東京都港区の特徴
― ニッポンの自治体 ―
旧芝区、麻布区、赤坂区が統合し誕生、都心3区で住民が最も多い超高級住宅地
東京・港区は中央区、千代田区と並び都心3区を形成する。北は青山、赤坂、六本木の高台から南は東京湾に面する湾岸エリアにつながり、東京23区のなかで最も起伏に富んだ地形が特徴だ。区域は芝、麻布、赤坂、高輪、芝浦・港南地区の5つのエリアに大きく分けられる。ピンポイントの地名を示しても、先に述べた青山、赤坂、六本木、高輪、麻布などのほか、三田、神谷町、広尾、新橋、虎ノ門、汐留、台場など誰でも知っている街がゾロゾロ。
東京都のほぼ南東部に位置して、東は東京湾に面し、その北端でわずかに中央区に接し、北は千代田区と新宿区に、西は渋谷区、南は品川区、東は江東区に接している。東西6.6km、南北6.5km、総面積は20.37平方キロメートルである。
東京・港区のマンション
2018年、港区で販売された新築マンションは1917戸。販売価格は9505万円~2億5308万円だった。中古物件の人気も非常に高く、相場は4550万円~1億9040万円で高値安定している。なかでも台場や海岸など湾岸エリアでは超高層タワーマンションの建設ラッシュが続いている。
同区の人口の推移を概観すると、1980年代初頭まで、ほぼ20万人で横ばい状況が続いたが、1984年から減少傾向に転じ、1995年11月に、15万人を割り込んだ。しかし、その後の台場など臨海都心などの開発によって、1997年に増加に転じた。2009年5月に20万人台を回復した。現在も増加傾向にある。2019年9月現在、港区の総人口は中央・千代田都心3区で最も多い25万9942人で、うち2万265人が外国人だ。総世帯数は14万7673世帯である。
新橋・虎ノ門・神谷町などの高度ビジネス街や六本木ヒルズ・東京ミッドタウン、赤坂サカスが建つ商業エリアでもある。赤坂・青山地区など海外有力企業の日本支社が集積する同区の特徴が、約8%を占める外国人居住者の数に表れている。この外国人の割合は新宿区に次ぐ。ただし、新宿区の外国人がアジア人中心であるのに対し、港区は欧米系人種が中心だ。23区に住む北米人の28%、欧州人の20%が港区に集中しているのだ。同時に、アメリカ大使館やロシア大使館、フランス大使館やドイツ大使館をはじめとして、大使館専用の集合オフィスビルなど、世界70カ国以上の大使館・領事館が港区内に存在する。
また、同区内には大企業や外資系企業の本社から、ベンチャー企業に至るまで多数の企業の本社や日本支店が存在する。六本木ヒルズや東京ミッドタウンなど多数の複合商業施設も立地する。港区は、日本でもっとも外資系企業が多いエリアでもある。
また、納税義務者ひとり当たりの課税対象所得額全国ベスト5のうち4位までが東京23区だ。唯一、兵庫県芦屋市が645万円で5位。次いで、4位が目黒区の680万円、3位が渋谷区の764万円、2位が千代田区の899万円、そして1位が港区だ。その所得額、実に1127万円で、唯一1000万円を突破している。港区は、お金持ちが多い東京のなかでもズバ抜けている。
なお、港区に限らず都心区の平均所得は、2000年頃を境に上昇した。それは、都心回帰というライフスタイルを指向しはじめた時期と一致する。地価の高い都心に家を持つことができる高額所得者の流入を促進したのである。
東京港区のなりたち
東京都港区は、先の大戦後、全国的な民主化の気運が東京都の運営にも波及し、都制改革による区の自治権確立の動きが活発化。同時に戦争の影響から財政的に自治団体としての存続が困難と思われる区が現れた。そのため東京都は、区の自治権の基盤強化と戦後復興を目的として区域の再編成を実施。1957年(昭和22年)3月15日、旧・芝区、麻布区、赤坂区の3区が統合され、港区が誕生した。
個性的な名前の「坂」が23区中でもっとも多い
こうした起伏のある地形から、「綱坂」「綱の手引き坂」ように伝説に裏打ちされた個性的な名前が付いた坂や、「潮見坂」「富士見坂」などのように景観にちなんだ坂、「氷川坂」「鳥居坂」などのように坂にあった寺社や大名屋敷から名がついた坂が多い街並みも港区の個性といえる。同区で名前の付いた坂は90余りで、23区で最多だという。
こうした伝統的な坂の上に建設される高級マンションは、低層型マンションでも湾岸エリアのタワーマンションよりも標高が高く、借景に恵まれている。
また、港区には古くから重要なふたつの街道が走っている。ひとつは新橋から芝を通り高輪に抜ける第一京浜国道(国道15号)で、江戸時代からもっとも重要な街道のひとつとされる東海道だ。高輪には江戸の街の玄関である大木戸跡の石塁が残されている。
もうひとつの街道は、赤坂見附から青山、表参道交差点を通り渋谷に抜ける青山通り(国道246号)である。古くは厚木街道(大山道)と呼ばれ、江戸と相模を結ぶ重要な街道だ。この街道の両側には、徳川家康の重臣であった青山家の広大な屋敷が広がっていた。
山手線30番目の新駅誕生で進む大規模再開発
また、2014年6月にJR東日本が、噂になっていた山手線30番目の新駅構想を正式に発表した。各メディアが大きく取り上げた新駅は、2017年2月に起工式を執り行ない、2020年暫定開業を目指し、山手線の「田町」駅と「品川」駅の中間、港区港南2丁目に建設されている。新駅の名前は一般公募で決まる予定だったが、1位の「高輪」を排除し、なぜか130位の「高輪ゲートウェイ」となった。2018年12月の決定後に駅名に反対する著名人など5万人弱の署名を集めた駅名撤回要望書をJR東日本に提出している。
新駅舎は鉄骨造で地下1階、地上3階建て。高さ約30mとなる。新国立競技場の設計を手がけた建築家の隈研吾氏が担当し、折り紙のような大屋根などで日本建築の魅力を発信する。
同時に新駅と合わせて駅周辺のおよそ13ヘクタールという広大な敷地で大規模な駅前開発も進行する。再開発名は、「グローバルゲートウェイ品川」。新駅周辺地区は都市再生機構(UR)が国際ビジネス交流拠点として一大開発を行なう。新しい巨大な街が出来上がるというわけだ。構想では大規模タワーマンションが3棟、5棟がオフィスと商業の複合ビル・ホテルの予定で、オフィスビルには海外企業を積極的に誘致する。
港区は、ビジネス街区、居住街区ともに外国人が増えて、ますますグローバルな街並みに進化していく。
著:吉田 恒道(公開日:2020.01.24)
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