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住まいサーフィン編集部

[第76号]「良い住まい」ってどんな住まい?:よい住まい特集(第0回)

2015年11月06日

初めまして、にこ と申します。
人口数万人程度の某市の市立病院に勤務する中堅内科医です。本来の専門は循環器内科ですが、片田舎の病院なので医者が足りず、肺炎や喘息などの内科的疾患も担当しています。

医師としてこだわりたいのはやはり「健康に良い住まい」

毎日の時を過ごす「家」だからこそ 住まいの環境にはこだわりたい

■「良い住まい」で暮らすということの大切さ

日々、患者さんと一緒に「健康寿命はどうしたら延びるだろうか?」をテーマに診療を行っている中で思うのは、やっぱり「良い住まい」で暮らすということの大切さです。
「良い住まい」といっても、デザインが良い、見た目がよい、価格が良い、機能が良いなどいろいろな「良い」がありますが、医師としてこだわりたいのはやはり「健康に良い住まい」です。
内科医がなぜ「良い住まい」にこだわるかというと、これには理由があります。

それは、家の環境が病気を悪くすることがよくあるからです。
心不全を例にとると、自宅で心不全を発症するタイミングとして最も多いのは「就寝後、夜間トイレに起きた時」です。古い設計の家ですと断熱がしっかりしておらず、特に冬場、寝室やトイレの中は程よく暖かいけれどそこに至るまでの廊下が寒いということが良く生じています。この温度差が血圧などに影響し心不全を発症、救急車で病院へ運ばれて入院することとなってしまいます。これは断熱のしっかりした温度にムラのない「良い住まい」で暮らすことで、ある程度防ぐことのできる入院です。

また、家にいることが原因で起こる病気もあります。夏型過敏性肺臓炎というこの病気は、家の中に生息するトリコスポロンという特殊な菌に対するアレルギー反応です。この菌は暗くて湿った風通しの悪い環境を好みますので、高温多湿な夏にしか発症せず、特に西日本以南の古い家屋に住んでいる人に多くみられます。この病気と診断された場合、家を離れて入院させるだけで症状が軽快するのです。

逆に家の環境を整えることで病気が良くなることもあります。
喘息患者さんは、家を徹底的に掃除することで発作の頻度が減ることがよくあります。糖尿病の方の場合、例えば家具の配置を変えておかしや食料が目につきにくいよう工夫するだけで、つまみ食いが減って血糖コントロールが良くなることがあります。

あなたの人生の中で、「住むところを変える」ということはそれほど頻繁に起こることではありません。ぜひ次の引越しの際にはデザインはもちろん健康にも「良い住まい」に住むということを考えていただけたら、と思います。

次回以降は、実際にどんな住まいが健康にも「良い住まい」なのか、実例をあげながら解説します。

Author:にこ 先生 (医学博士)

  • 1999年 某大学医学部卒業、医師免許取得 大学病院勤務
  • 2000年 某大学大学院医学研究科入学、同年長男を出産
  • 2004年 大学院修了、医学博士号取得
  • その後、民間病院勤務を経て
  • 2013年より某地方都市の市立病院内科に勤務、地域医療に携わる。
  • 「健康寿命を延ばすこと」をテーマに診療および執筆活動を行う。
  • ※ご提供いただいている記事は あくまでもにこ先生個人による見解です。