●●●東京湾岸エリアの目玉物件
東京都心の湾岸エリアにおいて、今年の目玉物件とされる大規模マンション2件の第1期販売が、6月下旬〜7月下旬に集中しています。
【三井不動産レジデンシャルほか4社の「パークタワー晴海」】
地上48階、全1076戸、平均坪単価約350万円。第1期販売は6月下旬に始まりました。なお、本ウェブサイトに掲載されている「沖式新築時価」は、平米当たり125万円(坪当たり約412万円)となっているので、それよりは割安です。
【住友不動産の「東京ベイトリプルタワープロジェクト」】
地上32階〜33階、全1539戸、平均坪単価320万円〜330万円。第1期販売は7月下旬の予定です。なお、「沖式新築時価」は平米当たり117万円(坪当たり約386万円)なので、それよりは割安です。
このうち「パークタワー晴海」に関しては、本コラム第3号「パークタワー晴海で行われた初めは嬉しく、後で悲しい見学会」で詳しく説明しました。よって今回は、「東京ベイトリプルタワープロジェクト」に焦点を合わせることにしましょう。
(1)東京湾岸エリアを望む(写真の奥が北)。中央が「東京ベイトリプルタワープロジェクト」(完成予想図)。その奥に豊洲新市場が見える。ヘリポートのある手前の公園は東京臨海防災公園(画像はすべて住友不動産の提供)
(2)「東京ベイトリプルタワープロジェクト」越しに、東京湾岸エリアの南方向を望む。遠くに東京ゲートブリッジが見える
●●●「大規模マンション」プラス「大型商業施設」
東京都江東区有明2丁目に建設中の「東京ベイトリプルタワープロジェクト」は、免震タワーマンション3棟、子育て支援施設、大型商業施設、宿泊施設、イベントホールなどからなる複合施設です。
免震タワーマンションは西棟(A棟、正方形)、中央棟(B棟、長方形)、東棟(C棟、正方形)の3棟で構成され、各棟は幅約3.5メートルの緑に囲まれた渡り廊下で結ばれ、全体で約300メートルの距離があります。
子育て支援施設(子供園)の定員は320名です。
大型商業施設にはスーパーマーケットをはじめ、ファッションやグルメなど暮らしを彩る店舗が誘致される計画です。また宿泊施設としてはホテル、サービスアパートメントがつくられます。そしてイベントホールにはコンサートや国際的イベントが開催できる多目的ホールが整備されます。
(3)プロジェクト全体の完成予想図
(4)各施設の配置図
●●●“3つの冠”を持つプロジェクト
「東京ベイトリプルタワープロジェクト」はいわば“3つの冠”を持っています。1番目は「東京都内最大規模の開発計画」という冠です。敷地面積を比べると、次のような順番になります。
1位「東京ベイトリプルタワープロジェクト」─約10.7ヘクタール
2位「アーバンドック(豊洲)」─約9.8ヘクタール
3位「六本木ヒルズ」─約9.3ヘクタール
4位「東京ミッドタウン(六本木)」─約6.9ヘクタール
5位「ダイバーシティ東京(台場)」─約3.3ヘクタール
2番目は「都内第4位の大規模マンション」という冠です。
1位「THE TOKYO TOWERS(中央区勝どき)」─2799戸
2位「ワールドシティタワーズ(港区港南)」─2090戸
3位「サンシティ(板橋区中台)」─1872戸
4位「東京ベイトリプルタワープロジェクト(江東区有明)」─1539戸
5位「アーバンドック パークシティ豊洲(江東区豊洲)」─1481戸
3番目は「国家戦略特区認定事業」という冠です。国家戦略特区とは、経済的な成長を促進させるために、国や地方公共団体と民間の企業がひとつとなってプロジェクトに取り組もうとする地域のことで、税金も投入されます。
(5)3棟の免震タワーマンションが立ち並ぶ。高さは32階〜33階
(6)ペデストリアンデッキから、西棟のエントランスホールを見る
●●●国交省「地価LOOKレポート」の分析
「東京ベイトリプルタワープロジェクト」が“3つの冠”を持っていると、マンション購入を検討している人たちには、何かいいことがあるのでしょうか。
それを調べるために、国土交通省・土地建設産業局・地価調査課が定期的にまとめている、「地価LOOKレポート」の最新版(2017年第1四半期=1月1日〜4月1日の動向)をチェックしてみましょう。
東京湾岸エリアの住宅地としては、佃・月島地区、豊洲地区、有明地区の3個所が調査対象になっています。まず“地価動向”としては、佃・月島地区および豊洲地区は横ばいなのに、「東京ベイトリプルタワープロジェクト」が建つ有明地区だけは、「やや上昇傾向(0〜3%アップ)」となっています。
地価LOOKレポートは、次のようにコメントしています。「東京五輪の開催決定以降、当地区のマンション市場は取引件数・成約価格ともに上昇傾向が続いていたが、湾岸エリアにおいて新築物件の大量供給が相次いでいることや、販売価格が一次取得者の購入限度額に近づいたことにより、マンション市況はやや停滞傾向にある。こうした傾向や建築費の高止まりを受け、デベロッパーの採算性検証は厳格化しているが、当地区は五輪関連施設の建築や国家戦略特区の指定を受けた大規模開発事業等が計画されるなど注目度が高く、開発素地の取得意欲は依然として強いことから、地価動向はやや上昇傾向で推移している」。
これを要約すると、「湾岸エリアのマンション市況はやや停滞傾向にあるが、国家戦略特区の指定を受けた大規模開発事業(東京ベイトリプルタワープロジェクト)が計画されるなど注目度が高いため、地価動向はやや上昇傾向にある」ということになります。
次に“将来地価動向”です。こちらも佃・月島地区と豊洲地区は横ばいなのに、「東京ベイトリプルタワープロジェクト」のある有明地区だけは、「やや上昇傾向(0〜3%アップ)」となっています。
再び地価LOOKレポートのコメントです。「湾岸エリアでは引き続き大型分譲マンションの竣工・開発が控えていることから、マンション市況の停滞傾向が続くことが予想される。しかしながら、当地区は五輪関連施設の建築や地区計画によるまちづくりが進捗中であるほか、都心部と湾岸部を繋ぐ環状2号線の開通や銀座と有明を結ぶ地下鉄構想など、交通インフラの整備も見込まれており、将来の発展期待が高いエリアであるため、デベロッパーの開発素地取得意欲は強い状況が続き、将来の地価動向はやや上昇傾向が続くと予想される」。
これを要約すると、「マンション市況の停滞傾向が続くけれども、将来の発展期待が高いエリアであるため、将来の地価動向はやや上昇傾向が続くと予想される」ということになります。
将来地価が上昇傾向にあれば、マンションの資産価値が高まるので、マンション購入を検討している人たちにはいいニュースです。
(7)マンション棟の足元の外構。中央棟と東棟を結ぶ渡り廊下が見える
(8)中央棟の断面図。ほぼ全住戸が広い開口部に面するワイドスパン設計になっていることが分かる
●●●建物完成から2年後の完売を目標に
住友不動産はかつて、港区港南の「ワールドシティタワーズ(2090戸)」を販売する際に、約9年間もの時間をかけました。
2004年─販売開始
2007年2月─建物完成
2012年8月─販売終了
ざっと計算すると、建物完成前に毎月30~20戸、完成後に毎月20~10戸というスローペースで、粘り強く販売し続けたことになります。
それでは、「東京ベイトリプルタワープロジェクト」の場合には、1539戸の住戸はどんなペースで販売されるのでしょうか。住友不動産の販売担当者に質問すると、「建物完成から2年後の完売を目標に、丁寧に販売していきたい」ということでした。
2017年7月─販売開始
2019年7月─マンション棟完成
2020年2月下旬─マンション棟入居開始
2020年3月─大型商業施設完成
2020年7月24日〜8月9日─東京オリンピック
2020年8月25日〜9月6日─東京パラリンピック
2021年2月─販売完了(予定)
「地価LOOKレポート」の最新版を見る限りでは、「東京ベイトリプルタワープロジェクト」もまた、「ワールドシティタワーズ」と同じように、マンションを販売している最中に住戸の資産価値が上昇していく可能性があります。それを考えると、購入希望者はなるべく早い段階で、買ってしまった方がいいかもしれません。
その反面、「東京ベイトリプルタワープロジェクト」のマンション棟には、西棟(正方形)、中央棟(長方形)、東棟(正方形)の3棟があり、それぞれ平面の形も違うため、「どの住戸からどんな景色が見えるのか」を予想するのは、かなり大変です。しかし、マンションが完成した2019年7月以降であれば、景色は一目瞭然です。よって、建物の完成後に買った方が分かりやすいかもしれません。
このように、いつマンションを購入すればいいのかは、まことに悩ましい問題なのです。
(9)エントランスホール
(10)ライブラリーラウンジ
【「東京ベイトリプルタワープロジェクト」マンション棟の概要】
所在地─東京都江東区有明2丁目
交通─東京臨海高速鉄道りんかい線「国際展示場」駅から徒歩4分
ゆりかもめ「有明」駅から徒歩3分
総戸数─1539戸
完成予定日─2019年7月
入居(引渡)予定日─2020年2月下旬
敷地面積─3万2627平方メートル
売主─住友不動産
設計・施工─前田建設工業
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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。
建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。
著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。