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  • 2020.05.15
NO.291
東京都渋谷区「広尾」の特徴

広尾駅周辺は、東京都心3区を除くと屈指の高級住宅地

東京都渋谷区「広尾」の特徴とマンション

 渋谷区広尾は、東京都渋谷区の南東部に位置している。西は同区東と、南は渋谷川を境に同区恵比寿、東は港区南麻布、北は港区西麻布、港区南青山に接している。現行の行政地名は広尾1丁目から広尾5丁目まで。エリアは全般に住宅地で、明治通りに面したエリアや恵比寿の近隣にはオフィスビルも多い。

 広尾2丁目・3丁目の日本キリスト教団広尾協会、チェコ大使館から日赤医療センターにかけての高台は、都内屈指の高級住宅街だ。土地公示価格も飛び抜けている。明治通り天現寺交差点付近には、在日米海軍の施設である「ニュー山王ホテル」がある。

かつての「元広尾町」「麻布広尾町」が広尾の原点

 その昔、広尾は「樋籠」(ひろう)と記され、広大な原野であり「広尾原」とも呼ばれたという。文政年間に描かれたとされる広重の「名所江戸百景」では、広大なススキの原だったようだ。付近の渋谷川山下橋には江戸時代に大型の水車が設置され、山下橋の風情と合わせて、これも『江戸名所図会』に載る。現在の港区と渋谷区に拡がった広域地名であった。

 江戸初期まで下渋谷村の一部であったが、1664年に町屋の建設が許可され渋谷広尾町が始まる。その後、広尾橋の麻布側に麻布広尾町が発足した。当時の渋谷広尾町は、恵比寿駅前と渋谷橋周辺、広尾駅周辺にあたる。
 明治になって渋谷広尾町は渋谷広尾町・渋谷上広尾町・渋谷下広尾町の3つに分割され、翌1871年に東京府豊島郡に編入。1878年に郡区町村編制法の施行によって麻布区に編入された。

 なお1928年(昭和3年)、渋谷町の町内の11大字を廃止して新たに66町を設置したが、広尾の名前は新設の元広尾町が受け継いだ。このため、現在の渋谷区広尾5丁目付近が「元広尾町」、現在の港区南麻布5丁目付近が「(麻布)広尾町」とされた。そのためか、港区南麻布4丁目に広尾神社がある。

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渋谷区東に存在する数多くの教育機関

 広尾の西側、渋谷区東に話を移す。1962年の住居表示法の施行以前、「東」という町名は渋谷区には存在しなかった。が、住居表示実施の際に常磐松町と氷川町を合わせ、「東」と命名された。新町名の命名に関して、常磐松町と氷川町の住民対立が起こったため、渋谷「市街・繁華街の東側にある」という理由から、妥協案として提示された「東」が採用された。
 それが理由なのか、渋谷区立広尾中学校、都立広尾高校は渋谷区東4丁目にある。2004年から両校は連携型中高一貫教育を開始、都市型中高連携教育校となった。近隣には渋谷区立広尾小学校(東3丁目)、國學院大學(東4丁目)、青山学院初等部(渋谷4丁目)、実践女子学園(東1丁目)、東京女学館(広尾3丁目)、聖心女子大学(広尾4丁目)など数多くの教育機関が置かれている。

近年、定期借地権マンション建設が多いエリア

 広尾2丁目の第一種低層住居専用地域でNTT都市開発が手がけ、2019年11月に竣工したばかりの旧法借地権付き(2048年まで・借地契約更新可)3階建て全12戸の低層マンション「アッシュダール広尾」は、平均専有面積180平方メートルで、全戸に専用駐車場が付く(月額使用料別途必要)という好条件。最終分譲価格は2億2000万円台という億ションとなっている。

 また、過去話題になったマンションとして、「プラウド南麻布」や「広尾ガーデンフォレスト」が挙げられる。いずれも定期借地権付きのマンションだった。

 前者「プラウド南麻布」は、なんとフランス大使館の定期借地マンションで、大使公邸の日本庭園を借景とする。港区南麻布4丁目、東京メトロ広尾駅徒歩7分の閑静な邸宅街に2017年7月に竣工。7階建、総戸数88戸の野村不動産分譲、竹中工務店施工のマンションだ。分譲時の間取りは2LDK~3LDKで変形した土地に沿う形でプランニングされたので、多様な住戸タイプがある。また、コンシェルジュカウンター、ゲストルーム、ラウンジ、パーティルーム、トレーニングジムなどの共用施設も充実している。このマンションは、その立地特性から購入者の身元確認などが行なわれたという話もあり、中古になった今でも人気のマンションだ。分譲後も価格は上昇している。

 一方、後者の「広尾ガーデンフォレスト」は、渋谷区広尾4丁目で日本赤十字社広尾地区再整備事業の一環として始まった大規模プロジェクトの後を受けた、三菱地所が取り扱った日赤の定期借地権付きマンションだ。広尾ガーデンヒルズと日本赤十字社医療センターに囲まれた、広尾の高台に立地する緑に囲まれた住環境に建つ。建物はA棟からH棟までの複数存在し、総戸数674戸。業務棟には郵便局もある。隣のヒルズの敷地にはスーパーマーケットのAZABU NATIONALや銀行、広尾ガーデンヒルズクリニックも配された。

 広尾駅の近隣には大使館も多く国際色豊かな街で、人気が高い。輸入食品スーパーの明治屋など、広尾商店街には洗練されたショップやレストランが数多く存在する。広尾駅から徒歩3分のところには自然に溢れる有栖川宮記念公園も。快適なライフステージを実感させてくれる街だ。

吉田 恒道

Yoshida Tsunemichi

大学卒業後、ファッション専門誌の編集者を皮切りに、音楽誌、自動車専門誌などの編集者を歴任。その後、複数のライフスタイル誌の編集長を経てフリーに。著書に「シングルモルトの愉しみ方」(学習研究社)がある。

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