田中和彦が斬る!関西マンション事情不定期

[第123号]必ずしておきたい、水害への備え

2020年07月10日

田中 和彦 ( たなか かずひこ )

しとしとジメジメ、何かと鬱陶しい梅雨。……カタツムリのイラストが似合う様な穏やかな雨ならいいのだが、今年の梅雨は忌まわしい。九州から本州へと日本列島を西から東に豪雨が襲い、甚大な被害を各地に与えている。この豪雨による死者は原稿執筆時点で65人。うち59人は熊本県となっている。国はこの豪雨を激甚災害に指定する考えだそうだ。

過去にも多くの水害があったが、近年水害が増えている様に感じる人も多いであろう。西日本に被害を与えた水害のうち、筆者の印象に残っているものを以下にあげてみた。

 

■平成16年台風23号(2004年)
死者・行方不明者98人、浸水家屋は50,000棟以上。
由良川の増水で立往生したバスの屋根に上がった乗客の映像は、今も頭に残っている人が多いであろう。

■神戸市・都賀川水難事故(2008年)
神戸市灘区の市街地を流れる都賀川が上流のゲリラ豪雨で短時間で水位が急上昇し、川遊びをしていた児童等5人が死亡。

■平成23年台風12号・紀伊半島豪雨(2011年)
和歌山県を中心に全国で死者・行方不明者98人、損壊・浸水家屋26,000棟以上。
紀伊半島では1週間で総雨量2,000mm近い大雨となった。これは年間降雨量の半分超。

■京都府南部豪雨(2012年)
宇治市・八幡市・城陽市などで猛烈な雨量を観測。宇治市で河川の増水により住宅が流出して1人が死亡。京都府だけでも住宅3,000棟以上が浸水・損壊した。

■平成25年台風18号・初の特別警報発表(2013年)
全国で死者・行方不明者8人、浸水・損壊家屋5,800棟以上の被害。同年に運用が始まった「特別警報」の初めての発表事例となった。

■平成26年8月豪雨(2014年)
7月30日から8月26日にかけて、西日本から東日本を中心に広い範囲で大雨により被害が発生した一連の大雨災害。広島市安佐南区・安佐北区で土砂災害が発生し、77人が死亡した。

■平成30年7月豪雨(西日本豪雨)(2018年)
損壊・浸水家屋を合わせて50,000棟近くの住家被害、死者・行方不明者は245人。死亡した岡山県倉敷市真備町の小田川流域では、ハザードマップに図示されていた洪水浸水想定区域とほぼ同じエリアが浸水し、51人が死亡した。

■平成30年台風21号(2018年)
関西空港連絡橋にフェリーが衝突、空港が孤立状態となったあの台風。最大瞬間風速58.1m/sを観測するなど、50m/sを超えたところがあり、大阪府など関西電力管内で延べ220万軒が停電、家屋損壊は90,000軒を超えた。

 

どれも発生当時は大きくニュースで取り上げられた災害だが、これほど多くあるとどうしても一つ一つの印象が弱まってしまう。筆者もネット等で調べて書いているうちに記憶が蘇ってきた、という感じだ。

水害以外で人命を奪う様な自然災害といえば真っ先に思いつくのが地震だ。阪神大震災、東日本大震災ではそれぞれ多くの命が奪われた。「地震・雷・火事・親父」などという言葉がある。恐ろしいものの筆頭に挙げられているのは地震だが、地震が怖いのは「いつ起こるか分からない」「どこで起こるか分からない」「発生したら逃げようがない」といった理由がある。

しかし水害は地震とは違い、発生までにある程度時間があり、地震よりも逃げやすい。しかし一番大きな違いは「どこで起きるかが予測できる」ということだ。

地震は、活断層マップなどで備えることはできるといっても、建物の構造や向きや揺れ方等様々な要因が絡み合うため「これは危険」「これは安全」と事前に判断することは難しい。それに比べ、水害に関するハザードマップの災害推定地域はかなり正確だ。高台に住めば水害に遭うこともなく、災害区域に住んでいても避難が可能だ。水害に関しては「備えあれば憂いなし」が実践しやすい。

梅雨が終わっても夏、秋には台風のシーズンが来る。水害は地震と違い「一度大きな災害が起きたから次は別の場所」とはならない。今住んでいる場所がどの様な場所なのかをハザードマップで確認することはもちろん、避難場所の確認や場合によっては住まい替えも含めて平時にシミュレーションをしておくべきだ。

ここ最近の自然災害を見ていると「天災は忘れたころにやってくる」と悠長に構えてはいられない。

 

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。