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  • 2020.07.30
NO.320
東京都品川区「武蔵小山」の特徴

これからが再開発本番、山手線目黒駅まで3分の都心に残る最後の至便な住宅地

東京都品川区「武蔵小山」の特徴とマンション

 東急電鉄の武蔵小山駅は品川区小山3丁目にある。ふた駅わずか約3分都心に向かった目黒駅でJR東日本の山手線に接続、そのまま目黒線は東京メトロ南北線~埼玉高速鉄道、都営地下鉄三田線に乗り入れる。東横線への乗り換えも簡単だ。

 地名の由来は、近隣に建立されていた小山八幡神社にちなんで「小山」になった説と、この一帯が標高30mほどの小高い山であることに由来するとする説がある。そのため武蔵小山駅の開業当時、1923年(大正12年)の駅名は「小山駅」だった。が、栃木県小山市の東北本線に、同じ表記の小山駅(おやまえき)が設置されていた。そのため翌年には、かつての国名「武蔵」を冠した現在の駅名「武蔵小山駅」となった。

目黒線地下化が終了して地上の再開発始まる

 その武蔵小山駅は2006年に目蒲線⇒目黒線・多摩川線改変に伴った連続立体工事で地下化工事が進み、2006年に地下駅化されており、おおむね駅の西口側が目黒区、東口サイドが品川区となっている。駅周辺の町丁は、品川区の「小山」「小山台」「荏原」「西五反田」「平塚」、目黒区の「目黒本町」「下目黒」で構成される。

 駅直結の地上部分には駅ビルSC「エトモ武蔵小山」が2010年に開業、2017年にリニューアルオープン。出勤時・帰宅時に気軽に立ち寄れる利便性高いショッピングセンターだ。深夜25時まで営業の食品スーパー「東急ストア」、3階にはフィットネスクラブ「アトリオドゥーエ武蔵小山」のほか、コンビニエンスストアやカフェ、スイーツ&ベーカリー、MUJIなどの雑貨店などで賑わう。

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地域を代表する商店街「パルム」

 それら町丁には概ね5つの大きな武蔵小山商店街、一番通り商店街、親友会通り商店会、後地商店会、平和通り商店街がある。
 なかでも駅東口からすぐの武蔵小山商店街「パルム」は、振興組合事務局によれば、完成当時「東洋一」と称された。駅前から中原街道まで至る800mにおよぶ全天候型開閉式アーケード街に約250の商店が軒を連ねる(http://www.musashikoyama-palm.com)。
 専用の24時間駐車場も備え、その駐車場には電気自動車やプラグインハイブリッド車のための充電ステーションも設置されている。

小山3丁目エリアが大きく変わる

 東京都都市整備局が昨年3月に公開した決定事項として、「武蔵小山駅前通り地区第一種市街地再開発事業」を発表した。これによれば、武蔵小山駅に近接した品川区小山3丁目地内の約0.7ヘクタールの住宅地と商業地が混在した密集市街地において、街区の再編リニューアルと大規模な共同化により、土地の高度利用を実施。商業の賑わいと都市住居複合型の魅力ある市街地を整備し地域拠点の形成を図る、としている。建設中で2021年6月完成予定の事業で、そのなかで目立った建物が、建築中ながらすでに建ち上がっている地上41階建てのタワーマンション「シティタワー武蔵小山」と低層のレジデンス棟だ。総戸数は合わせて506戸と表示されているが、住宅部分の一部と商業施設については分譲対象外だ。

 同じように武蔵小山駅周辺の武蔵小山商店街「パルム」の駅からもっとも近いエリアを竣工済みの「武蔵小山駅前パルム地区」がある。そこでのメインとなるのが、41階建て、総戸数628戸のタワーマンション「パークシティ武蔵小山ザタワー」だ。
 商店街を囲む再開発として「小山3丁目第1地区」、そこに南東で接続する「第2地区」では、これからリニューアルの本番を迎える。

 駅前で再開発建設が進められているが、まだその全体像はイメージしにくい。が、完成後には新たな商業施設がオープンし、マンションには新たな住民が増え、人の流れも変わることが予想される。いずれにしても都市型住居と商業施設が融合した街で、賑わいが増すことには間違いがなさそうだ。

駅北側に残された貴重な緑地

 いっぽう、かつて東急線の線路で隔絶されていた駅の北西側、つまり目黒区エリアは、これまで区画整理すら進まないうえ、林業試験場があるため開発が進まなかった。
 ところが、東急目黒線の不動前駅以降の地下化や、近年進められた区画整理によって、山手通りから小山台地区を抜けて26号線通りに貫通するかむろ坂通りが開通し、周辺の住宅地の利便性がずいぶんと向上した。

 また、1900年(明治33年)に設置された4.5万坪におよぶ広大な「目黒試験苗圃」、後の「林業試験場」は、隔絶された環境のなかで明治から昭和にかけて多くの研究所が置かれていたという。戦後になっても、北里研究所目黒支所、津村研究所、国立予防衛生研究所など、18の研究所が置かれていた。1978年、試験場はつくば市に移転し、跡地は東京都に払い下げられて公園として整備し、1989年に「都立・林試の森公園」として開園した。開園時の面積は約3.6万坪だ。
 武蔵小山駅から北へ徒歩約10分の園内には、林業試験場として隔絶した環境が幸いし、当時の樹木がそのまま残されており、都内でも屈指のケヤキやクスノキ、ポプラやスズカケの木などの旧い巨木があることで知られる。園内でもっとも太いとされるのは幹の周囲寸法が3.82mのケヤキの古木で、もっとも高い木は、高さが35.5mのポプラだという。
 都内では稀な大木が繁る森林のなかに、芝生広場、デイキャンプ施設、夏期に子供が水遊びできるじゃぶじゃぶ池、野球やサッカーの練習ができるグランドも整備されている。週末などは朝早くからジョギング、ウォーキング、体操などを愉しむ人が多い。

吉田 恒道

Yoshida Tsunemichi

大学卒業後、ファッション専門誌の編集者を皮切りに、音楽誌、自動車専門誌などの編集者を歴任。その後、複数のライフスタイル誌の編集長を経てフリーに。著書に「シングルモルトの愉しみ方」(学習研究社)がある。

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