田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第210号]欲しいと思った時が買い時~バブル期との嗜好の変化

2024年02月28日

日経平均株価が過去最高値を更新した。

2月22日東京株式市場の日経平均株価は、3万9098円まで記録。平成元年12月29日につけた3万8957円を超えた。34年ぶりの高値更新だ。

ようやくこの壁を超えた、さあこれからだ!というポジティブ派もいれば、「これはバブルだ」「当時よりも状況は悪い、全くダメだ」と言うネガティブ派もいる。どちらが正しいのかは意見が分かれるであろうが、この34年間、諸外国が(少なくとも日本よりは)大きく経済的成長を遂げている中、「3分の1世紀」前の数字を引っ張り出してきて大騒ぎしているのは、脳天気な話かとは思う。とはいえ、壁を超えたという意味では転機であることには違いない。

世の中の好景気不景気は株価だけではない。株価がバブル時に戻ったと言っても、今がバブル時のような好況感かといえば全くそんなことはない。金利や為替の水準も当時とは異なる。バブル時の金利は定期預金金利が約6%。今は四捨五入すれば0%。為替については、どちらも1ドル140~150円程度で大きな差はないが、バブル時は1980年代前半の1ドル200円超から1ドル100円切りの歴史的な円高へと移行する途中であったのに対し、現在は更に円安になるのではとの懸念が多い。

我々を取り巻く生活環境も当時とは全く異なる。

バブル時、インターネットはほぼ普及していなかった。スマホはおろか携帯も普及していなかった。ましてやSNSなんてなかった。ネット・スマホ・SNS、どれもない時代。今の30代半ばまでの人からすれば、それで生活が成り立っていたのか疑われるだろう。当時を知る筆者ですらネット・スマホ・SNSのなかった時代にはもう戻れないし、どうやって暮らしていたのかもよく覚えていない。戦争の前後で価値観が全く変わってしまったのならともかく、たったの30年という短いスパンでこれほどまでに世の中って変わるのかという思いだ。

大きく変化したのは不動産業界もだ。当時は普通に大手でも行われていた電柱への巻き看板や立て看板の道路上への不法設置。夜討ち朝駆けでのお客様宅の訪問。このような営業スタイル、全てなくなったわけではないだろうが、まともな事業者ではもう行われていない。

また、お客様の嗜好もバブル時から現在までに大きく変化している。

今人気の高い場所、都心タワーマンションだ。いや、世の中色々なので山奥のペンション、ビーチ沿いの一軒家なんて人もいるだろうが、都心タワーマンションは供給戸数が多く、金額も高い。典型的な「人気の不動産」となると、多少陰りが見えていたとしても、やはり都心のタワーマンションだ。

都心のタワーマンションの魅力はその利便性。例えば、関西で象徴的なのはグランフロント界隈にあるタワーマンション。最寄駅はJR大阪。周辺のマンションも阪急や地下鉄の各線「梅田」駅徒歩。濡れずに駅まで移動できる。本町や北浜、堺筋本町等には駅直結マンションもありその人気は高い。梅田以外にはその隣接エリアの中津や福島。他にも、難波、三ノ宮等の繁華街、宝塚、高槻等のベッドタウンにもタワーマンションは存在し人気が高い。京都市内には高さ規制の関係でタワーマンションは存在しないが、お隣の滋賀県草津市にはタワーマンションが林立する。どのタワーマンションも駅に近く、買い物施設が充実している。

駅に近くて、買い物利便。人気高いの当たり前ではないか?という話だが、バブル時はそれが、当たり前ではなかった。1986年の「憧れの住宅」は「坂を上った先にある閑静な住宅街の一戸建て」だった。「坂を上った先」なのは、西宮~神戸や茨木~高槻、箕面~川西といった北摂阪神間にある住宅地が坂の上にあったからだ。また、駅に近い場所は商業エリアが多く買い物施設が充実した喧騒な街並みであったのに対して、駅から離れた住宅街はコンビニ等もほぼなかった当時は買い物施設がほぼなく「閑静な住宅街」であった。そして駅前の便利な土地にファミリー層の需要はなく、多くの人が閑静な住宅地を夢見た。そこに建つのはもちろん「一戸建て」。

これは今と真逆だ。坂を上った先、ではなく、フラットアクセス。閑静な住宅地、ではなく、賑やかな商業地。そして一戸建てではなくマンション。見事に志向が変わった。

「不動産は欲しいと思った時が買い時」。営業トークに思われがちだが、実は真実を突いた言葉。3年先の市況を読むことも難しいのが不動産の世界で、10年後20年後のことなんてわからない。人口動態のようなほぼハズレのない将来予測を押さえておけば、今、市場で「お買い得」と思う物件、今、自分にベストな不動産を選ぶ。それが最適な選択といえる。

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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