住まいサーフィンレポート2021年秋-冬期 住宅評論家 櫻井幸雄が見たマンション市況&狙い目新築マンション

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首都圏マンション価格が過去最高を記録。この状況で求められるのはマンションを選ぶ力

住宅評論家 櫻井幸雄

 10月、不動産経済研究所の「2021年度上半期(4月〜9月)の首都圏新築マンション価格」で、1戸あたりの平均価格が6702万円になったことが発表された。

 神奈川、埼玉、千葉を含めた首都圏の平均価格が7000万円近いわけだ。

 1973年に同社の調査が始まって以来、上半期として最高額だという。

 これまでの最高額はバブル期の1991年に記録した6137万円だった。それに比べて1割近く上昇……ということになるのだが、だからといって、「バブル期より、ひどい状況」ということではない。

 なにしろ、バブル期は30年も前の話。2000CCクラスの国産新車が200万円前後だった時代だ。今は軽自動車でも新車価格は200万円前後する。2000CCの新車を買おうとすれば、300万円の予算は覚悟しておかなければならない。

 もちろん、牛丼のように、この30年ほとんど価格が変わっていないものもある。しかし、車やスマホのように世界相場の影響を受ける商品は確実に値上がりしている。

 住宅のなかでも、都心マンションは外国人の購入者が多いために、世界相場の影響を顕著に受ける。世界的に不動産価格が上がる中、日本のマンションだけ「価格据え置き」にはできないのだ。

 同時に、住宅ローンの金利もマンション価格に影響を及ぼす。バブル期は、住宅ローンの金利が3%台だった。それに対して、現在は1%以下。金利が低ければ、マンション価格は上がりやすい。

 以上2つの理由で、マンションの平均価格が上がったと考えられる。

 なかでも、都心マンションが首都圏全体のマンション平均価格を引き上げたのは、否定できない。が、それだけで、首都圏のマンション平均価格が大きく上がったわけではない。都心部とともに、郊外部でもマンション価格が上がらなければ平均価格の上昇は起きないからだ。

郊外部で姿を消した3000万円台3LDK

 思い返せば、バブル期も首都圏全域でマンション価格が上がった。

 都心部では、5億円、6億円の新築マンションが出た。が、その数は多くはなかった。

 当時、高値で売買されたマンションは中古物件が主体で、新築の都心マンションは控えめだった。

 というのも、当時、新築マンションの主戦場は郊外に移っており、多摩ニュータウンでも、千葉ニュータウンでも新築3LDKが5000万円以上になっていた。

 3000万円台、4000万円台のマンションを探したかったら、千葉県の成田市や茂原市、勝浦市に行かなければならなかった。

 つまり、首都圏全体の平均価格が上がるためには、郊外部でも住宅価格が上がる必要があったわけだ。

 2021年、首都圏の新築マンション平均価格が過去最高水準まで上がったことが明らかにされた。その理由として、都心の超高層マンション価格が上がったことに目を向ける人は多い。

 しかし、山手線内側で、そんなに大量の超高層マンションが発売されたという事実はない。23区内の山手線外側エリアであれば、駅近の再開発物件が少なからずあるので、江戸川区、江東区、墨田区、北区などを都心と呼ぶのであれば、「都心マンションによって、価格上昇が起きた」といえそうだ。

 しかし、平均価格が過去最高水準まで上がったとなると、23区内物件だけではパワーが足りない。

 郊外マンションの価格上昇も必要。そして、実際に、郊外マンションは価格が上がっている。昨年までは目にすることが多かった「3000万円台3LDK」がいつの間にか姿を消し、4000万円台と5000万円台の3LDKが郊外マンションの主流になっている。

 結局、準都心部と郊外部の価格上昇により、首都圏の平均価格が上がった、というのが正確なところだろう。

 準都心でも、郊外部でも、人気が高いのは駅に近いマンション。コロナ禍で最初の緊急事態宣言が出た頃は、郊外で、駅から遠いマンションも注目度を上げた。しかし、テレワークの広がりは限定的だとわかった現在、駅に近いマンションの人気が再び上昇している。

 郊外でも駅に近ければ、当然、分譲価格も高くなる。駅近・高額マンションが増えれば、平均価格は上がってしまう。

 これも、首都圏のマンション平均価格が上昇した理由とみるべきだろう。

 今後、価格上昇の波は、首都圏以外にも広まるだろう。

 このような価格上昇期は、首都圏でも近畿圏でも物件を見極める目が必要。今でも残っている割安物件を探し出すことが大切になってくるのである。

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実際に販売センターを見て回り、マンションの「今」情報を提供。
年間200件以上のマンション、建売住宅を見て回る住宅ジャーナリスト櫻井幸雄。実際に歩き、目で見て、耳で聞き集めた情報には、数字の解析だけでは分からない「生々しさ」があふれている。
この新鮮情報を「住まいサーフィン・レポート」としてまとめて主要マスコミに配布。あわせて、住まいサーフィン上でも公開する。住まいサーフィン上ではレポートとともに、旬の狙い目である新築マンションも紹介。マンション購入のアドバイスとする。

住宅ジャーナリスト櫻井幸雄の経歴

櫻井幸雄の顔写真

1954年生まれ。1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。
以後、「マンション管理基本の基本」(宝島社新書)、「妻と夫のマンション学」(週刊住宅新聞社)、「儲かるリフォーム」(小学館)などを出版。
最新刊は「知らなきゃ損する!21世紀マンションの新常識」(講談社刊)。
テレビ朝日「スーパーモーニング」の人気コーナー「不公平公務員宿舎シリーズ」で住宅鑑定人としてレギュラー出演するほか、「毎日新聞」で、住宅コラムを連載中。「週刊ダイヤモンド」「週刊文春」でも定期的に住宅記事を執筆している。

オフィシャルサイト
http://www.sakurai-yukio.com