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  • 2020.05.15
NO.290
東京都渋谷区「渋谷駅周辺」の特徴

大規模再開発で今もっとも注目を浴びている渋谷

東京都渋谷区「渋谷駅周辺」の特徴とマンション

 渋谷区のほぼ中央に位置する宇田川町は、「●丁目」の設定のない単独町名だ。渋谷を代表するエリアであり、国際的にも有名で観光名所にもなっている渋谷スクランブル交差点から区役所前交差点までの渋谷公園通りが東の境界線となり渋谷区神南に接している。その宇田川町北西で都内屈指の高級住宅街である松濤および神山町に接する。

 町域に井の頭通りが公園通りを起点に走っており、周辺には西武百貨店やLOFT、PARCOなど旧西武セゾン系大型商業施設が建ち並ぶ。それらを結ぶ歩道にはスペイン坂やペンギン通りなど個性的な愛称がついている。その先には、エドワードスズキ建築事務所が設計して1985年に建てた、デザイン交番として有名な宇田川町交番がある。
同交番の受持ち地区は神山町、宇田川町の一部、松涛1丁目の一部、神宮前5丁目の一部、神宮前6目の一部となっているという。
 なお、町名の由来となった渋谷川支流の宇田川は、1964年の東京オリンピックの際に暗渠とされていて、現在、西武百貨店A館とB館の間の井の頭通り下を流れる川を目視することはできない。その宇田川の支流には童謡「春の小川」のモデルになった河骨川(こうほねがわ)がある。

渋谷区役所、渋谷公会堂建て替えで誕生する定借付きタワーマンション

 現在、住居表示で渋谷区宇田川町1-1に位置する渋谷区役所本庁舎と渋谷公会堂は建て替え工事を終えて、地上15階地下2階の新庁舎に生まれ変わり、新区役所は2019年1月に開庁した。さまざまな最新機能を備えた新庁舎と、隣接して整備された新しい渋谷公会堂を含めた総工費211億円に、区の予算は一切使っていない。公会堂は同年10月に完成した。公会堂は2029年までの10年間ネーミングライツ権を1億2000万円/年で、IT系企業「LINE」が取得、企業名が冠された「LINE CUBE SHIBUYA」と呼称される。

 なお、渋谷区は旧庁舎の敷地を再編して生まれたおよそ4500平方メートルの土地を民間に貸し出し、その収入を新庁舎などの建設費に充てた。2020年9月に、その土地に三井不動産レジデンシャルによる定期借地権方式(70年)の地上39階建て総戸数505戸の高層分譲タワーマンション「パークコート渋谷 ザ・タワー」ができる。販売価格は70年間の地代を含めて平均1億6399万円で、坪単価が703万円、最高額の部屋は38階145.76平方メートルの4億9900万円だ。39階のペントハウスは未公開だが、プライベートプールを備えた部屋ということである。2019年11月25日に抽選となった第4期の販売価格は、専有面積43.38平方メートルの1LDKで8480万円、86.07平方メートルの2LDKで1億9660万円だった。入居にあたって通常の管理費、修繕積立金などのほか、200万円~数百万円の修繕積立金基金、70年後の解体費積立金などが必要だ。

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定期借地権付き住宅は資産性が無いとされるが……

 定期借地権付きマンションは、土地所有を含めた一般的なマンションより資産性が小さいと思われがちで、それを緩和するために、新築定期借地権付きマンションは土地所有の物件と比較して85%程度の価格設定とされるのが一般的だ。
 事実、2008年に三井不動産が同じ渋谷区の神宮前一丁目民活再生プロジェクトで販売した原宿・東郷神社に隣接した定期借地権(50年)付きマンション「パークコート神宮前」(総戸数385戸)は、今をときめく建築家・隈研吾設計でありながら、坪単価350万円を切る価格で販売され、お買い得感が高い物件だった。
 しかし、この渋谷でも高台で渋谷区役所に隣接し代々木公園・明治神宮を一望する「パークコート渋谷 ザ・タワー」は別格といえそうだ。

 2019年11月現在、渋谷区宇田川町の世帯数は577世帯、人口843名なので、このタワーマンションが完成すると一挙に人口が倍増する可能性がある。宇田川町の区立小学校の学区は、マンションに隣接する区立神南小学校。中学は区立松濤中学校だ。

進みつつある“渋谷大改造計画”

 また、かつて旧西武セゾングループが渋谷商圏の来街者の流れを変えたとされる「渋谷パルコ&パルコ劇場」も立て替えが進められ、商業施設のパルコは2019年11月22日に192店舗のテナントが入居して再オープン。オリジナルBGMの監修を小山田圭吾のソロユニット「CORNELIUS」(コーネリアス)が担当することが決まった。
 そのパルコの7階から9階部分に導入されるパルコ劇場は2020年1月にグランドオープンした。座席数は458席から636席に拡張。こけら落とし公演として2020年1月下旬から2月にかけて『志の輔らくごin PARCO 2020』、藤田俊太郎演出による『ラヴ・レターズ』を上演。

 渋谷駅周辺で東急グループが進めている大規模再開発のひとつ、「渋谷フクラス(SHIBUYA FUKURASU)」が2019年12月に開業した。名称には、「膨らす(膨らます)」という日本語から、渋谷および当ビルを訪れるすべての人々の幸福を大きく膨らませていきたいという思いを込めたという。ロゴマークは、街のエネルギーが凝縮された、結晶体のようなビルの外観から「膨らむ結晶体」を表現。ロゴカラーのシルバーは、洗練・品格・先進の印象を打ち出しながら、すべての色(個性)を輝かす柔軟性・多様性を表現したという。
 このほか、東急グループが進める渋谷再開発計画は枚挙に暇がない。渋谷駅の東急東横店跡に第1期スクランブルスクエア東棟が竣工、その後タワービルが本格稼働する。さらにヒカリエに隣接する渋谷2丁目17計画、渋谷駅桜丘口地区開発など目白押しだ。
 今後、渋谷駅桜丘口地区や渋谷2丁目17地区の開発、27年度の渋谷スクランブルスクエア中央棟・西棟の完成で一連の大型プロジェクトは一段落する予定だ。

吉田 恒道

Yoshida Tsunemichi

大学卒業後、ファッション専門誌の編集者を皮切りに、音楽誌、自動車専門誌などの編集者を歴任。その後、複数のライフスタイル誌の編集長を経てフリーに。著書に「シングルモルトの愉しみ方」(学習研究社)がある。

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