田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第199号]買って良い「築古マンション」の見分け方

2023年09月13日

築年数の古いマンション。買うべきか見送るべきか、迷う人は多い。よくわからないから古いのはやめて新しい物件を買おうという方もいるが、築年数が古いというだけで選択肢から外すのは勿体無い。以下では、買っても良い築古マンションの見つけ方を簡単に紹介したい。またわかりやすいように「築古マンション」と書いたが、決していい語感ではないので以降「高経年マンション」と記す。

建物は大丈夫か?~リノベーション再販物件が多い物件を選ぶ

高経年マンションを心配する人の多くは、建物の寿命を気にしている。マンションが建て替えをする理由の多くは、コンクリートや鉄骨の寿命ではなく、設備等の寿命によるところが多い。配管がコンクリートに埋め込まれていて更新が難しかったり、全館空調システムが採用されており修理・復旧に高いコストがかかったりといった問題が積み重なり、快適な暮らしが維持できずに建て替えに至る。そのような物件はできれば避けた方が無難だ。

躯体に問題がない、もしくは、少ない物件を見分ける方法は、リノベーション済みの物件が販売されているかどうかを見れば良い。リノベ物件が売り出されている物件は、買取再販事業者がリノベ工事に適しているとして選んだ物件だ。

リノベができる物件は建物を長持ちさせることができ経済的な負担が少なく、また、新たな所有者・居住者を呼び込むことができるため、その資産価値が下がりにくい。高経年マンションを選ぶポイントはまず第一に、リノベができるかどうかにかかるといっても良い。

管理は大丈夫か?~理事会が活発に機能している物件を選ぶ

とはいえ、いずれ行わなければならない大規模修繕や建替え。そのための修繕積立金がきちんと積み立てられているかどうかは、高経年マンション選びにとって大切なポイント。戸数規模に見合った金銭が積み立てられているかは必ずチェックしたい。

しかしいくらお金があっても実際に大規模修繕や建て替えを進めるには、管理組合の合意形成が必要。そのためには管理組合がしっかりと機能しているかどうかが大切だ。高経年マンションは「マンション全体の合意形成が取りやすい」物件を選びたい。

チェックポイントとして、理事会の回数や理事の出席率、総会の議題の内容、管理規約の改正の頻度などがある。これらを見ることで、管理組合が機能しているか、形骸化しているかが判別できる。十分に機能している管理組合なら購入の検討に値するが、管理規約が分譲時からほぼ変わっておらずに薄っぺらいままのようなマンションは、建物について真剣に話し合いがなされていないと見て敬遠した方が良い。

立地は大丈夫か?~住宅地として需要の高い立地を選ぶ

極論、立地さえ良ければその高経年マンションは買いだ。逆をいうと、いくら管理が良くても立地の悪いマンションはあまりお勧めできない。

築年数が古くなれば、いずれ建替えの話が持ち上がる。その際に立地が良い、言い換えれば土地価格が高いエリアの高経年マンションは、建替事業をしても収支が合う(利益が見込める)ので、建替コンサル・マンションデベロッパー・ゼネコンなどの専門家が建替事業を業務として請け負ってくれる可能性が高い。仕事のタネとして放っておかない。実際のところ建替えを管理組合のみで行うことは不可能に近い。権利調整からプランニングやゼネコン選定等々、進んで受けてくれる事業者が見込めれば、スムーズに事が運ぶ可能性が高い。

逆に土地価格の安い郊外エリア・バス便エリアは新築需要も見込めず、専門家にとっては業務として妙味が少ない。そのような場所は土地価格も安く土地を手当てしやすいことが多いため、住民の合意形成に手間や時間をかけて既存建物を解体し建て直すよりも、新築する方が経済合理性が高くなるからだ。よってマンションは専門家にお願いする立場となる。

同じなら立地の良い場所で、建替えの目処が立ちやすい物件を選びたい。

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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