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住まいサーフィン編集部

[第81号]続「良い住まい」に必要なもの~温度:よい住まい特集(続編第1回)

2015年12月30日

こんにちは、にこです。
「良い住まい」の続編を書かせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

第1回目の今回は、家の中の温度について注目してみたいと思います。
「夏涼しく冬暖かい家」というのは、家を建てる方であれば誰もが理想とする家の一つでしょう。では、実際に家の中が適温ではないと、どのようなことが起こるのでしょうか?

室内の温度を快適に保つことが大切

寒い家は特にご注意を

■夏に暑い家

夏に家の中の温度がある一定以上を超えると、家の中にいても熱中症を発症する危険性が高まります。また、外気と冷房による内気の温度差が5℃以上あると自律神経のバランスが崩れて、身体のだるさや不眠などいわゆる「冷房病」を引き起こしやすくなります。夏の適正室温の目安は28℃です。

■冬に寒い家

冬に寒い家は、それだけで健康を害する可能性があります。寒さにさらされると人の体の中では様々な変化が起こります。
例えば、寒いところでは体の熱を逃がさないように末梢血管が収縮するので、血圧が上昇します。血圧が上昇すると、脳卒中や心不全、心筋梗塞などを発症する危険性が増大します。

■ヒートショックとは

ヒートショック効果」という単語をお聞きになったことがあるかもしれません。ヒートショックとは、暖かい場所(リビングなど)から寒い場所(トイレや脱衣場など)、もしくはその逆(寒い脱衣場→熱いお湯の入った浴槽)に急に移動した際に起こる血圧の急激な変動のことをいいます。入浴中の突然死は12月および1月に多いとされていますが、理由はこのヒートショックによる血圧の急激な上昇による脳梗塞・脳出血もしくは心不全・心筋梗塞、そして血圧の急激な低下による浴槽内での意識消失→溺死です。

65歳以上の高齢者、もともと高血圧や糖尿病、脂質異常症などの病気を持っている方、肥満の方などは特に注意が必要です。また、お風呂のお湯を熱くしていると温度差がつきやすいため、できるだけぬるめのお湯(38~40℃くらい)でゆっくり温まるのが事故を防ぐためのポイントです。

■低い温度の部屋にいると

他にも、寒い空気を吸うと肺の中の温度が急激に下がり、免疫力が低下するといわれています。免疫力が低下すると風邪をひきやすくなったり、肺炎にかかる危険性が高まります。 さらに血液の濃度が濃くなりますので、脳梗塞や心筋梗塞など血管が詰まる病気を起こしやすくなるのです。

これらを防ぐためには家の中の温度差を3~5℃以内に抑える工夫が必要となります。一番寒い場所でも、温度は17℃を下回らないことが大切です。欧米では、賃貸住宅でも貸主の責任で室温を17℃以上にすることが義務付けられているそうです。日本はまだまだそこまでのレベルに達していませんが、寒いところにお住まいの方だけでなく、全国の皆さまに室温について興味を持っていただけると、自宅内での死亡事故を少しでも減らすことができると思います。

Author:にこ 先生 (医学博士)

  • 1999年 某大学医学部卒業、医師免許取得 大学病院勤務
  • 2000年 某大学大学院医学研究科入学、同年長男を出産
  • 2004年 大学院修了、医学博士号取得
  • その後、民間病院勤務を経て
  • 2013年より某地方都市の市立病院内科に勤務、地域医療に携わる。
  • 「健康寿命を延ばすこと」をテーマに診療および執筆活動を行う。
  • ※ご提供いただいている記事は あくまでもにこ先生個人による見解です。