も重大事故になりがちで、賠償金も数億言い渡されるケースもあります。そのために自転車保険もそれに対応するようになりました。加害者になれば相当の金額を請求されるばかりでなく、被害者になり、相当のダメージを受けることも考えられます。身近なケースにも関わらず、危機回避の意識が日本人には相当低いように思います。

災害対策は、政府や都道府県、市区町村、それぞれに重要な取り組みです。日本の歴史を振り返っても施政者の重要な取り組みでした。しかし、それ以前に自分で自分を守ることが第一です。子供の防災教育も学校に頼る以前に親が教育すべきことであり、家族で話し合うことが大切です。家族分のヘルメット、緊急持ち出しグッズなども家族分用意しておきましょう。厚底の靴や防寒着なども同じところに保管しておくとよいでしょう。防寒着は夏でもけがの防止や夜間の保温、敷き布団代わりなど、何かと役立ちます。

Author:佐藤 章子 先生 (一級建築士・CFP・一級FP技能士)


写真提供:佐藤章子

一級建築士として、大手ゼネコンや住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事し、2001年に独立。2002年に『住まいと暮らしのコンサルタント事務所』ハウステージを設立。
「健全な住まいづくりは、健全な生涯設計に宿る…」をモットーに、ファイナンシャルプランニングと建築のハード面の双方から、住まい作りや暮らしを総合的にアドバイスしています。