細野透の「赤信号・黄信号・青信号」不定期

[第3号]パークタワー晴海で行われた 「初めは嬉しく、後で悲しい見学会」

2017年05月01日

細野 透 ( ほその とおる )

見学希望者が殺到する新感覚モデルルーム

 

 東京都心の湾岸エリアにおいて、今年の目玉物件の1つと考えられているのが、三井不動産レジデンシャルほか4社が分譲を予定する、地上48階、全1076戸の「パークタワー晴海」です。

 

 今年4月、報道関係者に届いた「取材のご案内」には、次のように記されていました──。「1万9000平方メートル超の敷地に誕生する大規模タワーマンションを、360度シアターで体感。新感覚モデルルーム見学会のご案内」。

 

 360度シアターとは何でしょうか。また新感覚のモデルルームとは何でしょうか。4月25日火曜日に、地下鉄月島駅からは徒歩12分、豊洲駅と勝どき駅からは徒歩15分というマンション建設現場のすぐ北側にある販売サロン(販売センター)を取材のために訪ねると、そこに待っていたのは「初めは嬉しく、後で悲しい」1時間30分の時間でした。

 販売サロンのエントランス(写真はすべて三井不動産レジデンシャルの提供)

販売サロンのエントランス(写真はすべて三井不動産レジデンシャルの提供)

 

 見学会の冒頭、主催者から次のような趣旨の挨拶がありました。「販売サロンを開設したのは3月中旬です。それ以来、多数の方が見学を希望されていますが、キャパシティが不足しているため、どうしても見学を断らざるを得ない状態が続いています」

 

 そういう中で、報道関係者であるがゆえに優先的に見学できるワケです。新聞・雑誌・テレビの記者やジャーナリストは好奇心のかたまりです。360度シアターと新感覚モデルルームを、順番待ちをせずに見ることができるのですから、これはやはり嬉しい限りです。

 

パークタワー晴海の外観(完成予想写真)

パークタワー晴海の外観(完成予想写真)

【パークタワー晴海の概要】

 所在地─東京都中央区晴海2丁目

 規模─地上48階、全1076戸

 売主─三井不動産レジデンシャル、近鉄不動産、

    JX不動産、新日鉄興和不動産、住友商事

 設計・施工─大林組

 入居予定─2019年9月

 第1期販売予定─2017年6月下旬

 

360度シアターで見るディズニー感覚の映像

 

 主催者の挨拶が終わると、まず360度シアターに案内されました。これは下の写真に示すように、水族館にある円形ガラスの水槽を連想させる空間です。係員に「ベルトを締めてください」と促されました。映像に合わせて座席も動くそうです。

360度シアターの内部

360度シアターの内部

 

 CGとアニメーションによる映像は、「パークタワー晴海は海と空の間に位置している」というテーマで作成されました。映像が始まると、主人公の“白い鯨の親子”が登場して、建物の足元に広がる外構部に設けられた「イマジネーションランド」や、屋内の共用部、周辺の都市空間を案内してくれる仕組みです。

 

 このうち「イマジネーションランド」とは、エントランス周辺、庭の樹木や芝生、広場、池、噴水、休憩コーナーを含む空間です。こういった場所を、子供たちが夢を持てるように、ファンタジックな装いにしているのです。

 

 イマジネーションランドは大きく、グリーティングゾーン、ブライトゾーン、アトラクティブゾーン、フレンドシップゾーン、ピースフルゾーンの5つに分かれています。その要所を写真で紹介しましょう。

 

水景テラス(完成予想写真)

水景テラス(完成予想写真)

暖憩テラス(完成予想写真)

暖憩テラス(完成予想写真)

グランデッキ(完成予想写真)

グランデッキ(完成予想写真)

冒険の森(完成予想写真)

冒険の森(完成予想写真)

 

 5つのゾーンには、東京ディズニーリゾートを経営・運営するオリエンタルランドと共に描いた、12シーンのストーリーが織り込まれています。見る人がディズニーファンであれば、満足度が高いと思われます。

 

「光・海・森・スノーピーク」という4タイプのモデルルーム

 

 360度シアターの映像鑑賞が終わると、次は4タイプあるモデルルームの見学です。

 

(1)光がテーマのモデルルーム(専有面積約95平方メートル)

 海と空の境界にある多彩な光をイメージし、ホワイトをベースに太陽のゴールドを散りばめたインテリア。

(1)光がテーマのモデルルーム(専有面積約95平方メートル)

 

(2)海がテーマのモデルルーム(専有面積約78平方メートル)

 壁などに配色された淡いマリンブルーが、海を身近に感じさせるリラクゼーション感あふれるインテリア。

(2)海がテーマのモデルルーム(専有面積約78平方メートル)

 

(3)森がテーマのモデルルーム(専有面積約70平方メートル)

 深みのあるシックな配色、壁面の植栽など、住まいがひとつの森になったように感じられるインテリア。

(3)森がテーマのモデルルーム(専有面積約70平方メートル)

 

(4)スノーピークモデル(専有面積約67平方メートル)

 都心に居ながらにして、野遊びをしているようなワクワク感を味わえる、ユニークなインテリア。なお、「スノーピーク」とは、厳しい自然での検証に裏打ちされたハイスペックな製品群を提供する、キャンプ・登山・アパレルを中心としたアウトドアブランドの名称です。

(4)スノーピークモデル(専有面積約67平方メートル)

 住戸の間取り図(平面図)を見ると、4戸ともほぼ正方形に近いワイドスパンタイプになっていて、その面ではとても優れています。

 

価格表がインターネットで公開されているのになぜ?

 

 記事には「初めは嬉しく、後で悲しい見学会」というタイトルを付けました。実は嬉しい見学会はこの段階までで、そこから先は報われることの少ない悲しい見学会となりました。その理由を説明します。

 

 モデルルームはすでに述べたように4戸ともワイドスパンでしたが、それではマンション全体の住戸はどうなっているのでしょうか。それを知るためには、建物各階の平面図が必要ですが、見学会では見せてもらうことができませんでした。

 

 また、普通は取材が終わって帰るときに、平面図等の必要資料を手渡してくれるのですが、今回はどういうワケか用意してありませんでした。

 

 そのため、住戸の平面図を眺めることができません。また、建物入り口 → エレベータ → 共用廊下 → 各階の住戸、と続く動線を把握することもできません。さらに、タワーマンションの使い勝手に大きな影響を及ぼす、エレベーターの台数、定員、速度などのチェックも不可能です。

 

 それ以上に問題なのは、住戸の価格が不明だったことです。取材陣から一斉に、「価格はいくらですか」「プレミアム階(頂部の47階・48階)では、どの程度上乗せするのですか」などの質問がありました。しかし、返ってきたのは、「価格はまだ決まっていません。第1期販売は6月下旬頃になる予定ですが、それまでは確定しません」というゼロ回答でした。

 

 これでは読者を満足させるような記事を書くことができません。そのため「平均価格は例えば6200万円台〜7800万円台など、幅のあるアバウトな数字でも結構です」と頼んでも、「お答えできません」とガードが堅いのです。それでも粘り続けていると、最後には根負けしたのか、「専有面積が70平方メートルタイプのモデルルームは、7000万円台になる可能性が強いと思います」と、少しだけ口を緩めました。しかし、これでは不十分です。

 

 振り返ってみると、昨2016年は、マンションの初月契約率が好調とされる70パーセントを下回りました。そのためデベロッパー各社の販売スタッフは、モデルルームを訪れたユーザーの予算を詳しく聞いた後、時間をかけて慎重に検討し、第1期販売の直前にようやく価格を決めるケースが一般的になっています。よって、取材陣としても、「価格が決まっていないのならやむを得ない」として、あきらめざるを得ない面があるのです。

 

 しかし、事務所に戻った後に調べると、意外な事実が分かりました。実はインターネットにはすでに、「パークタワー晴海の販売予定価格表」が公開されていたのです。それも、プレミアム階の47階・48階は1000万円単位、46階以下は100万円単位で、役に立つ数字が並んでいるのです。

 

 すでに価格表がインターネットを通じて公開されているのに、わざわざ記者発表の場に行った報道関係者は何も教えてもらえなかった・・・。誠に情けない限りです。私はフリーのジャーナリストなので誰からも叱られないのですが、新聞・雑誌・テレビの記者諸氏は担当デスクから「この役立たず」と説教されたのではないでしょうか。

 

 記事のタイトルを「初めは嬉しく、後で悲しい見学会」としたのは、こういう苦い事情があったためなのです。

 

天空キャビン(完成予想写真)

天空キャビン(完成予想写真)

 

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。

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