●●●「東日本大震災」から10年の節目
今から10年前の、2011年3月11日に、「東日本大震災」が発生しました。マグニチュードは実に「9.0」。1995年1月17日に発生した、「阪神・淡路大震災」で記録されたマグニチュード「7.3」の約178倍という、とんでもない大地震でした。
「東日本大震災」による被害を列記しておきましょう。
❶沿岸部に押し寄せた大津波によって、東北地方を中心に実に1万5000人以上が死亡した。
❷同じく大津波によって、東京電力福島第一原子力発電所の炉心が溶融(メルトダウン)し、大量の放射性物質が漏洩した。
❸首都圏を中心に、大量の帰宅困難者が発生した。
「東日本大震災」の当日、大地震の発生を知ってテレビを見ると、岩手県、宮城県、福島県などの沿岸部が、次々に大津波に襲われていました。しかしながら、津波が押し寄せて来るにもかかわらず、ただ立ち続けている人達や、建物の屋上から海を眺める人達が大勢いました。
私は津波の被害が多い岩手県の出身です。それゆえに、家庭でも学校でも、「地震、津波、すぐ逃げろ」と教えられて育ちました。
しかしテレビには、大勢の人が逃げようとせずに、やがて津波に飲み込まれていく姿が映し出されていました。余りの恐怖に、足がすくんで、動けなくなったのでしょうか・・・。
後で分かったことですが、私が中学生だった時に住んでいた釜石市の木造住宅も、津波で流されてしまいました。
●●●「奏の杜マンション群」で防災訓練を実施
2021年3月14日、千葉県習志野市「奏の杜(かなでのもり)エリア」で、約2300世帯を対象にした「参加型防災訓練」が実施されました。
「奏の杜エリア」の説明図(画像は全て三菱地所レジデンスの提供)
主催者
「マンションデベロッパー・三菱地所レジデンス」
「マンション管理会社・三菱地所コミュニティ」
「エリアマネジメント組織・奏の杜パートナーズ」
参加型防災訓練の目的──。東日本大震災から10年。三菱地所レジデンスは被災された方々から、「ご近所同士で被災生活を乗り越えた」事例や、「被災生活で不可欠となる情報収集に、人との繋がりが必要だった」という体験談を聞きました。
そこで街全体で繋がることが重要と考え、災害時に助け合うことを目指して、津田沼「奏の杜」エリアにおいて毎年防災訓練のサポートをしています。
新型コロナウイルス感染拡大により、広域で人が集まるイベントが中止とされることも多い中、今回はオンラインを活用することで、大規模な地域の防災訓練をコロナ禍でも継続して実施することができました──。
●●●オンライン訓練の特徴
【ライブ配信】
安否確認訓練に際し、「災害対策本部」の活動をライブ配信することで、住民が普段見ることができない、運営側の動きを知ることができる。
【参加型訓練】
「自宅での備え・共助」をテーマとしたワークショップでは、「対話」「アンケート機能」を活用することにより、参加者の現状を把握しながら必要な情報を届ける。
【自宅からの参加】
居住者が自らの備えを紹介するワークショップでは、参加者も自宅の備えを確認することができる。
オンライン形式の防災訓練には大勢の人が参加しました
●●●防災訓練の内容
❶8時45分 「オンラインプログラム1」
「安否確認訓練」および「防災倉庫・地域の防災施設」を中継
安否確認シートを住戸ごとの扉に貼り出し、あらかじめ定めた担当者が巡回して、安否確認情報を収集します。その際「災害対策本部」の活動をライブ配信することで、普段住民が見ることができない運営側の動きを知ることができるようにしました。
また、マンション内の防災倉庫の備品紹介や、階段避難車の実際の様子を配信しました。さらに、谷津奏の杜公園にある「地域の防災倉庫」「防災井戸」「かまどベンチ」なども紹介しました。
❷10時「オンラインプログラム2」
家族で学ぶ備蓄と共助
三菱地所グループが開発した防災ツールである、「そなえるカルタ」「そなえるドリル」を活用。東日本大震災の体験談から学んだ、「自宅の備え」や「共助の大切さ」を考えました。
❸11時「オンラインプログラム3」
実演・普段使で備蓄!!
マンション居住者の自宅から、「自宅での備え」を紹介しました。参加者は新たな備蓄の準備など、具体的な行動につながるきっかけを得ることができました。
「車椅子に乗った人」が階段を降りる避難訓練の最中
●●●参加者のコメント
❶ 5人家族なので、準備していたトイレが圧倒的に足りないことがわかりました。
トイレ、大事ですね。数を見直します。
❷両親の薬も把握しておく必要があると思いました。 大変勉強になりました。
早速備蓄品を見直し、足りないものを補充したいと思います。
❸ソーラー充電器いいですね。早速ゲットしたいです。
居住者の備蓄の紹介を聞いて、少し多めに缶詰類を増やしたいです。
❹今日のお昼は、ご飯をコンロで炊いてみたいと思います。
今までほとんど考えていなかったため、大変勉強になりました。
❺できるところから行動に移します。
今後は知り合いを増やしていきたいです。
❻コロナが収束しても、オンライン防災訓練を続けていただきたいです。
参加型のオンライン訓練で良かったです。
夫婦で話合う良い機会になりました。
細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。
建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。
著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。