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  • 2020.05.15
NO.286
東京都渋谷区「神山町・代々木公園」の特徴

ここ数年、「奥渋」と呼ばれるエリアは、歴代総理私邸が建つ高級住宅地

東京都渋谷区「神山町・代々木公園」の特徴とマンション

 渋谷区神山町は渋谷区南西に位置し、南側で松濤と接する。吉田茂元首相の邸宅もあった高級住宅街だ。渋谷区内に多い「◎丁目」の設定のない単独町名である。大使館が多くあり、井ノ頭通りを挟んでNHK放送センターがあり、放送番組制作会社であるNHKエンタープライズなどの関連会社・組織が数多い。

 神山町エリア内に鉄道駅は存在しないが、JR渋谷駅、JR原宿駅、東京メトロ代々木公園駅、京王井の頭線神泉駅が徒歩圏である。

「奥渋」「裏渋」と呼ぶ住宅街に軒を連ねる個性的で良質なショップ

 渋谷駅から東急文化村通りを進み、東急本店の先。閑静な高級住宅街・松濤には、食通を唸らせる本格的なレストランが集まる。
 また、代々木八幡へと続く神山町に軒を連ねるのは、気軽だけれど良質な飲食店も数多い。思わず足を止めたくなる洒落た雰囲気のギャラリーやカフェなどが点在し、「奥渋谷」「裏渋谷」といった呼称で、近年親しまれるエリアに変貌しつつある街だ。

 町内にユニークな書店がある。「SHIBUYA Publishing Booksellers」だ。作家が自らの筆で原稿用紙に書き記し、自ら装丁し、客に手渡せる世界観を形にした書店である。店の奥には編集室のオフィスがあり編集者が働いている様子が見える。新書から古書まで、哲学、美術、文学、音楽、洋書、雑誌など独自の視点でセレクトした本が並ぶ。各年代の代表的なデザイナーがデザインした特徴的な棚に本が並んでいる。
 神山町には麻生太郎・現副総理・財務大臣の邸宅もある。神山町4番から42番の通学区は区立神南小学校、その他の番地は区立富ヶ谷小学校である。

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都心にあって貴重な緑地、代々木公園

 なかでも奥渋、富ヶ谷を抜けて代々木公園駅へいたるエリアの中高層マンションは、東京ドーム11個分と言われる広大な代々木公園の緑を借景とする人気の地域だ。

 宇田川と河骨川の2つの谷が合流する地点が町名の由来となった富ヶ谷は、渋谷区中西部に位置する。富ヶ谷の北部は小田急線沿線で、小田急線を境に向かい側は渋谷区代々木だ。富ヶ谷1丁目の南は渋谷区神山町に接している。東の一帯が代々木公園だ。
 エリアは住宅街であり、多くが一戸建であった。富ヶ谷1丁目には、現首相・安倍晋三総理が住む、故安倍晋太郎・元外務大臣の豪邸跡に建設した高級マンション「富ヶ谷ハイム」がある。前述したように、近年、代々木公園に近い幹線道路沿いにマンションが建設されている。富ヶ谷1丁目の北に代々木公園駅と小田急線・代々木八幡駅がある。
 富ヶ谷の区立小学校通学区は1丁目が概ね区立富ヶ谷小学校で、神南小学校・松濤小学校に変更可能。2丁目は概ね区立上原小学校である。

戦後、米軍の街、五輪選手村などに、そして23区内最大のスタジアム構想

 代々木公園は旧日本陸軍の練兵場だったが、先の大戦後に進駐軍として米軍が駐留。軍高級士官とその家族のための街「ワシントンハイツ」となった。1964年に開催する東京オリンピック選手村建設のために返還・再整備され、1967年に代々木公園として開園した。また、選手村の宿泊棟はオリンピック記念青少年センターや代々木ユースホステルとして利用されてもいた。代々木公園の敷地は54万0529平方メートルであり、東京都23区の都市公園のなかで5番目に広い。

 園内にはオリンピック当時選手村の練習用トラックとして設けられた日本人として初めて五輪で金メダルを獲得した織田幹雄の業績を称える陸上競技場「織田フィールド」や、サッカーなどの球技用グランドがある。織田幹雄がメダルを獲得した競技は、1928年のアムステルダム大会・陸上競技の三段跳び。織田が早稲田大学在学中に「ホップ・ステップ・ジャンプ」と呼んでいた英語の競技名を「三段跳び」と翻案したという。日本陸上界の父と称される。

 2017年7月、東京都が公園の南部に位置する、陸上競技場やサッカー・ホッケー場や野外ステージがあるエリアにサッカースタジアムの建設を計画していると報道された。構想では「スクランブルスタジアム」と名付けられ、サッカーだけでなくライブやイベント会場、さらには防災拠点としての機能も備えるという。収容人員は3~4万人規模を想定し、2025年の竣工を見込んでいる。
 なお、2007年に公園内にドッグランが開設され、体重12kgまでの小型・中型犬用スペースとそうでないスペースに分けられている。犬をドッグランに入れるには、事前に検査・登録が必要だ。
 公園に隣接する明治神宮が大晦日から元旦までを除き夜間立ち入り禁止となっているが、代々木公園は事実上24時間入園が可能である。

代々木公園を借景とする人気のエリア

 先般、富ヶ谷1丁目プロジェクトとして進行していた高層マンション「ブリリアタワー代々木公園クラッシィ」が竣工した。邸宅地として名高い松濤や神山町の趣を継ぐ街、渋谷区富ヶ谷1丁目に建つ、19階建て195戸のタワーレジデンスだ。東京メトロ代々木公園駅、小田急線・代々木八幡駅徒歩2分という立地で、代々木公園が見渡せる住宅地で人気が高かった。価格は70平方メートルクラスの上層階で億を超え、3億円超の部屋も販売された。

吉田 恒道

Yoshida Tsunemichi

大学卒業後、ファッション専門誌の編集者を皮切りに、音楽誌、自動車専門誌などの編集者を歴任。その後、複数のライフスタイル誌の編集長を経てフリーに。著書に「シングルモルトの愉しみ方」(学習研究社)がある。

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