田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第163号]ウクライナ侵攻によるマンション市場への影響は?

2022年03月09日

ロシアがウクライナに侵攻した。ここで政治的な話をすることは場違いであるし、そもそもそんな知識も持ち合わせていない。ただ、このような事態になって不動産がどう動くかについては仕事柄質問を受けることも多いし、考えることも多い。非常に簡単ではあるが、今回の事態でマンション市場がどう動くか考察してみたい。

 

結論を先に言えば、都心のマンション市場にとって今回の事態は短期的にはプラス要因だといえる。理由は以下の通り。

1、戦時下では現物が強い
戦時下では食糧・原油・金などの現物資産が強くなる。これは戦時下はインフレが起きやすく、インフレが起きるとお金の値打ちが下がり、相対的に現金が目減りするから。多額の現金を持つものは資産をモノへ変えようとし、不動産を含む現物資産の価格は強含みとなる。

2、不動産はインフレに強い
不動産はインフレに強く、インフレが起きやすい戦時下は不動産は買いと言える。インフレにより通貨の価値が下がれば、不動産での借入金は「実質的な返済負担」が減ることになる。

3、有事の日本買い
日本は政治的な安定性が高く、有事に買われることが多い。今回のウクライナ侵攻においても、「日本に移住したい」「日本に資産を移したい」と話す台湾や中国の方は、少なくとも筆者の周りでは増えている。

 

ウクライナ侵攻以前から、インフレが懸念され、不動産マーケットはダブついたお金で加熱気味。行き場を探している資産が、都心で流動性が高い現物資産に振り向けられることは想像に難くない。ポイントは、その「ダブついたお金」が向かう先がどこかを見極めること。住宅においては、流動性が低くメンテナンスにコストがかかる郊外の低額一戸建てよりも、流動性が高く賃貸需要も旺盛な都心部の集合住宅と考えて差し支えない。

しかし、中長期的にはコロナ禍による景気の後退や戦争拡大への不安などから購入検討者層のマインドが下がる可能性はありえる。「上がるかも?」と無理して買うのは禁物。とはいえ景気後退すれば地方経済の方が不安要素は大きく、あくまで個人的な考えだが「買うなら都心」は変わりない。このようなことを考えずに済むよう、ウクライナの件については早期に解決してほしいと切に願う。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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