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住まいサーフィン編集部

[第84号]続「良い住まい」に必要なもの~メタボを防ぐ家づくり:よい住まい特集(続編第4回)

2016年07月26日

こんにちは、にこです。
「良い住まい」もいよいよ最終回を迎えました。
今回は、世間の関心が比較的高い「メタボ」について考えてみます。健康診断で腹囲を測定し、「メタボ」の判定をもらった方もいると思います。「メタボ」には自覚症状がありません。世間では単に太り過ぎ、という見た目の問題であると捉えられている節もありますが、生活習慣病を引き起こす原因となる、れっきとした病態なのです。
今回、「良い住まい」の中で「メタボ」を取り上げるのは、一見関係なさそうに見えるこの2つに、実は大きな関係があるからなのです。

メタボを防ぐ家造りを考えよう

家の中で上手に代謝をあげるために

■「メタボ」って何?

「メタボ」とは、「メタボリックシンドローム(metabolic syndrome)」の略です。厚生労働省によると、メタボリックシンドロームの定義は「内蔵肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさり、心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患をまねきやすい病態」です。動脈硬化性疾患というと馴染みが薄いかもしれませんが、要は「放っておくと心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる病気にかかって、死亡するか重篤な後遺症が残るような病気になるかもしれません」ということです。
診断基準は、「ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm女性90cmを超えること、かつ高血圧・高血糖・脂質代謝異常の3つのうち2つが当てはまること」となっています。
「メタボ」が悪さをする原因は身体にたまる内臓脂肪です。内臓脂肪がたまる一番大きな原因は、「栄養の過剰摂取=食べ過ぎ」と「運動不足」です。この2つ、心当たりのある方も多いのではないでしょうか?

■ 「メタボ」にならない家とは?

では、家造りの観点から「メタボ」を予防するにはどうすればよいのでしょうか? 住まいが「メタボ」に対してできることは、「運動不足の解消」です。これには2つの側面があります。

まず一つは、「メタボ」にならないように「運動する気持ちになる家造り」です。運動不足解消には、散歩やジョギング・サイクリング、またジム通いや週末のゴルフ・テニス・スノボなど、まずは家の外に一歩出ないと始まらないことが多いです。この「一歩家の外にでる」ことを応援するのが住まいの役割です。例えば、家の外の階段をなくし、物理的に外に出やすくすること、趣味のスポーツ道具を玄関そばの専用スぺースに収納し、いざ出かけるというときにスムーズに準備ができるようにすること、また交通の便が良いところやスポーツ施設の近くに住んで物理的な距離を短くすること、などが挙げられます。家の中にエアロバイクや腹筋器具など、すき間時間で運動ができるようにすることも良い工夫の一つだと思います。

■生活活動代謝を上げることも大切

もう一つは「生活活動代謝」を上げる家造りです。生活活動代謝とは、日常生活で生じる活動に伴うカロリー消費のことをいいます。これは1日のカロリー消費の20%程度を占めるもので、例えば1日のほとんどの時間を座って過ごす方と掃除洗濯などの家事や立ち仕事など、ほとんどの時間を立って過ごす方では使用されるカロリー量が大きく異なるのです。

家で生活するだけでカロリー消費が増えるにはどうしたらよいかを考えると、高齢者や障がいのある方が同居するなどの特別な事情がない限り、過度なバリアフリーは避けた方が良いかもしれません。階段はもとより、10㎝くらいの小さな段差でも、そこを毎日昇り降りすることで筋力が鍛えられます。全く段差のない家は、かえって筋力を落とす元になります。例えば、家を広く見せるためにあえて仕切りのない間取りにする、といった場合、ちょっとした段差で空間を区切ってみるというのも良いかもしれません。このほかにも、日常よく使う物は立ち上がらないと取れないような場所に置くなどちょっとした工夫で「メタボ」を防ぐことが可能です。

現代人の生活は、「何でもすぐできる」「できるだけ手間がかからない方がいい」といった利便性を過度に求めすぎているのかもしれません。家を造るとき、ちょっとだけ立ち止まって今の自分たちの生活を見直してみる、ということも大切なことではないでしょうか?

※この記事はあくまでもにこ先生個人の見解によるものです。

Author:にこ 先生 (医学博士)

  • 1999年 某大学医学部卒業、医師免許取得 大学病院勤務
  • 2000年 某大学大学院医学研究科入学、同年長男を出産
  • 2004年 大学院修了、医学博士号取得
  • その後、民間病院勤務を経て
  • 2013年より某地方都市の市立病院内科に勤務、地域医療に携わる。
  • 「健康寿命を延ばすこと」をテーマに診療および執筆活動を行う。
  • ※ご提供いただいている記事は あくまでもにこ先生個人による見解です。